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1章 修行不定期

第9話 修行不定期4

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 2053年
 今までの不定期日記を読み返したんだが、結構ヒドイな。もうちょっとアホが続いたので、マシになるまで語調はそのままにしておく。

 さて、中国に来てからちょっと経ったね。来た当初の話からしよう。
 中国に到着して、すごい歓迎された。空港にカンフー服着た怪しい宗教家が居まして。後ろに黒スーツ侍らせているんですわ。半端ないニコニコ顔で長時間握手された。話してみると師匠からのお迎えみたいなので、そのまま案内してもらった。
 移動中、そのうち中国の観光したいと伝えたら、連絡先を教えてくれたよ。
 最寄りの寺院に到着すると、すでに師匠と鹿がいた。挨拶も早々に終えて、例の場所に行くらしい。怪しい人にお土産のニンニクを渡そうとしたら、師匠に本気で止められた。俺の改良した抗酸化ニンニクがダメとはな。ビタミン増量ネギは生だから持ち込めないんだよね。しょうがない。

 ここで移動するんだけど、先に書いておく。例の場所に行って、やっと今まで勘違いをしていたと気づいた。

 崑崙山《こんろんさん》に到着するんだけど、行き方は……かなり面倒なので、省いておく。正しい順番で、山と滝と洞窟にいくつか行くとたどり着く。
 すごい自然の気が濃くて、瞑想が捗《はかど》りそうですな。山の大きさとしては中位なんだけど、点々と小綺麗な小屋と東家《あずまや》が建ってるだけだな。今じゃほとんど空き家らしい。

 中腹あたりに今回会いに行く師匠の知り合いが居る。会ってみると見た目は俺と同じ位で優男に見える。だけど、自然の気を濃縮したような人だった。師匠もすごいんだけど、その比じゃないんだよね。その人は太上老君《たいじょうろうくん》と挨拶してきた。俺もしっかりと挨拶と自己紹介を返すと、腹を押さえて床を転げていた。
 太上老君はその後から、老師と呼ぶことにした。師匠だと被るからね。

 その日は他の小屋で休んで、次の日。師匠と老師から、間違いを正しておくと言って頭を叩かれた。
 今まで次郎人になる為とやってきた修行は、実は仙術を覚える修行だったらしい。師匠も寿老人という七福神の一人とか言うじゃないか。太上老君も聞いたことある有名人だな。
 俺の勘違いもかなりヒドイが、長命になって若返ると、一時的に考えが若くなるらしい。若くなるんじゃなくてアホになってたんだがな……。
 そんなわけで、俺は長生きになったらしい。今では見た目は25歳くらいか?仙人になると、見た目は好きに変えられるらしい。一度、師匠が白髭じじいからナイスミドルになっていた。俺はぜんぜん無理だな。
 他に気づいたことは、俺もいくつか術が使えることかな。薬を作る時にも効果を上げる術を使っていたし、採取と文字を書く時に保存の術を使っている。気を込めて物を長持ちさせるのが保存だ。長命になったのは、賦活と練気という術の……ゲームで言う熟練度で長くなるらしい。今の俺の推定寿命は400歳位。

 修行に関しては、瞑想は変わらず行って、仙術と武術が増えた。
 仙術はそこそこ伸びるだろうとお墨付きを貰ったが、武術が壊滅的らしい。色々やってみたが、少し使えそうなのが棒術、凡人程度に無手。才能とは無常である。


 2055年
 修行は順調なのかわからないが、ちょっと暇を貰って中国巡りをしている。最近は香辛料集めにはまっていて、色んな地域の農家に作り方を教えてもらっている。
 怪しい宗教家の張《ちょう》さんと巡るとみんな友好的なんだよね。本当に助かります。農業指導のお礼に胃薬を渡している。
 色々調べていると、インドの香辛料使いが絶妙だとわかった。その人が配合したスパイスを味見したが、知らない物も入っている。そのうち行ってみよう。

 色んな場所を巡っていると、動物の考えてることが少しわかるようになった。猿と山猫は賢いな。自家製のブドウをくれてやろう。だが、パンダはダメだ。あいつらの思考は食い物しかない。ニンニクスプレーを吹きかけておいた。ジロリストを舐めるんじゃ無い!
 おっと、まだ気を抜くと脳髄反射が出てしまう。気をつけなければ。

 戻ったらまた修行だな。猿に場所を教えてもらったイチジクは老師と師匠のお土産ね。
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