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畏まりました。婚約解消ですわね。

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 「お父様、先程、レジナルド殿下から・・・・・・こちらから婚約解消の申し出をしてほしいと、お話がありました。申し訳ありません」

 「──そうか。   アディは解消していいのかい?  殿下を慕っていただろう?  」

 「え?」
 

 僕はイライジャ・オーニソガラム。
 オーニソガラム侯爵家の嫡男だ。
 父の執務室で仕事を手伝っていたら、双子の妹のアデレードが報告に来たんだ。

 あの馬鹿王子が我が家からしろって言ってきたと・・・・・・。
父上はアディが馬鹿王子を好きだったと思っているみたいだが、そんな事ある訳がない。

 父上がを言うからアディは口をポカンと開けて固まってしまった。
しょうがないな。僕はアディの顎を持って閉じさせる。ついでに妹の頭もなでる。

 「父上はアディが殿下を好きだと思っていたのですか?   ありえない事だから、アディ固まっちゃったじゃないですか」

 「そうなのか?」

 まだ、ポカンとしてる妹を長椅子に座らせ執事に紅茶を頼み、僕も隣に座りながら父上に答える。

 「僕達の婚姻は家の為でしょう。  父上も家の為に母上を娶ったのでしょう?  
アディは殿下に情なんてありませんよ。
──アディ?  殿下の事、どう思ってたのかアディの、今、言うべきだよ。
父上が何の憂いもなく婚約解消できるように・・・ね」

 
 貴族の婚姻なんて、家と家を結ぶ為の義務だ。
 本人達の気持ちなんて必要ない。
 家の為に子をつくる。
 夫婦関係は本人達の努力次第だ。
 仮面夫婦となり、お互い愛人を持つ貴族なんて珍しくない。


 「お父様、わたくし、殿下の事をお慕いした事はございませんわ」
 
 僕と同じ水浅葱色みずあさぎいろの瞳で父上の翡翠色ひすいいろの瞳を見つめながら、妹が意を決して話し始める。

 「貴族の婚姻は家の為ですもの──お父様がお決めになった婚約に異論はございませんわ。殿下の事は幼い頃からの婚約者。唯それだけですわ。殿下の事をお慕いした事なんてございません」


 あーあ。
 大人しい妹が容赦なく殿下に情はないと、ハッキリ言うものだから今度は父上が目を見開いて驚いている。
 僕はもう少し黙っていようかな。


 「そうか。──では、婚約解消の申し出をしよう。陛下にはありのまま報告する。──解消したら王都には居にくいだろう?  暫く領地に行くか?」



 そうですわねと、父上や僕とお揃いの胡桃色くるみいろのふわふわな髪で下を向いている妹の表情は分からないが、きっと王子に婚約解消された娘だからと世間体を考えているんだろう。



 「もう、殿下の婚約者ではなくなりますし、王都にいる意味はありませんもの。デビュタントまで引きこもりたいですわ」

 僕もあの鹿の尻拭いはもう嫌だし、妹が婚約者でなくなるのならば僕が側近候補としている意味もない。

 「そうだね。父上、僕もアディと一緒に領地に戻ります。 一方的に婚約解消された妹が心配でなりません。僕達のデビュタントまで、あと二年はありますし、それまで王都にいる意味はありませんから」

 
 エリヤも戻るのかと溜息を吐き、執事が入れた紅茶を飲みながら侯爵家当主として父上は これからの事を色々考えているみたいだが、多分大丈夫だろう。
 僕は小声で「アディ、明日には王都を出ようと思うんだけど、どう?」妹も紅茶をコクリと飲み「はやく領地に戻りたいですわ」と微笑んでいる。
 

 「父上、陛下の所へ行くのは明日にして貰えませんか? 父上が邸を出る時に僕達も領地に発ちます。アディ、殿下に貰った贈り物。父上に返して貰いなよ」

 「あ、そうでした。お父様、殿下から今まで贈った物を、生花やお菓子以外は全て返して欲しいとお願いされましたわ。明日、返して下さいますか?」

 うわー。
 まじかー。
 アディが殿下からの贈り物、礼儀として一度身に付けてから箱にしまっているのは知っていたけど、それを返せか。
 当て付けのつもりで言った事だが、まさか、もう、催促されていたとは・・・・・・本当にどうしようも無いな馬鹿王子は。

 「父上・・・・・・どうせなら生花も菓子も一緒に返しましょう。執事メイロンが記録を付けてますから、直ぐに手配してくれますよ」

 





 翌日、父上が陛下に婚約解消の申し入れをし王宮が大騒動だったみたいだが、僕達には関係ない。

 
 あの馬鹿王子は早々に王位継承権を剥奪され運命の相手の男爵家へ婿入りが決定したそうだ。
 
 その運命の相手は王子でない馬鹿に価値は無かったらしいが王命なので逃げれなかったらしい。

 その後の彼等は面白いくらいに没落して行った。


 
 あぁ、僕、いや侯爵家うちは何もしてないですよ。
 妹と婚約解消し縁は切れてますから。
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