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何をするにも道具から

祝い品

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「あぁぁぁぁ!」

 曲げようとしたらポッキリ折れた!

「焼きが足んねーからだよ。」

 鋳つぶしても半分しか戻らない。

「ほれ。また手紙持ってけ。」

「うぇーっす。」







「またかよ!」

「細い場所で力入れるからそうなる。手紙持ってけ。」





「また来たか。」

「今回は重量減らしてきたんで、がっつり取ってきます。」

「じゃあ1層行くぞ。」



「くらえ!紐石!」

 銅の玉だと切れちゃうので、今度は石につけた。
 可能性は高くないが、これでスキルが上がらないかと思っている。

《糸術が0,1上昇》

 よし!
 やっぱり使えば戦闘でも上がる。
 石のロストも無くなったし、付ける物を変えれば長持ちするぞ。
 あとは耐えられる糸だが、それが無いんだよな。
 行動範囲が広がれば見つかると信じよう。






「ふぅ。あとは仕上げだ。」

 ハサミの留め具。
 この部分で2回壊してしまったが、今度は厚めにしたからいけるはず。

 留め具を挿して叩く!
 これで完成だが、ちゃんと使えるか…。

「可動も問題ないな。ヒビも無いし、うん。出来た。」

「かなり苦労してたわね。」

「ぶちさん。ちょっと持ってみて。」

 全面を見つつハサミを開け閉めする。

「形はあれだけど、使うのは出来るわ。」

「お疲れだな。劣化じゃない鉱石はどうだった?」

「親方!どうだじゃないですよ。一気に難易度上がるし、加減も難しくなって…。」

 スキルが足りないと、成功率の低下と難易度が急上昇する。劣化が無くなっただけで途端に作れなくなった。
 親方の話では、つかみ箸は鉄鉱石の中でも簡単な方らしい。ただし、劣化では作成できないので、鉄鉱石が最低ランクだ。

「そいつはお前からグスタフへの祝い品になる。明日までとっておけ。」

《クエスト:【つかみ箸】を作成しろ! が完了しました。》
《クエスト:ドワーフの成人祝い品 を開始します。》

 そういうことか。

「俺からより、親方が作った方が良いんじゃ。」

「馬鹿野郎!もう俺は別に作ってる!」

「え?私も作らなくて良いの?」

「お前は見習いすらなってねーだろ。石でも渡すか?」

「やめときます…。」

 確かに、小間使いの時って、作ったナイフも微妙だったな。
 とにかく渡す物は出来たから、余った鉱石で解体ナイフを作ってみよう。



「うおぉぉぉぉぉ!削れ削れ!削れろぉぉぉぉ!」

 軽く見てた俺がバカだった。
 成形と打ちは多少マシになったが、研ぎが出来ん。

「ハッチさん。もう30分ほどやってますけど…。」

「削れないのぉぉぉ!」

「放っておけ。あの調子なら、あと2時間はかかる。」

「お願いだから削れてえぇぇぇ!」


【鉄のナイフ--】
 マイナスって2個つくんだね。


 ◆ ◆ ◆



 成人の日。
 グスタフがログインしたのは夜だった。

《ドワーフ村1(日本) 成人の儀式を開始します。》

「ドワーフ村1ってなんだ?」

「ハッチさん知らないの?日本にもドワーフ村がいくつもあるのよ。それに分散してキャラ作成されるわけ。私の友達もドワーフなんだけど、別の村にいるわよ。」

 そんな風になってたのか。

「お前ら、広場に行くぞ。ハッチはあれを持っておけよ?」

「祝い品か。忘れないように…。そうだ録画しておこう。えっと録画はここだったっけ。映ってるかな?この後、ドワーフ村の成人の儀式開始。」

 店を閉めて全員で広場へ向かう。

 広場には屋台が出来て賑わっている。
 皮屋の少女も来ている。
 昼だったらいなかったのかな?

 広場の真ん中にはキャンプファイヤーが焚かれ、その前で髭の長いドワーフが1人立っている。

「みんな揃ったな。これより成人の儀式を行う。成人する者は前へ。」

 グスタフだけだな。

「では、これを装備するのじゃ。」

 金属のローブ?
 キラキラ光っているけど、金属ではないか。

「鱗?」

「そうだ。成人の時だけ貸し出している亜竜のローブ。お前の時も着るんだぞ。」

 話している間に装着していた。

「うむ。では皆の者。武器を掲げるのじゃ!」

 親方達の動きに習い、それぞれが自前の武器を掲げる。
 考える暇も無く言われたので、咄嗟にインベントリから出したのは。
【紐と石】

 グスタフは自前の槍を掲げていた。
 俺も成人までに少しマシなやつを作っておこう。

 しばらく掲げていると、地響きが鳴り出した。
 1分程度でおさまったが、グスタフの横に例の暗い穴が現れる。

「迎えに来た。」

「「あ。」」

 俺と一緒に声を出した人を見ると、テッケンさん。
 あのドワーフだよなと目で合図を送り合った。

「成人する者よ。名前を言え。」

「グスタフ。」

「これよりある場所へ連れていく。そこで儀式を続ける。良いな?」

「はい。」

 グスタフがドワーフと一緒にあの闇に入って行った。

「儀式は成立した!祝い品をこちらへ!あとは祭りじゃ!」

「「「「「「新たな同族に祝福を!」」」」」」

 村の特に年長者達が言うと、その体から光が迸りキャンプファイヤーへ集まっていく。
 キャンプファイヤーの光は戻ったが、祝い品を置く場所だけ光りを残している。

「ウチからの弟子はハッチだけだな。さぁ持って行くぞ。」

 俺が会ったことのある店の人達も全員いるが、それ以外にも大勢が祝い品を持ち寄っていた。

「皆置けたな?これより新成人が戻るまで宴じゃ!」

「「「「「うぉぉぉぉ!」」」」」


 親方もリリーさんも飲めや歌えや賑わっている。

「ぶち猫さんも行ってきたら?」

「ハッチさんは?」

「今、録画してるんだ。一応全部の屋台を撮ってから行くよ。」
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