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第6章 帝国編

第106話 龍印

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 アルクス達が純白龍とスペルビアと別れ、鏡を潜るとそこには目の前に藍碧龍が寝そべっていた。

「藍碧龍様、お久しぶりです。」
「む、アルクスか。久しいな。
 この鏡は純白龍のところから来たのだな。確かに中央大陸に向かったとは聞いていたな。」

アルクスが藍碧龍と話していると龍珠の中からアーラが飛び出し、藍碧龍へと擦り寄った。

「おぉ、御子か。産まれてから直接顔を合わせるのは初めてだったな。
 元気そうでなによりだ。
 アルクスにはよくしてもらっているのか?」

アーラは軽く鳴いて答えていたが、どうやらそれだけで藍碧龍とは意思の疎通ができたらしい。

「ふむ。アルクスよ、よくぞ真龍の卵を孵し、そして御子を育ててくれた。
 その功績に対して褒美を授けよう。」

藍碧龍がそういうと龍脈から力を吸い上げて、3つの宝珠を作り出した。そしてそれをアルクス、バルトロ、アリシアの3人の口に放り込んだ。

「一体これは…うぐっ…」
「アルクス、大丈夫…!」

宝珠を飲み込んだ3人は急に苦しみ出した。

「だ、大丈夫…龍珠が作られた時の感覚に似ているから…」 

アルクスはかろうじて意識を保てていたが、バルトロとアリシアは意識を失ってしまった。

「ら、藍碧龍様…これは、一体…?」
「何、褒美として力を授けただけだ。
 アルクス、お主には龍珠の強化を、そしてそこの2人には龍印を授けた。」
「龍印ですか?」
「そうだ。新たに龍珠を作るのは難しいが、龍の眷属の証として体の内側から印を刻み込んだ。
 これがあれば龍を友とし、龍装を会得することもできるであろう。」
「そうだったのですね、ありがとうございます。
 2人が起きるまで今までの旅路をお話してもよろしいでしょうか?」
「うむ、頼む。」

そうしてアルクスはバルトロとアリシアが意識を戻すまで、ここを旅立ってから今までの話を藍碧龍へと話した。

「他の龍王達から少し話は聞いていたが、よく頑張ったようだな。
 さて旅をして様々な龍に出会い、お主は何を感じ、何を思った?」
「やはり不授であることによる生きづらさを感じました。ですが僕達は龍脈の力という得難い力を得たおかげである程度の自由を得ることができました。ですが、力を持たない人々も自由に生きる権利はあるはずです。
ラピスなどの力を持たず、たとえ龍脈の力を使えない人々でも自由に幸せに暮らせる場所を作りたいと思いました。
ですが僕にはまだまだ力が足りません。多くの人が幸せに暮らせる場所を作るという目標はできたものの、実際は何から始めたら良いものか…」

アルクスは純白龍に語ったことを再度話したものの、そこから先にどうしたら良いかという点で悩んでいた。

「ふむ、そうなると国作りか…中々面白いではないか。真紅龍にも会っておいた方が良いな。
 昔は大地を壊し、新たに島を作り出すこともあいつはよくやっていた。
 帝国のとある山奥の地下深くにいるかと思うが...」
「帝国の龍王様の場所でしたらわかります。帝国で活動している探索者の先輩方に話は伺いました。
 この前帝国に立ち寄った際には優先すべきことがあったので寄れなかったのですが、危険な場所だと伺っております。」
「そうだな。だが、先程授けた力が馴染めばお主達もおそらく第3位階に到達するであろう。
 第3位階であれば、なんとか辿り着けるはずだ。
 あとは帝国に向かうのであれば、王国と帝国の戦争に関して我が知ってることを伝えておこう。
 結論としては今回の戦は王国側が敗北した。
 いつもの小競り合いとは違い、帝国が新たな兵器だか戦術だかを用いてかなりの戦力を投入してきた様子らしい。
 王国側は蒼天十二将が数名参戦したものの、相性が悪かったのか十二将からも死傷者が出たみたいだ。
 国境付近は割と惨状が広がっている様子だが、補給の問題があるからか帝国側も前線を上げることしていない。
 直接見た訳ではないからなんとも言えないが、国家間のバランスがこれから変わっていくかもしれないな。」
「蒼天十二将が…そう言えば兄様は蒼天十二将になれたのでしょうか…」
「戦争に出陣した十二将の中にはお前の兄はいないな。
 だが、戦争の結果を見るに十二将とやらもこの機会に再編されるのではないか?
 帝国に行くのであれば人間同士の戦争の爪痕を見て、それによって何がもたらされるかも知っておくと良いだろう。」
「ありがとうございます。
 久しぶりの王国なので、王都やメルドゥースに寄った後に、戦争の跡地を見にいこうと思います。」

その頃、バルトロやアリシアも気がついた様で意識を取り戻していた。
その様子を見た藍碧龍は納得したように頷くと、光り輝く宝石を3つ取り出した。

「ではお主達に旅立つ前にこれを授けよう、龍玉だ。」

龍玉は光を放ちながら、アルクス達の前へ浮かんでいった。

「これは龍脈の力が凝縮されたもので龍脈の力を増幅してくれるものだ。使い方は意識せずともわかるだろう、龍装鎧に埋め込んでおこう。」

すると龍玉は龍装鎧の中へ勝手に入り込んだかと思うと、胸元に宝玉が現れた。

「これが龍玉…」
「さてお前達だけではあれだな、御子にはこれを渡しておこう。頭を出すがいい。」

アーラは首飾りの様なものをかけられたが、すぐに消えてしまった。

「さて真紅龍に出会い、覚悟ができたならいずれまたここへ来るが良い。」

藍碧龍に礼を言い、再度旅立つことにした。
以前と同様にプロウィスが辺境へと繋がる境界へと案内してくれた。

「これは内緒なのですが、皆様が旅立たれてからの話を聞く度にご主人様はとても楽しそうにしておりました。
 ありがとうございます。
 これからも思うままに旅を続けていただければと思います。
 そして引き続き旅の無事をお祈りしております。」

プロウィスの案内に感謝を伝え、境界を越えると少し離れたところに懐かしいメルドゥースの街を眺めることができた。

「久しぶりだね!」
「あぁ、こんなに離れたことはなかったからな。」
『あれがバルトロとアリシアが育った街?』
『そうだよ。あれから何か変わったことはあったかな。
 とりあえず数日はメルドゥースでゆっくりして、これからのことを話し合おうか。』

数年ぶりの帰郷となったバルトロとアリシアは胸を弾ませたいた。
そしてクリオは初めて降り立つ王国の街に若干の緊張を見せていた。



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