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2章 不老者、浮浪者になりました。

第28話 探索者生活6

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 ここは、北西区にある建物。

「中に入ったは良いけど、順番を覚えてないや」

 前回来た時に、マークと物だけは何とか覚えた。

 最初は、植物の何かだったよな。
 一通り見て植物に関するのは『木の看板』だけだったので、そこへ入る。
 中に入って……。最初はベッドじゃない。
 洋服ダンスは違ったはず。
 蔦だな。当たり! やっと1部屋抜けた。
 2部屋目は金槌。ノーリの武器と一緒だから覚えている。そして鏡。
 3部屋目……ダメだな。集まった人に関係していたのは覚えてるんだが。
 植物がエルフ、金槌がドワーフ。あとは人族と鳥族と角人族。
 とりあえず適当に入るか。
 


「ダメだー! 俺の記憶力だとすぐ忘れてしまう。5ループ目までは数えたけど、どんだけ迷ってるんだよー」

 3部屋目を越えたら洞窟通ってたんだけど、そこまですら行けてないわ。
 3部屋目にもベッドあったな、ちょっと休もう。



「おい……起きろ!」

 なんか聞こえるなー。

「人の! 起きろ!」

 目を開けると人影が見える。
 ちょっと集中してたな、瞑想入りかけてたか?

「お。ダインさん?」
「ようやっと起きた。中に誰か入ってきたとあったがノールだったか」
「良かった。前のところに辿り着けなかったんですよー」
「一度で着けた奴はなかなかおらんからな。今日は何か用事か?」

 そこで今日あった話をすると、ダインさんにも街の情報を知らな過ぎると言われてしまった。
 結局、棒の金属部分もただの鉄で魔力は含まれて無く、斜め線の盾は犯罪集団のマークだとわかった。人族主義を掲《かか》げた上で、人族以外は差別し、弱そうな人族を見かけると絡んでくる迷惑者だ。比較的小さな集団だが、そこを取り締まっている犯罪組織がやっかいらしい。

「そのマークのやつらは、主に南西側を縄張りにしとる。解決するまでは近づかんことじゃ。事情は仲間内で伝えておくとして、ノール」
「はい?」
「少し金を出す気はあるか?」

 何のことやらと詳しく聞いてみる。
 長命会の伝《つて》は広く、発言力もあるため、言えば報酬無く働いてくれる者はそこそこいるらしい。ただし、ずっとそれをやると信用も無くなるため、今までも数度しかやったことは無いとか。俺も手伝ってくれるなら何かお礼したいので、出せるお金や出来ることをするつもりだ。手付けで金貨1枚渡す。

「なら、すぐ動かすとしよう。あとお前に街のことを教える奴を小屋に向かわせる」
「おぉ! 助かります!」
「一つ聞きたい」
「へ?」
「木端《こっぱ》のチンピラ程度なら、軽く捻れるはず。力は使わんのか?」

 倒す程度の力はあるかもしれないけれど、そんなに自惚れては居ない。

「俺より強い奴をいっぱい知ってる。そんなことばっかりしてたら、すぐにこれさ」

 両手首をくっ付けて笑って見せた。

「そうじゃな。才能のある奴はすぐに飛び越えていくからの」
「そういうこと!」
「ここもまだ覚えきれておらんじゃろ。次相談事があれば、北西地区にある『山のツルハシ』という酒場で儂の名前を出せば良い」
 そう行って去っていった。

 一度小屋に戻るか。


 _______________

 ところ変わって、上街のある館。

「やっぱりノールじゃったぞ」

 扉を開けるなり大きな声で話しかけるダイン。
 誰に話しかけているかと言うと。
 大きめの椅子に座り紅茶を飲むペトラ。

「やはりそうでしたか。どのような話を?」

 ダインは先ほどノールと話した内容を伝える。

「最近、人族主義の声が大きく感じます。たまたま、というわけで無く、資金集めに力を入れてるのでは?」
「儂もすぐにそれを考えた。ただ、最初の情報提供と協力者をノールにしたかったのじゃ」
「悪くは無いと思いますが、いささか性急《せいきゅう》ではありませんか?」

 その後もお互い主張を言い合ってくが、すでに動き出したとダインの案で決まった。

「あやつが居るのは精霊教会じゃ。明日から行っても問題ない奴はいるか?」
「すぐですと……。少し問題ありますが、1人心あたりがあります」
「誰じゃ?」
「リリパットの……」
「あれか。多少煩くなるのは仕方なかろう。決まりじゃな。儂は声をかけれてない者に伝えてくる」


 _______________

 ノールは小屋に戻ってすぐ、汚れた装備を念入りに洗い直した。

「メサ。厄介ごとが起きた。しばらく下水駆除は無しだ」
 しなしな。

「そんな萎びてる時間は無いぞ! 今回は気力を入れまくったから、明日にはニンニクの収穫かもしれんぞ?」

 ぶるぶるぶる!
 触手を振り上げ不思議な踊りをしている。
 MPが吸い取られ・・・俺ってMPあるのか?

 まだ、少し明りがあるな。

「今のうちに少し畑を拡張しよう」
 と小屋の外に出るとシスターと近所の人かな?

「最近ここらにも人族主義を見かけるのよ。シスターは人族だけど、子供達がねー。大丈夫かしら」
「外での遊びも減らした方が良いでしょうね。あら、ノールさん」
「戻りました。物騒な話ですね。私も聞いて良いですか?」

 話に入る。
 スラムの入り口あたりに人族主義が増えてきているらしい。俺もさっきあったチンピラのことを伝える。

「ここはスラムの奥だけど、安心しっぱなしもよく無いわよね」
「それなんですけど、しばらくはメサは食事以外留守番になります。なのでいる時は見守りくらいはできますよ」
「それは助ります。教会としても、スペースが余ってるわけではありませんが、最悪避難場所くらいにはなれるかと思います」

 スラムの人を心配してるようだが、ちゃんと人は選んだ方が良いぞ。ここでも真っ当とは言えない奴も少なく無い。と考えていると。

「あまりホイホイ入れちゃダメよ。つけあげる奴が多いんだから。でも良い子供達には伝えておくわね。」

 そう言ってくれた。
 その後は解散の流れだ。
 そこで、戻ろうとしたがダインさんの言葉を思い出した。

「シスター。お伝えすることがありました」
「何でしょうか?」
「明日か明後日かわかりませんが、私に色々教えてくれる先生を手配してくれた方がいまして。お邪魔はしないつもりですが、少し煩くなってもいいですか?」
「それは良いことです。ココにいらっしゃる先生……そうですか」

 考えこんでいる。

「何か問題ありましたか?」
「いえ。良ければですが……。静かにさせるので、その授業に子供達も参加させられませんか?」
「んー? どうなんでしょう? 私は構いませんが、先生に聞いてみましょう」
「是非お願いします」

 ニッコリ笑顔。

 さて畑を作りますかね。
 そういえばメサって土を盛り上げてたな。

「メサ。土魔法で畑耕せない?」

 両手をー広げてーぷるぷる肯定。
 よし行け。


 およそ1時間後、俺とメサはシスターに怒られていた。

「精霊様から教え賜った。何人も手を取り合い……」

 メサが土魔法で耕し始めるとチョビッとしか出来ず、どうしたものかと何度もやってくと、大きかったり小さかったりとバラバラなのだ。
 それに気づいて、一度止めようとしたところ、急に入れる力が増え地面が爆発した。
 当然土は飛び散り、教会の壁も汚し、敷地外の家壁まで飛んでいる。
 すぐにメサと謝罪しに行き、なんとかなったが、そこからシスターの説法が始まりだした。

 何でも昔の精霊様は偉大で万人に寄り添い助けたという。俺らが怒られてるのは(今の時間にそんなことをやるなよ)ということなのだが、説法が間に入ると異様に長い。
 というか精霊はそんなに人に優しく無いぞ。どっちかって言うと面白がっている方だ。

 開放されたのは更に1時間。晩飯が遅くなった子供達に「ハチミツ」とねだられてしまった。
 今日はもう寝る時間だろ。明日な!
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