59 / 111
新しい都市
中央広場にスケスケの木
しおりを挟む
「あれ? モウカさんは?」
「今日は配達品届けるクエストでソロだってさ」
「残念だなぁ」
「案内が欲しいだけでしょ? とか言っている俺も案内が欲しい」
我々3人は『おのぼりさん』なので道案内がいると助かったんだけど、今日は直感力が試されそうだな。
「さてどっちに行こうか。右だと思う? 左だと思う?」
「前後もあるよ?」
広場は東西南北に道が通っている。
後ろは通って来た道だから、行っても街の入り口へ向かうことになる。横道に入ればまた違うんだろうけど、迷うのがわかっているから選ばないよ。
ということは残りの3方向なんだけど、西と北は良いとして、東って街の外壁方向でしょ?
街に入る前から壁が見えてるのに、しょっぱなから見たいとは思わないなぁ。
「というわけで、今日は探索気分だから西か北の2択なんです」
「ほおぉ。もっとテキトーに決めているのかと思ってた」
「まぁ、今日も配信なんで、ちょっとは面白そうな場所へと思ってね。グスタフさんはどう?」
「私は北が良いですね」
なんでか聞いてみたら、グスタフさんの脳内地図だと、ここはまだ産業区の入り口付近らしい。中心地を目指してショップを探す目的みたい。
俺もテッケンさんもそれに賛同して、北へ行くことになった。
「看板だと妖精大通り6って書いてあったけど、こんな道がいっぱいあるのかな?」
「昨日ミコノスと似てるって話しましたよね」
「グスタフさんが? 言ってたっけ?」
「ハッチさんが聞いてなかっただけじゃないか? 俺は聞いてたよ」
テッケンさんは聞いてたらしい。そしてコメントにも話してたと流れている。街並みばっかり見てたから、話の内容はほとんど覚えてないな。
「それで、ミコノスの街はもっと複雑なんです。曲がりくねり行き止まりも多々あって、それに比べるとわかりやすい道ですよ」
「俺にはわからないなぁ。大通りと言うだけあって、道幅は広いけど、階段の上下もあるよ?」
「それですよ!」
「へ?」
「上下しているということは、下に」
グスタフさんは面白そうに地面を指さしている。
「あ!」
「テッケンさんはわかったの?」
「たぶんだけど、地下があるのかもしれないな」
「それです! まぁ、すぐには行けないと思いますが、そのうちに期待しておきましょう」
地下と言えば、ドワーフ国があったのも地下だったな。地下があるなら、ここから繋がっているかも?
落ち着いたら調べてみようか。
上り下りはあるけれど、門から最初の広場までと比べると、確かに真っ直ぐな道。
ドワーフ村内の端から端までの距離は歩いたんじゃ無いか? なんて思っていると、前方が開けてきた。
「私の予想通り。ここが中心街でしたね」
大きな看板には『コネクト中央広場』と書かれている。真ん中には変わった木が一本生えていて、周りでくつろぐ小さな妖精たちがいる。
「あの透明な木はなんだ!? 周りの種族も初めて見たぞ」
テッケンさんに先を越されて言われたけど、同じ気持ち。
「綺麗だねー。木も見たいし、妖精っぽいのも話してみようよ」
「行こう!」
木に近づくほどに大きさの感覚が狂っていく。
「さっきより木がでかくなってない?」
「俺も思ってたんだ。妖精も大きくなってないか?」
後ろを見ると、周囲の建物も大きくなっているように見える。
「私たちが小さくなってる? 面白いですね」
「結界だよ。フェアリー族以外は、中心部に近づくと体が小さくなるようにしてあるんだ」
聞き慣れない声の主に振り返ると、羽の生えた妖精が頭上で飛んでいた。
「え? うわ!」
「おぉ……」
「飛んでる」
外から見るのと違って同じくらいの大きさ。
それが頭の上にいるもんだから、ビックリもするよ。
「驚かせてごめんね。中から見えてたから気になってさ」
「あ、どうも」
「あそこが気になるんだろ? 着いてきなよ」
その妖精に先導されて中央の木にたどり着くと、自分たちが小さくなったせいか、透明な木が樹齢1000年を超える大樹のように見える。
「これって何の木なんですか?」
「これはジュエルマザーツリー。名前のまんま宝石が成る樹だよ」
「触ってみたい」
「良いよー」
許可ももらったので触れてみたが、ひんやりとして気持ちがいい。
「特別変わったことは無いですね。いや、変わった樹ではあると思いますが」
「ハッチさん。ちょっと肩車してくれ」
「え? いいですけど」
テッケンさんを肩に乗せると、右へ左へ指示される。周りの妖精たちも面白そうにこちらを観察している。
「もちょい右!」
「このくらい?」
「よし! 採れた!」
「え?」
テッケンさんが降りてくると、右手に掴んだ何かを自慢げに見せてくる。
「これだよ」
「んー? これってジュエルマザーツリーの実?」
「そそ。取れるか試したけど、何も言われないからさ」
この人はたまーに恐ろしい行動に出る。大事そうに植えてあるし、何か祟《たた》りでも起きそうで俺はできないな。
テッケンさんは、手の上で虹色の宝石を転がしていると、だんだん煙が出始める。
「うわ!? ど、どうした」
煙が立ち上り樹に向かっていくと、木の実は小さくなっていき、とうとう無くなってしまった。
「ぷぷ。思った通りの行動してくれて良かったよ!」
案内妖精が面白そうに話す後ろで、他の妖精たちも楽しそうに飛び回り、あちこちで笑い声が飛び交っている。
「半分くらいはそうやって試すんだけど、取っても消えるだけさ!」
「えぇ? だったら先に言ってくれても良いじゃない」
テッケンさんがそれを言うのもな。
何か言われてもやったとしか思えないぞ。
「これも僕らの楽しみなんだよ。気になるだろうから説明してあげるよ」
近くにあるテーブルに案内されると、妖精が自己紹介を始めた。
「今日は配達品届けるクエストでソロだってさ」
「残念だなぁ」
「案内が欲しいだけでしょ? とか言っている俺も案内が欲しい」
我々3人は『おのぼりさん』なので道案内がいると助かったんだけど、今日は直感力が試されそうだな。
「さてどっちに行こうか。右だと思う? 左だと思う?」
「前後もあるよ?」
広場は東西南北に道が通っている。
後ろは通って来た道だから、行っても街の入り口へ向かうことになる。横道に入ればまた違うんだろうけど、迷うのがわかっているから選ばないよ。
ということは残りの3方向なんだけど、西と北は良いとして、東って街の外壁方向でしょ?
街に入る前から壁が見えてるのに、しょっぱなから見たいとは思わないなぁ。
「というわけで、今日は探索気分だから西か北の2択なんです」
「ほおぉ。もっとテキトーに決めているのかと思ってた」
「まぁ、今日も配信なんで、ちょっとは面白そうな場所へと思ってね。グスタフさんはどう?」
「私は北が良いですね」
なんでか聞いてみたら、グスタフさんの脳内地図だと、ここはまだ産業区の入り口付近らしい。中心地を目指してショップを探す目的みたい。
俺もテッケンさんもそれに賛同して、北へ行くことになった。
「看板だと妖精大通り6って書いてあったけど、こんな道がいっぱいあるのかな?」
「昨日ミコノスと似てるって話しましたよね」
「グスタフさんが? 言ってたっけ?」
「ハッチさんが聞いてなかっただけじゃないか? 俺は聞いてたよ」
テッケンさんは聞いてたらしい。そしてコメントにも話してたと流れている。街並みばっかり見てたから、話の内容はほとんど覚えてないな。
「それで、ミコノスの街はもっと複雑なんです。曲がりくねり行き止まりも多々あって、それに比べるとわかりやすい道ですよ」
「俺にはわからないなぁ。大通りと言うだけあって、道幅は広いけど、階段の上下もあるよ?」
「それですよ!」
「へ?」
「上下しているということは、下に」
グスタフさんは面白そうに地面を指さしている。
「あ!」
「テッケンさんはわかったの?」
「たぶんだけど、地下があるのかもしれないな」
「それです! まぁ、すぐには行けないと思いますが、そのうちに期待しておきましょう」
地下と言えば、ドワーフ国があったのも地下だったな。地下があるなら、ここから繋がっているかも?
落ち着いたら調べてみようか。
上り下りはあるけれど、門から最初の広場までと比べると、確かに真っ直ぐな道。
ドワーフ村内の端から端までの距離は歩いたんじゃ無いか? なんて思っていると、前方が開けてきた。
「私の予想通り。ここが中心街でしたね」
大きな看板には『コネクト中央広場』と書かれている。真ん中には変わった木が一本生えていて、周りでくつろぐ小さな妖精たちがいる。
「あの透明な木はなんだ!? 周りの種族も初めて見たぞ」
テッケンさんに先を越されて言われたけど、同じ気持ち。
「綺麗だねー。木も見たいし、妖精っぽいのも話してみようよ」
「行こう!」
木に近づくほどに大きさの感覚が狂っていく。
「さっきより木がでかくなってない?」
「俺も思ってたんだ。妖精も大きくなってないか?」
後ろを見ると、周囲の建物も大きくなっているように見える。
「私たちが小さくなってる? 面白いですね」
「結界だよ。フェアリー族以外は、中心部に近づくと体が小さくなるようにしてあるんだ」
聞き慣れない声の主に振り返ると、羽の生えた妖精が頭上で飛んでいた。
「え? うわ!」
「おぉ……」
「飛んでる」
外から見るのと違って同じくらいの大きさ。
それが頭の上にいるもんだから、ビックリもするよ。
「驚かせてごめんね。中から見えてたから気になってさ」
「あ、どうも」
「あそこが気になるんだろ? 着いてきなよ」
その妖精に先導されて中央の木にたどり着くと、自分たちが小さくなったせいか、透明な木が樹齢1000年を超える大樹のように見える。
「これって何の木なんですか?」
「これはジュエルマザーツリー。名前のまんま宝石が成る樹だよ」
「触ってみたい」
「良いよー」
許可ももらったので触れてみたが、ひんやりとして気持ちがいい。
「特別変わったことは無いですね。いや、変わった樹ではあると思いますが」
「ハッチさん。ちょっと肩車してくれ」
「え? いいですけど」
テッケンさんを肩に乗せると、右へ左へ指示される。周りの妖精たちも面白そうにこちらを観察している。
「もちょい右!」
「このくらい?」
「よし! 採れた!」
「え?」
テッケンさんが降りてくると、右手に掴んだ何かを自慢げに見せてくる。
「これだよ」
「んー? これってジュエルマザーツリーの実?」
「そそ。取れるか試したけど、何も言われないからさ」
この人はたまーに恐ろしい行動に出る。大事そうに植えてあるし、何か祟《たた》りでも起きそうで俺はできないな。
テッケンさんは、手の上で虹色の宝石を転がしていると、だんだん煙が出始める。
「うわ!? ど、どうした」
煙が立ち上り樹に向かっていくと、木の実は小さくなっていき、とうとう無くなってしまった。
「ぷぷ。思った通りの行動してくれて良かったよ!」
案内妖精が面白そうに話す後ろで、他の妖精たちも楽しそうに飛び回り、あちこちで笑い声が飛び交っている。
「半分くらいはそうやって試すんだけど、取っても消えるだけさ!」
「えぇ? だったら先に言ってくれても良いじゃない」
テッケンさんがそれを言うのもな。
何か言われてもやったとしか思えないぞ。
「これも僕らの楽しみなんだよ。気になるだろうから説明してあげるよ」
近くにあるテーブルに案内されると、妖精が自己紹介を始めた。
0
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
「unknown」と呼ばれ伝説になった俺は、新作に配信機能が追加されたので配信を開始してみました 〜VRMMO底辺配信者の成り上がり〜
トス
SF
VRMMOグランデヘイミナムオンライン、通称『GHO』。
全世界で400万本以上売れた大人気オープンワールドゲーム。
とても難易度が高いが、その高い難易度がクセになると話題になった。
このゲームには「unknown」と呼ばれ、伝説になったプレイヤーがいる。
彼は名前を非公開にしてプレイしていたためそう呼ばれた。
ある日、新作『GHO2』が発売される。
新作となったGHOには新たな機能『配信機能』が追加された。
伝説のプレイヤーもまた配信機能を使用する一人だ。
前作と違うのは、名前を公開し『レットチャンネル』として活動するいわゆる底辺配信者だ。
もちろん、誰もこの人物が『unknown』だということは知らない。
だが、ゲームを攻略していく様は凄まじく、視聴者を楽しませる。
次第に視聴者は嫌でも気づいてしまう。
自分が観ているのは底辺配信者なんかじゃない。
伝説のプレイヤーなんだと――。
(なろう、カクヨム、アルファポリスで掲載しています)
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ
Lunaire
SF
「強くなくても楽しめる、のんびりスローライフ!」
フリーターの陽平が、VRMMO『エターナルガーデンオンライン』で目指すのは、テイマーとしてモンスターと共にスローライフを満喫すること。戦闘や冒険は他のプレイヤーにお任せ!彼がこだわるのは、癒し系モンスターのテイムと、美味しい料理を作ること。
ゲームを始めてすぐに出会った相棒は、かわいい青いスライム「ぷに」。畑仕事に付き合ったり、料理を手伝ったり、のんびりとした毎日が続く……はずだったけれど、テイムしたモンスターが思わぬ成長を見せたり、謎の大型イベントに巻き込まれたりと、少しずつ非日常もやってくる?
モンスター牧場でスローライフ!料理とテイムを楽しみながら、異世界VRMMOでのんびり過ごすほのぼのストーリー。
スライムの「ぷに」と一緒に、あなただけのゆったり冒険、始めませんか?
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです
こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。
大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。
生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す!
更新頻度は不定期です。
思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
Festival in Crime -犯罪の祭典-
柿の種
SF
そのVRMMOは【犯罪者】ばかり――?
新作VRMMO「Festival in Crime」。
浮遊監獄都市を舞台に、【犯罪者】となったプレイヤー達がダンジョンに潜ったり、時にプレイヤー同士で争ったりしつつ、ゲームを楽しんでプレイしていく。
そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる