上 下
108 / 165
6章 不老者とクラス召喚

第107話 異世界?

しおりを挟む
 今日が演習終了日。
 残りの4日で2度襲撃に会い、見事に全員負傷してしまった。
 治療はしているので、今ではかすり傷程度になっている。

 俺は、むくれてる4人を前にして何て言うか迷ってる。

「慰めた方がいい?」
「良い訳ないでしょ!」
「やっと1週間経ったのに、終わりの言葉がそれですか?」

 怒らせてしまった。
 でもなぁ。
 ちょっと覆面にアドバイスを貰おう。

「なんて言えば良かったと思う?」
「ボロクソに言ってやれ」

 珍しく覆面3号が喋ってくれた。

「1度怪我してから明らかに警戒は強まったが、それだけだ。音を立てて歩く。隠れられる場所があっても隠れない。食い物の臭いを撒き散らす。全部敵を寄せ付ける行為だ。今言ったのって、逃げ隠れするための最低限なのよ」

 更に沈んでしまった。

「訓練したら出来るようになるんですか?」

 カオルも良いこと言うじゃないか。

「出来る」

 4人とも目に力があるな。
 これで明日も訓練出来る。

「よし。じゃあ帰ろうか」


 森から戻る途中で覆面達とは別れた。
 これで、4人は俺の仮弟子みたいになっちゃったな。
 スキルは体力付けてから練習させるとして、言葉は継続しないといけない。
 木札増やして単語だけでも言えるようにしよう。

「ノールさんはどこでその技術を身につけたんですか?」
「どこでって言われると、最初は山守りの時かな。瞑想してたら気配をわかるようになって、熊とか避けてたら出来るようになった」
「参考にならないわ」

 こっちの森は異常に危険だから仕方ないよね。
 家に到着すると4人は泥のように寝入ってしまった。
 念の為、賦活で癒しておく。

「ふふふふ。お肉ちゃんを熟成させて、チャーシューを。ニンニクも植えておこう。魚醤もあるから、野菜と小麦の確保だ」

 町へ繰り出して、買ってこよう。
 肉待ちだけど、わくわくが止まらない。





「「「「おはようございます」」」」

 みんな早めに起きてきた。

「ご飯の前に走ってこようか」

 この日から早朝ランニングが追加された。
 午前に気の修練と体術、午後に言語と動植物の勉強。
 仮弟子達も忙しいが、俺もずっと張り付き状態。
 金が無くなりそうになると、全員で森の薬草採取をする。

 ここ1週間はこんな生活だ。
 気の修練のおかげか、言葉も話せるようになってきて、少しは自信がついたようだ。

「ハナセテマスカ?」
「話せてますよ」
「ワタシもイッテル?」
「カオルも言ってるよ」

 みんなカタコトだけど話せている。
 少し体力もついたし、そろそろ行っても良いかな。


「この建物って、最初にノールさんが入って行ったところですよね?」
「海野さんの言う通り。ここは探索…じゃなくて冒険者ギルドだよ」

 俺がそう言うと、ワイワイ騒ぎ出した。

「冒険者ギルドだって!」
「ちょっとワクワクする」
「まさか登録!?」

 登録だけど、あまり騒ぐと目を付けられるぞ。
 静かにしててくれよ。
 中に入ると、案の定視線が集まる。

 とりあえず、おっさんのカウンターに行くか。

「ぞろぞろ女ばっかり連れてきやがって。何の用だ」
「後ろの全員登録です」
「何が出来る?」
「みんな。採ってきたの見せて」

 各々が森で採取した野草を渡していく。

「なんだこりゃ。新人レベルか」
「そんなもんです。少しずつ教えていきます」
「10級だな。4人分持ってきてくれ」

 背後の空いてる受付に頼むと、一人ずつ名前を確認していく。
 紙に記入しつつ、言葉を投げてくる。

「お前ら召喚勇者か?」
「ノールさん今勇者って」
「海野さん、ちょっと黙ってて。追い出されたので勇者じゃないですよ」

 なんか良く無い雰囲気だなぁ。

「…先日やってきた兵士がお前達を探してた。一度城に顔出せとさ。ほら、ギルド証だ」
「困った人達です。出ていけと行ったり、来いと言ったり」
「なぁ。お前本当に召喚されたのか? 証を見た時、西端にある獣王国の印があったぞ」
「え? 獣王国は西にあるんですか?」

 異世界だと思ってたんだけど、違うのか?

「ちょっと待ってろ。」

 おっさんが奥に引っ込んだと思えば、すぐに戻ってきた。

「これを見ろ。」

 地図がある。
 真ん中にデカイ大陸があって、左に中位の大陸。

「このデカイのが俺たちの居る大陸だ。その中心部から下に行った場所がこのマイナール国。海を2つ超えて、さらに先へ行った端っこが獣王国だ。」

 マジか。
 ちゃんと霊峰まで書かれている。

「じゃあここは?」
「エスタ聖教国だな。」
「こっちは!」
「ノーザンド帝国だ。」

 まさか同じ世界だったのか。
 俺のワクワク異世界気分を取り返して欲しいものだ。
 一気に冷めちゃったな。

「ノールさん。ジュウオウコクってのは何ですか?」

 4人とも知りたそうにしている。

「時間かかりそうだし、帰ってから話そうか。」
「あ、うん。」
「おやっさん。一度帰ります。」
「おう。次来る時は、お前も薬草持ってこい。」
「はいよ。」

 帰り際に絡もうとしてきた冒険者は、おやっさんに捕まって怒られていた。
 その時何度もこっちを見ていたから、勇者とかでも吹き込んだんだろう。
 その称号もあまり覚えてほしく無いんだけどね。



 家に帰って一息つくと、先程のやりとりを知りたそうに見てくる。

「さて、どこから話したものか。とりあえず、前に話した国についてだけど」

 召喚される前に居た所が獣王国で、他の国の配置と名前が完全に一致していたと伝える。

「それならノールさんだけ、同じ世界で場所だけ変わったと。」
「それだけなら良かったんだが、獣王国で見つけたものが問題なんだ。」

 地下で見つけた遺跡のこと、地球が他の世界と融合してしまったこと。
 ゆっくりと話していき、異世界転移では無く、時間転移の可能性を伝える。

「じゃあ、未来だって言うの?」
「ちょっと信じられません」

 そうなるよな。
 明らかに変わりすぎている。
 魔法やスキルがある世界。

「未来に来たなら過去に行けないの?」
「そうよね。行けそうな気がするわ」

 カオルの言葉にトモエが乗っかるけれど、厳しいな。

「王女様の言っていた神様というのはどうでしょうか? 魔法があるならいらっしゃるのでは?」

 神様はもっと厳しい。

「絶対とは言えないけど、過去には行けないし、神様は力を使わない」
「なぜ!?」
「1秒間に宇宙全体でどれだけのエネルギーが使われているか。何秒それを繰り返せば元の時間に戻れるのか。それを考えると過去に戻るのは難しいな」
「神様は!?」
「神様については、力が強すぎるってことだな。弱い神様だとしても、存在するだけで世界が壊れていく。だから、神様になった者は昇天するんだ」

 それでもトモエは納得出来ないようだ。

「なんでノールさんに神様のことがわかるんですか?」
「神様のことはわかってはない」
「じゃあ、絶対じゃないですよね!?」
「絶対ではない。けれど、俺の神に昇天までした師匠が言っていたことだ。それは信じてる」

 4人の呆けた顔が見える。

「神にしょうてん?」
「え?」
「どういうことですか?」

 ちょっと説明が必要だな。

「ちょっと話は逸《そ》れるが、今4人に教えている気は何だと思う?」
「体の眠ってた力を」
「ちょっと違うな。常に湧き出し続ける生命力を使えるようにしたものだ。漏れ出ないようにすると、頑丈になったり、回復力を高めたり出来る。呪術として使う者も居た。それを使う者達は日本でも居たと言われてたよね?」

 少し考えるとアオイ君が答えてくれる。

「陰陽師」
「そう。俺の師匠は大陸の人だったから、仙人と呼ばれていた。結構有名な人だよ」
「仙人って、確かに気を使うと言うわね」
「だったらノールさんも仙人なんですか?」

 当然気になるよね。

「俺は出来が悪かったから、仙人にはなれないらしい。だから半仙人だね」
「よくわからないわ。何が違うの?」
「簡単に言うと死ぬか死なないかだね。俺は死ぬ方」

 しばらく黙ってたカオルが声を出した。

「ノールさんに教えてもらってる私達も、仙人になれる可能性があるってこと!?」
「え? 仙人になれるの?」

 そう考えたかだけど残念だったね。

「手短に言うと仙人にはなれない。理由は俺が気を教えちゃってるから」
「そんな」
「教わってなければ可能性が」
「トモエ。自力で気を覚える時間は無かったんだよ。仙人にはなれないけど、気を使えるようになると、長生きにはなるよ」
「本当!?」

 食いつき良いな。

「さっきも言ったけど、戻れないのは絶対じゃないからね。魔王が倒されたら戻してくれるかもしれない。期待しすぎず、ここでも生きられるようにする。いいね?」
「「「はい」」」
「え? はい」

 説明したから、こっちは良いとして、あとは城か。
 めんどくせー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...