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⑦婚約者の兄は・・・。──sideカール

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 数年前のある日、妹の婚約者が初めて領地を訪れた。
大事な話があるから妹の為にも一緒に聴いて欲しいと、いつも穏やかなアーロン殿下が思い詰めたように言われた。

 人払いされた客室に私達兄妹、アーロン殿下と乳兄弟ロドニー殿の四人だけの空間。

 彼が話し出してくれるのを私達はゆっくり待っていた。

 「───何から伝えればいいかな・・・・・・マリー?マリーは僕と婚姻したら・・・・・・子を望まれるよね?・・・・・・王侯貴族の婚姻は血を残す為の義務だ。
僕はマリーの事が大好きだけど僕達が婚約したのだって、お互いの家の為だ」

殿下は妹の瞳をみながら苦しそうに話し出した。

殿下の纏う雰囲気が苦しそうで。
妹も、殿下を安心させたかったのだろう「大丈夫ですわ」と殿下の手を両手でぎゅっと包み込んでいた。

妹と手を繋いだ彼の瞳が濡れているようだった。

私と彼の乳兄弟ロドニー殿は空気だ。

なかなか逢えない二人は兄の私から見ても微笑ましかった。

母上に妹の婚約者を、見習って自分の婚約者にも手紙やプレゼントをしなさいと彼からプレゼントが届けられる度に、さりげなくチェックされたものだ。

 「──先日、言われたんだ。
僕は弟が産まれた時に熱病に罹患して、数日間高熱が続いたそうだ。
・・・・・・各国の医務官達が研究しているそうなんだが、その、、あの」っスぅー

「僕には、その、子種がない可能性が高いそうだ。あの、まったくない訳では、なくて・・・・・・その、僕と婚姻しても子が出来ない可能性が高い。僕は第二王子だから兄上に、子が出来れば気にしなくていい。原因は、僕だから。でも。ローズマリーが辛い思いをするなは嫌だ!
──嫌なんだ。でも、僕は子どもで・・・・・・。ローズマリーと。ずっと一緒にいたいけど。婚約・・・・・・破棄されるかもしれない」

妹とずっと一緒にいたい。
最後に殿下が何かを言っていたが隣にいた妹には聞こえたかも知れないが、消え入りそうな声で聞き取れなかった。

そこにいたのは、王子としてではなく、唯のアーロン・クラヨヴァとして婚約者と向き合っている少年だった。










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拙作を読んで頂きありがとうございます。
本日よりR-15タグを追加致しました。
作品中の熱病に関してですが創作です。
似たような病気があるかも知れませんが作品の独自設定です。
ご不快に思われるかもしれませんが、御都合主義だな~とスルーして頂けるとありがたいです。
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