【完結】ホットココアと笑顔と……異世界転移？

31話

「……えっと、俺はどっちをしたら良いのですか？」
「え？」

　ちょっと考える素振りを見せてから聞いて来る翠に笑美はまた驚かせられる。

「笑美さんが入れる方ですか、入れられる方ですか？　精液を吸収するなら入れられる方が良いんですか？」
「いえ、それは別に何方でも構わないのですが……」
「いつもはどっちをしてるんですか？　相手に合わせて変えるんですか？」
「いえ、あの、私、確かに夢魔の血が強く出ていますか、夢魔ではなくて、あくまで血が流れてるに過ぎませんので、精液を頂ければ十分なんですよ。なのでセックスまで及んだ事は有りませんね」

　凄い押し気味にに聞いて来る翠に圧倒されてしまう笑美。
　てっきり引かれて気持ち悪いと思われると思っていたのかだ。
　え？
　何この子、セックス知らなかったのに、普通に受け入れた上でよく解らない初めてのセックスを私としようとして来るの？
　良いの？
　しかも愛を確かめ合う行為では無くて、私の食事としてセックスしようと言っているよね？
　翠さんチョロ過ぎませんか？
　本当に良く今まで無事で居ましたね。　
　いや、どう考えても知らないオッサンにセクハラされていたし、知らないうちに悪い悪魔（私）に精液を吸われていたけれど。
　これは、ちゃんと注意するべきと言うか、解らせるべきではないだろうか。
　このままハワードに任せたら奴のハーレムに加えられ兼ねない。
　絶対に駄目だ。

「そうだったんですね。誤解して気持ち悪い事を言ってしまいました。忘れて下さい」

　翠は顔を真っ赤にして俯く。

「おやすみなさい」

　挨拶をして部屋に入ろうとする翠の腕を笑美は捕まえる。

「しかし折角の申し出を断ると言うのも男の恥。セックスしましょうか」

　そう言う、翠を引き部屋に連れ込むと乱暴にベッドに押し倒したのだった。


「待ってください、笑美さんの初めてを俺が頂いても良いのですか？」

　怖がらせようと思った笑美であったが、翠が恥ずかしそうに言って首を傾げてしまうから困る。
　それはこっちの台詞なんですよ。

「私は構いません。翠さんの初めてを頂けるならば光栄です」

　怖がらせるつもりが素直に本音が出てしまう。

「俺も、笑美さんの初めてを頂けるならば
、これ以上嬉しい事は有りません」
「今更なんですが、私、人間じゃないんですよ？　魔物で、夢魔の血が流れている魔王なんすよ？」

　翠さんは怖くは無いのだろうか。

「俺も人間です。学も無いし、常識も解らない笑美さんの役に立つことは何も出来ない。ただの人間よりも底辺のゴミみたいな物なんです。こんなゴミを拾わせて面倒見せてしまって申し訳有りません。笑美さんの役に立つ事なら何でもします。餌で眷属でも愛玩動物でも何で構わないので捨てないで下さい。ずっと一緒に居て下さい」

　ぎゅっと笑美の手を握りしめた翠は震えながら泣いていた。
　翠は確かに恐怖を感じている。
　私に襲われる事じゃない。
　私に捨てられる事だ。
　私に捨てられない為に身を売る覚悟なのだ。
　私はそんな風に考えては欲しく無かったのに。
　翠さんを守りたかったのに。　
　こんなに泣かせて怖がらせてしまった。

「ごめんなさい。ずっと一緒に居ましょう」

　やっぱり離れる事なんて出来ない。
　翠を抱きしめた笑美も涙を流してしまっていた。