だがしかし

帽子屋

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「このあたりへ現れ始めた頃の人間たちは、ここにいるたちよりずっとひ弱で、臆病で、力もなく慎ましい存在でした。ものものたちの気配を感じ、時にはその姿を見ては怯え、しかし自分たち人間よりもずっと永くから存在している彼らを畏怖と共に敬いながらこの山に訪れる、そんな存在でした」
静かに話しを紡ぐさくらさんの横顔は凪いでいて、庭の向こうにある桜の樹に向けられた眼差しからは昔話を語るというより、遠い遠い昔をなぞりかえしているようにも見えた。俺はなんでそんなふうに自分が、この隣に座るきれいな人の横顔を見てそんなことを思ったのかはわからなかったが、ただ、なんとなく、なんの疑問も持たず、その口から流れる言葉に耳を傾け、それはなんの障りもなく俺の中に浸透していった。
「そんな未熟な人間を、鬼はものものたちとともに初めは見ていたのですが、あるとき鬼は気が付きました。人間が、その最期を迎えるときにとても騒がしいことに」
「騒がしい……」
「ええ。彼らはその最期のとき、静かに流れに身をまかすのではなく、泣き、叫び、時に怒りに荒れ狂うような者も」
「それは鬼が……」『恐ろしかったから?』俺の問いは口からは出てこなかった。とてもそんなふうには思えなかったからだ。
俺が飲み込んだ問いに答えるように、さくらさんは頷くような仕草を見せた。
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