上 下
50 / 165
3章 国内小旅行。

第49話 古代人の遺跡1

しおりを挟む
 森に入ってから、俺のためにゲインさんが説明してくれている。
 この森は毒持ちが多い。
 動物もヘビやコウモリ、ムカデなどの小型も弱毒を持ち、大型になるほど強い毒性を備えている。
 サイズで毒の強弱があるのはわかりやすい。
 その為、毒の森と呼ばれている。
 比較的難易度は高いが、毒に詳しい人や斥候向きの狩場となっている。
 俺も相性は良さそうだ。

 そして、余計な人に踏み荒らされていないので。

「ここにもあった!」

 俺が見つけたのは月光草。
 枯らさないように外側の葉を1株1枚ずつもらっていく。

「こっちはハーブ!」

 マナハーブも豊富で俺の薬師訓練に拍車がかかりそうだな。

「今日は採取じゃねーんだぁ。ほどほどにしとけぃ」

 バートに止められる。
 ただし、1つだけ欲しいのがある。

「わかった。毒消しだけ採取させて。それだけは必要だから!」

 癒し草とピュアルートだけ採取してきた。

「本当に詳しいな。草取りって言うより、採取人だな」

 ゲイル達も呆れていた。



 進み出してから1時間程すると、木々が薄くなり少し開けた場所が見える。

「あそこが遺跡だな。前に学者が確認したら、古代人の作った建造物に、後から来た者が細工したって話だ」

 石造りと金属製が混じっており不思議な作りをしている。
 罠に注意しながら見てみると、ところどころある鉄骨は、崩れないように支えにしているとわかる。

「俺らも詳しくねぇが。補強してるのはわかるからなぁ。なるべく壊さねぇように探索してんだぁ。ノールも注意してくれよぉ?」

「わかった。これを崩したらその学者にどやされそうだな」

「はは! 全く! 全く! 学者うるさい!」

 チコさん、あんたどこか壊したろ。

 石造りの階段を降りて、中に入ると以外と広い。
 幅5mはあるだろうか?
 これは結構広い施設かもしれないなぁ。

「この中は結構奥まであってな。一番奥にでっかいドーム状のホールがあるんだ。横道も多いから気をつけてくれ」

 ゲイルさんも注意を促してくる。
 すると前から反応があった。

「前から小さいのが多数」

「良い反応だぁ。ノールはベスを守るつもりでなぁ。やるぞぉ」

 全員すぐに臨戦態勢になり、剣では無く棍棒を持ち出した。
 徐々に前からコウモリがやってきて、フラフラとしたコウモリ独特の飛び方をしている。
 それを前衛3人が盾と棍棒で1つ1つ落としていく。

 俺も突いて落としても良かったんだが、攻撃してくる様子では無かった。
 とりあえず棒を掲げて回転させ、弱めの風を吹かせてやると、勝手に遠くへ飛んで行く。

「へー。そんなやり方もあるのね」

 ベスさんに関心されたが、たまたまこれが使えただけだ。

「コウモリ相手で、しかも敵意が無い時だけですよ。ほら」

 指した方に、風で迷ったコウモリが地面に落ちてキィキィ鳴いている。
 顔からして虫食タイプかな?
 寄生虫と病原菌に注意が必要だな。

「弱い風でも影響あるって、それがわかっただけでも収穫よ」

 それなら良いのだが。

 それからコウモリは出ず、代わりにでかい反応が4つ。
 魔物っぽいな。

「厄介なのが来たぞぉ!」

 バートが言った直後に見えた。

「ビッグセンチピード3体か」

 でかいムカデは正直見たく無いけど、目を逸らすと危険だからなぁ。

「1体隠れてます。注意を」

「良い目。良い耳。長舌トカゲ!」

「ベス! 見つけたらペイント弾! ノールはベスの守り! こいつら毒飛ばすぞぉ」

 と言った直後に液を吐きかけてきた。

「こいっつら! 人に唾吐いちゃいけませんって教わらなかったのか!?」

 ゲイルが軽口を叩きながら、ムカデに切りかかっていく。
 こっちにも吐いてきやがった!
 軽くステップして躱すが、これは自分の時だけだな。
 すると、俺が躱したのを見てか、ピンク色の棒みたいのが伸びてきた。
 すかさず叩き落とす。
 そのピンクは弾性があり、良くみると舌だった。

「見つけた!」

 ベスが言うと共に、黄色の玉を投げると、敵の全貌が見える。
 予想通りのカメレオン。

「少しはマシになったなぁ。こっからだぞぉ。ベスも魔術で参加!」

 すかさず、後ろで呪文を唱え出す。

 毒も飛んでくるが、棒で弾き壁に払っていく。
 このヒノキの棒は今日でお別れかな……とほほ。
 この間にゲイルとチコが1体ずつムカデの頭を落としていた。

「死んでも動いてる。気をつけて」

 チコの口癖は、必ず2回言うわけじゃないのね。

 ベスさんが杖で地面を叩く。

「合図。みんな飛び退けぇ!」

 バート言われ、壁側まで飛ぶ。
 すると後ろから、小さな石弾が勢いよく多数飛んでいく。
 カメレオンは穴だらけになり、ムカデも身体中から体液を出している。
 最後はバートの一撃で頭を落とす。

「警戒! 反応あるか?」

「……反応なし。ノールどうだ?」

 ゲイルに言われる。

「新しい反応も来てません」

「よしぃ」

「今回のは面倒だったわね」

 聞いてみると、ビッグセンチピードは多くて2体らしく、カメレオンまで来ることはほとんど無いらしい。
 ファングなら時間かけて倒すことは出来るらしいけどね。

「普段は俺かチコがどっちかベスの守りに入るんだが、ノールのおかげで楽出来たな」

「私も呪文に集中できたから良かったわ。避けると呪文止まっちゃうのよね」

「ベスさんを動きやすく守れたなら良かったです」

「ノールが優秀なのはわかってたことだぁ。あと俺らのパーティー中は敬語止めて良いぞぉ。その2言が戦闘中は邪魔になるんだぁ。さぁ、回収するぞぉ」

 確かにとっさだと面倒だな、と思って頷く。
 そして倒した魔物から素材を取っていく。
 俺もムカデの毒が少し欲しい。
 保存用のビンに詰めていくと、3本集まった。
 ファングはカメレオンの皮とムカデの甲羅を持っていくようだ。
 回収は終わってるようだが荷物が少ない。
 俺が不思議そうにしてると教えてくれた。

「これに入れてるんだよ」

 見せてくれたのは、ずた袋。
 開いて、中からサイズ感の合わないムカデの甲羅が出てくる。

「なんじゃこりゃぁ? すげー」

 良く聞くと、これが魔道具って言われてる品だった。
 こんな見た目だが、買うと大金貨50枚はするらしい。
 家が何個か建てられるレベルだよ。
『収納袋』と呼ばれていて、ファングは大商会と繋がりを持った時に、売ってもらったらしい。
 数が多く無いので、お金があっても買うことすら難しいという。
 便利な物があったもんだ。



 その後も休憩しながら進む。
 途中何度か、軽い戦闘を挟みつつ、3時間程進むと最奥に辿り着いた。

「入る前に探ってくれぃ」

 気配を探るとでっかいのがいる。
 ゲイルとチコも気づいたようだ。

「「デカイのがいる」」

 俺も頷く。

「その周りに多数の小型もいるな」

「卵が見えるよ」

 ゲイルもチコも良く見えている。
 あの形の卵は……記憶にないな。

「バートさん、あの卵見たことありますか?」

 一番近いのを指す。

「ありゃぁ……。蜘蛛だな」

 嫌そうな顔をする。

「うへぇ。蜘蛛のマザーは厄介よ?」

「戻っても良いんだがぁ」

 バートが何か迷ってるようだ。
 俺も何と無くわかる。
 ここに来るまでに、奥に向かう新しめの足跡が4人分あったんだ。
 俺もどうしようかと思ったが、まだ生きてるんだよな。

「生きてる反応は3人。1人はこのままでも持って1日でしょうか」

「そうかぁ……。少し通路を戻って作戦を考えるぞぉ。突っ込んでも死ぬだけだしなぁ」

 それには賛成で、全員が頷く。


 5分程戻り小声で話し合う。
 俺は気になってたので訪ねてみる。

「実際どうなんですか? ファングで倒したことは?」

「倒したことはある。だがその時は卵も少ないし人間も捉えられてなかった」

 バートが眉間にシワを作る。

「そうなんだよな。マザーを倒すだけなら、俺らの戦力でも何とかなるが」

「子蜘蛛が孵ると手が足りないわ」

「あいつら攻撃は弱い。毒で噛まれると麻痺する」

 その後、みんな黙ってしまった。
 子蜘蛛かぁ。
 何か無いかなぁ?
 俺が背嚢を探り出すと、みんなが覗き込んできた。
 そんなすごい物は無いと思うけど。

 ニールセン滞在時から取ってきた鉱石や植物があたりに並べられる。
 しまった。
 ちょろまかした月光花がドライフラワーになっている。

「俺らの袋よりお前のリュックの方が魔窟だな」

「本当に薬草が多いわね。でも野菜もいろいろあるわ」

「すっごい臭い! 開けないと出ないのも面白い」

 バートだけは何も言わず。

 その中でいくつか目星の物があった。
 その何種か選んで見せる。

「この香草類を使えば、蜘蛛が寄りづらくなるかもしれません」
しおりを挟む

処理中です...