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婚姻相手が挨拶に来るそうですわ。③
しおりを挟む「・・・・・・」
「・・・・・・」
どういたしましょう。
先程、お会いしたばかりの、婚約の書類を記入したばかりで、一月後には夫となるイフェイオン公爵家のジェラルド様に庭を案内するように、父に言われたのですが、困りましたわ。会話が続かないのですわ。
我が国でのしきたりにより、婚約の申し込みは当主と本人が相手の邸に訪れますの。出迎えを当主夫妻がすれば、暗黙の了解で婚約成立との不文律がありますわ。ですから、両親が出迎えた時点で、いえ、おそらく話が我が家に来た時点で決定していた事なのでしょう。
応接室でのご挨拶の際、薔薇のミニブーケを頂きましたの。桃色が三本と白色が二本でしたわ。
ジェラルド様は意味をご存知でわたくしに贈ってくださったのかしら?
桃色の薔薇の花言葉は『上品』『感謝』『かわいい人』白色の薔薇の花言葉は『純潔』『尊敬』『私はあなたに相応しい』だったかしら。そして薔薇二本は『この世界は二人だけのもの』三本は『あなたを愛しています』五本だと『あなたに出会えて心から嬉しいです』だったかしら──どうしましょう。
重いですわ。
顔と名前は分かりますが・・・。
わたくしの記憶がなくなっていなければ、はじめましてのはずですわ。
はっ!
重いだなんて失礼な事を思ってしまったわたくしの考えが重いですわね。
「シラー嬢」
ジェラルド様が気を使って話しかけてくださったわ。
「はい」
「私達の婚約期間は一月と短い。先程婚約を交わしたばかりだが、貴女の事をレイとお呼びしてもいいだろうか?」
ジェラルド様はとても背が高く、わたくしは見上げなければ目が合わないのですが、少し屈んでわたくしの目を見て話してくださいましたわ。
わたくしなんて、心の中では勝手にジェラルド様とお呼びしていますのに。
「も、もちろんですわ。嬉しいですわ・・・。わたくしは、じぅ、ジェラルド様とお呼びしても?」
恥ずかしい!噛んでしまいましたわ。自分の顔や耳が熱いですわ。
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