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日本初イベント大会
煌めきの親方
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気になって大穴を覗き込もうとしたが、光を遮断しているのかスッパリと切ったように黒塗りになっている。
試しに手を入れようとしてみたが、硬い何かが間に入っていて1ミリも入らなかった。
「何か必要な鍵があるのか?」
右端から隈なく叩いたが、どこも似たような硬質音が返ってきて違いは無いようにみえる。
コンコン。
「やっぱり他のアイテムが必要なのかな?」
「入ってるぞ」
「ん?」
今崖の中から声がしたような。
コンコン。
「だから入ってる」
「やっぱりこの中だ! どなたか知りませんが、どうやって入ったのか教えてくれませんか?」
「良いぜ。ちっと待ってろ半人前」
待てよ。この声聞いたことあるぞ。
闇の中から出てきた顔は、睨んだだけで人を殺せそうな厳《いか》つさ。大きな傷を顔に持ち、不敵に笑っている。その隣でニコニコ顔の料理上手な女性。
「親方!?」
「相変わらずしょっぱい動きしてんなぁ。中から見てたがヘッピリ腰は変わらねぇ」
「ふふふ。楽しませてもらったわ」
マジックミラーだったのか!?
誰も見てないからとアホ面で調べていたが、一部始終を見られていたとは。
「もっと早く言ってくれても良かったんじゃないですか?」
「開くまで時間かかんだよ。それよりもうここは使えねぇぞ」
「どういうことですか?」
「浮遊湖に行けるポータルは人数制限があるんだよ。後ろの穴は2人まで」
まさかこの穴がポータルだったのか!?
残念ではあるけど、それすら知らなかったのでダメージはほとんど無い。それに、肝心の大きな魚も取れてないから、結局見つけても無駄だったしね。
「悔しがってねぇな。他にあてがあるのか?」
「いや、肝心の鍵を持ってないので、見つけても行けません」
「ぷ……はっはっはっは。釣り好きが魚釣ってねぇとはな」
「それは聞き捨てなりませんね。一応釣ってはいますよ」
ローションまみれの不恰好な奴が釣れている。取り出しても悲しくなるので、わざわざ見せるまでしないけどね。
「とにかく、上に行きたきゃ他を探すことだな」
「ちなみにどんな魚が鍵でしたか?」
「ん? あれ、何だったかな……かあちゃん覚えてるか?」
マリーさんは少し考えた素振りを見せ「何だったかしら」と呟いている。
「いや、何で思い出せねぇんだ? んー、40cmくらいはあったと思うが、そんな記憶力悪かったかなぁ」
運営の強制力!?
思わず周辺を見渡してしまった。
「キョロキョロと何してんだ? まぁ、それなりの釣って見つければ行けるさ。ほれ」
親方が頭上を指すと浮遊湖に小舟が3艘《そう》浮かんでいる。
ここからだと光具合が強くて誰が乗ってるかわからないが、行くことができるのはわかった。
「ここから先に行くと池があるからよ。そこ行ってみろ」
「ん? それって」
「すまん。ちょっと仕事あるから帰るわ。かあちゃん行くぞぉ」
「はいはい。じゃあまたねー」
親方とマリーさんがポーチから取り出した球体は、見たことがある。というか俺も持っている。
カシャンカシャンと金属のかち合う音を鳴らし、2つの球が混じり合いながら1体の動物を作り出した。
「飛べ! 猛進王《もうしんおう》!」
翼を持つ巨大な猪が2人を乗せて飛び立つと、悠然と羽ばたきながら浮遊湖の反対側を目掛けて直進していった。
呆然としつつ眺めていると、浮遊湖に近づいた時に煌《きら》めきを放ち霧散する。
「アナウンス。アナウンス。現在、不正行為で浮遊湖に入ったキャラクターがおりましたので、強制テレポートを実行いたしました。飛行して近づく場合も不正となりますのでご注意ください」
「親方ぁぁぁぁぁぁ!」
いくらキャラクターと言えども運営の不可侵領域には入り込めないということか。
親方の犠牲は無駄にしません。再現できません。
「さて、親方が教えてくれた池とやらに行ってみるか」
試しに手を入れようとしてみたが、硬い何かが間に入っていて1ミリも入らなかった。
「何か必要な鍵があるのか?」
右端から隈なく叩いたが、どこも似たような硬質音が返ってきて違いは無いようにみえる。
コンコン。
「やっぱり他のアイテムが必要なのかな?」
「入ってるぞ」
「ん?」
今崖の中から声がしたような。
コンコン。
「だから入ってる」
「やっぱりこの中だ! どなたか知りませんが、どうやって入ったのか教えてくれませんか?」
「良いぜ。ちっと待ってろ半人前」
待てよ。この声聞いたことあるぞ。
闇の中から出てきた顔は、睨んだだけで人を殺せそうな厳《いか》つさ。大きな傷を顔に持ち、不敵に笑っている。その隣でニコニコ顔の料理上手な女性。
「親方!?」
「相変わらずしょっぱい動きしてんなぁ。中から見てたがヘッピリ腰は変わらねぇ」
「ふふふ。楽しませてもらったわ」
マジックミラーだったのか!?
誰も見てないからとアホ面で調べていたが、一部始終を見られていたとは。
「もっと早く言ってくれても良かったんじゃないですか?」
「開くまで時間かかんだよ。それよりもうここは使えねぇぞ」
「どういうことですか?」
「浮遊湖に行けるポータルは人数制限があるんだよ。後ろの穴は2人まで」
まさかこの穴がポータルだったのか!?
残念ではあるけど、それすら知らなかったのでダメージはほとんど無い。それに、肝心の大きな魚も取れてないから、結局見つけても無駄だったしね。
「悔しがってねぇな。他にあてがあるのか?」
「いや、肝心の鍵を持ってないので、見つけても行けません」
「ぷ……はっはっはっは。釣り好きが魚釣ってねぇとはな」
「それは聞き捨てなりませんね。一応釣ってはいますよ」
ローションまみれの不恰好な奴が釣れている。取り出しても悲しくなるので、わざわざ見せるまでしないけどね。
「とにかく、上に行きたきゃ他を探すことだな」
「ちなみにどんな魚が鍵でしたか?」
「ん? あれ、何だったかな……かあちゃん覚えてるか?」
マリーさんは少し考えた素振りを見せ「何だったかしら」と呟いている。
「いや、何で思い出せねぇんだ? んー、40cmくらいはあったと思うが、そんな記憶力悪かったかなぁ」
運営の強制力!?
思わず周辺を見渡してしまった。
「キョロキョロと何してんだ? まぁ、それなりの釣って見つければ行けるさ。ほれ」
親方が頭上を指すと浮遊湖に小舟が3艘《そう》浮かんでいる。
ここからだと光具合が強くて誰が乗ってるかわからないが、行くことができるのはわかった。
「ここから先に行くと池があるからよ。そこ行ってみろ」
「ん? それって」
「すまん。ちょっと仕事あるから帰るわ。かあちゃん行くぞぉ」
「はいはい。じゃあまたねー」
親方とマリーさんがポーチから取り出した球体は、見たことがある。というか俺も持っている。
カシャンカシャンと金属のかち合う音を鳴らし、2つの球が混じり合いながら1体の動物を作り出した。
「飛べ! 猛進王《もうしんおう》!」
翼を持つ巨大な猪が2人を乗せて飛び立つと、悠然と羽ばたきながら浮遊湖の反対側を目掛けて直進していった。
呆然としつつ眺めていると、浮遊湖に近づいた時に煌《きら》めきを放ち霧散する。
「アナウンス。アナウンス。現在、不正行為で浮遊湖に入ったキャラクターがおりましたので、強制テレポートを実行いたしました。飛行して近づく場合も不正となりますのでご注意ください」
「親方ぁぁぁぁぁぁ!」
いくらキャラクターと言えども運営の不可侵領域には入り込めないということか。
親方の犠牲は無駄にしません。再現できません。
「さて、親方が教えてくれた池とやらに行ってみるか」
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