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50話 ここからハワード×ジュノが続く

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 城に帰ってきたハワードはジュノの手を離さず、そのまま引いて自室に連れ込む。

「陛下?」

 何故部屋に連れてこられたのか解らないジュノは首を傾げる。

「今日のお仕事をしなければなりませんよ」

 向かうのはお部屋ではなく、執務室でなければならない。  
 喫茶店を手伝っているからと言ってハワードの仕事が減る訳は無く、いつも帰って来てから執務に取り掛かるのだ。
 今日もサインしなければならない書類が山積みのはず。
 少しお疲れで休みたいのだろうか。
 それならば少しだけ寝て頂いても良いが……

「ジュノ」
「はい?」

 ソファーに座らせられてしまう。
 私は疲れてないのだけど……
 陛下が血をくれたから暫くは元気でいられそうだ。

「本当はどう思っているんだ?」
「本当はとは?」

 いつになくハッキリしない物言いをするハワードに、ジュノは首を傾げる。

「俺より、魔王が良いのか? 魔王の所に帰りたくて辞めたいなんて言い出したのか?」
「いえ、違います」

 何でそんな風に思ったのだろうか。
 ジュノは即座に首を振る。
 
「本当に俺の側で良いのか?」
「陛下が良いのなら」
「ジュノ、俺、ジュノが好きだ!」
「有難うございます。私も陛下が好きです」

 ジュノの手をギュッと握って真剣な面持ちなハワード。
 改まって何を言われるのかと思ったら、好意を伝えてくれたらしい。
 ジュノはニコッと微笑む。

「ジュノ、多分勘違いしてると思うんだが。俺はジュノに愛を伝えているんだぞ。ああ、愛にも色々有るな。ハッキリ言えば、お前に欲情的な愛を感じている」
「私と愛の交歓をしたいと?」
「そうだ」

 今にも押し倒されそうだと感じ、ジュノは逃げるようにソファーから立ち上がる。

 ハワードに勘違いさせていしまった。
 きっと自分が無意識にフェロモンを出して誘惑してしまったに違いない。

「陛下は魔王様を愛しておいででした」
「勘違いしただけだ」
「私の方を勘違いしているのです」
「ジュノ」
 
 逃げようとするジュノの手を掴むハワード。
 自分でも即物的だと思ったが、どうも気が急いていた。
 魔王にジュノを取られそうになって、本当にヒヤヒヤしたのだ。
 自分の知らないジュノを魔王は沢山知っているのだと思うと腹立たしくもなった。
 ジュノをジュリーと呼ぶのも面白く無い。
 魔王がまるでジュノを自分の物の様に言うのも面白くない。
 俺の知らないジュノの姿が有るのも、知らない場所が有るのも気に食わない。
 俺はジュノの全てを知りたい。
 俺のジュノ。 
 俺だけのジュノ。
 ジュノは俺だけのものだ。 
 そう思う気持ちが大きくなりすぎて爆発していた。

「陛下、申し訳ありません。私は悪い悪魔です。私が誘惑してしまったんです」

 ジュノは申し訳なかった。
 やはり、昨夜舐めてしまった時に誘惑してしまったのだろう。
 その熱が陛下の中で残ってしまったのだ。

「ジュノ、ベッドに行こう」
「陛下、お許し下さい」

 ベッドに連れて行こうとするハワードに、ジュノは困ってしまう。
 眼鏡をかけているから今は誘惑していないとは思うが、取られてしまったらきっとまた誘惑してしまう。
 陛下は勘違いしているのだ。
 きっと事を終えたら冷静になったら気持ち悪く感じるに決まっている。
 何としても思い留まらせなければならない。

「駄目だ。解らないか? 俺はジュノに夜伽を命じているんだ」

 ハワードは強く言うと、更に強くジュノの手を引く。

「まだお仕事が有ります。書類にサインしていただいて、一時間後には隣国の大使とリモート会議の予定も有りますよ。それから夕食を取って頂いてお風呂にも入って頂きて、それからそれから……」

 何とか抵抗しつつ、あれこれ予定を思い出して早口で捲し立てつつ引き止めるジュノ。

 リモート会議しながら見えない所でジュノを可愛がるのも楽しそうだな。
 なんて、ちょっと思ってしまったハワードだ。
 頭の中はもうジュノを抱きたくて仕方なくなってしまっていた。
 だが、確かに一国の主として仕事はちゃんとしなければ。

「解った。じゃあ仕事をして夕食と風呂をも済ませたらお前は大人しく俺のベッドに来るんだな?」
「わ、解りました」

 断るなら今すぐにでも抱かせろと言っている様で、ジュノは頷くしかない。
 まぁ、仕事には真面目に取り組んでくれる陛下だ。 
 きっと風呂を上がる頃には平常心に戻ってくれているだろう。
 ジュノはそんな風にちょっと楽観的に考える。
 
「執務室に行く」

 ハワードは自室を出ると素直に執務室に向かう。
 ジェノも直ぐ後に続くのだった。
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