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新しい都市

竹を買うまでが長かった

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「機獣の何が知りたいんだ?」

 何がと言われると困る。
 知らないことが多いから、何でも知りたいというのが本音なんだけど……。

「とりあえず、機獣が魔法を使ったようなので、それについて」

「まず、基本的な機獣は魔法を使わない。ということを念頭に置いてくれ」

 え? 魔法使わないのか?
 だとすると見間違いだったのか?

「それで、魔法を使う機獣は特殊な餌を与えられた奴が考えられる」

 教授の話では、魔石や属性のある餌を与えられると、魔法がインプットされることがあるようだ。
 知らずのうちに与えていた水魔石で成長したことで、魔法を習得したのだろう。
 ここで問題なのは、魔法を使うと稼働時間が減るということ。その都度、魔力を補充すれば良いんだが、なかなか面倒な話だ。
 解決策としては、魔石を多く与えて総量を増やすことと、機獣専用の防具をつけることがある。
 ちなみに専用防具の値段は100万Gもするくせに、防御力はほとんど無い。性能としては、小さな魔石2つ分のエネルギーが蓄えられるということだった。

「値段の割に性能悪く無いですか?」

「買う奴はほとんどいないな。とうか、ドワーフなんだから自分で作れ」

 あぁ。
 またそういうパターンか。

「性能の低いやつなら、ここの資料棚にもあるはずだ。それこそ、お前たちはそれを学びに来たんだろう?」

「それを学びにって……」

「魔法陣を使った防具だよ」

 そういうことかぁ。
 少し面倒だと思い始めていたが、隣のグスタフさんは目をギラギラしている。

「ハッチ氏! とうとう念願の魔道具までたどり着きましたよ」

「いやぁ。俺は先に釣竿が」

「だったら早く作ってしまいましょう! 素材売って竹買いに行きましょう!」

 引きずられながら買取所へたどり着くと、大蛇皮と新鉱石を残して全部売ることになってしまった。
 カエルの皮も残したかったが、4500Gにしか届かず、泣く泣く手放すことになる。
 2度目の大蛇は勘弁だが、カエルはまた取りに行かないとな。
 魔石と皮でなかなか美味しい敵だった。

「まいどありー」

 肉類はどれも安い。
 まぁ、食材を買う時も常に安いので、そんなものなのかもしれない。
 手放したカエルのおかげで残金が7000Gを超えた。

「さぁ! 竹を買いに行きますよ!」

 かなり強引に推し進められているが、釣竿を作れると考えたらテンションが上がってくるものだ。そのテンションでドリアード広場の木材店へ直行。



「ここがその店ですか。なかなか面白い店ですねー」

 グスタフさんは来たことが無かったようで、陳列されている樹木を観覧している。

「それでー。買えるだけお金持ってきたの?」

「もちろん!」

 ニヤリと笑うドリアードが竹ゾーンに向かい始めたので、その後ろについていく。
 改めて見ても、真っ直ぐ上に伸びる竹は力強く感じる。
 店員と太さや長さを確認していた時に思い出したのが、ケットシーが使うということ。
 彼らの身長や手の大きさを考えていなかったな。
 それを確認するために出直そうとしたが、それには及ばないと言われた。

「ケットシーだったら……これくらいかな?」

 見せてもらった竹は、どれもちょうど良いサイズ。ただし、どれも小さめで、他の竹からすると少し見劣りする。
 どこから取り出したのか、ソロバンを取り出して玉を弾き出す。

「このサイズで5本なら……値下げかおまけつける?」

「良いの!?」

 というか値下げしてくれるなら、5000Gいらなかったじゃないか!
 まぁ、今それを言っても仕方ないが、ウーゴの竿も作る約束したからな。
 大きめの竹1本と、ケットシーサイズのを1本追加。

「今度はもっといっぱい買ってよ? 最近お客さん少ないんだからさぁ」

「お金必要なの? ドリアードが金使うイメージなんて無かったけど、何を買うんですか?」

「それは偏見だぞ! 高級肥料はどこ行っても品薄で高価なんだ!」

 肥料か!
 確かにそれなら納得だな。
 もしかして良い堆肥でも見つければ、売りつけられるか?
 なんて考えてみたけど、広場の土もかなりフカフカだから、下手な土を持ってきてもなぁ。
 心に留めておくだけにしておこう。
 そして、本日の長旅を終える為、工房へ戻ることになる。



 ホクホクしながらドワーフ広場までたどり着くと、魔法工房前でパッドともう一体のケットシーに出会った。

「あ、パッド!」

「ハッチか。釣竿作れそう?」

「やっと素材用意できたよ。あと数日だけ待ってくれ」

 パッドの尻尾がゆれて嬉しそうにしている。隣のケットシーも目がキラキラしているので、彼も釣竿を受け取る一人なのかもしれないな。

「なーん、ななーん」

「うなん、にゃー」

 ケットシー同士で話し始めたのは見ていたけど、全く内容がわからないな。猫の挨拶にしか見えない。
 そしてカワイイ。

「じゃあ、よろしく頼みゃー」

 うみゃみゃと楽しげに去る2人を見送った後、工房に入ろうとする時、グスタフさんが「猫語を翻訳する魔道具」と言ったのを聞き逃していない。
 俺もとても欲しいと思ったけど口には出さず、心の中でつぶやくだけにしておいた。
(是非作っていただきたい。)
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