29 / 30
第三章 ゼフス
29 理由
しおりを挟む
アーリスとクロノスは更地になった街の中を歩いていく。
二人の行先には一人の男がいた。
彼の名はイーオス。
800年前にこの地に降り立ち、人類にスキルを与えた神に等しい存在。
そして、アーリス達の住む街を大量の毒水を使って更地にした張本人である。
「初めまして神様」
アーリスは落ち着いた様子でイーオスに話しかける。
イーオスは冷たい眼差しでアーリス達を見つめる。
「イーオス様、なぜこのようなことを!?800年前、貴方様はわし達のことを救ってくださったのに!」
クロノスはイーオスに向かって叫ぶ。
イーオスは自分の名前が呼ばれた瞬間一瞬顔を驚かせたが、すぐに表情を元に戻す。
「まだ私の名前を知っている者がいたとは、驚いた」
男は体をアーリス達に向けて、話し始める。
「……800年の間、お前たちの様子を見させて貰っていた。私が初めに特権を与えたもの達は誰かを守るために、誰かを救うために特権を使っていた。しかし、お前たちは特権を自らの私利私欲のためにしか使おうとしない。時間が経つにつれてお前たち人間はどんどんと腐っていった。お前たちに、この青き星はふさわしくない」
イーオスはアーリス達を指さして、冷たく言い放つ。
「お前たち愚者を生贄にして、各時代、この世界に生きたほんのひと握りの善人を蘇らせる。私の力でな」
「……そんなこと、絶対させないっす!」
声の方向を見ると、剣を杖代わりににしながら苦しそうに立っているゼフスがいた。
ゼフスはアーリスがいるのに気づくと一瞬顔をしかめたが、すぐにイーオスに向き直る。
「自分や、あのフェンガーリとか言うやつはともかく、エルミス様はこの街を守るために戦っていたっす!」
「違うな」
イーオスは即答する。
「エルミスというのはあの青い髪をした人間だろう。アレが戦っていたのはこの街のためなどではない」
イーオスはそう言って剣でアーリスのことを指す。
「この男のためであろう?」
「……ッ!だまるっす!!神様モドキが!」
イーオスにエルミスの心中は分からない。
しかし、こう言えばゼフスが感情的になるのはわかっていた。
なぜなら見ていたからだ。
800年間ずっと、愚かな人間達を見続けていたからだ。
その中にはもちろん、ゼフスやエルミス、フェンガーリ達のことも含まれている。
「仕方ない、加勢しよう」
「待つのじゃ、アーリス!」
武器もなしに突っ込もうとするアーリスをクロノスが止める。
「あの女じゃ。わしを眠りから覚まし、お前を殺せと命じたのは」
「……。でも、イーオスは俺たちの共通の敵だ。昔何があったかよりも、今の方が大事でしょ?」
「だが、お主はまだ本調子では……」
クロノスは心配そうにアーリスを見つめる。
「まあ、いいリハビリだと思えば……ね」
アーリスはクロノスから目を離しイーオスの方を向く。
「大丈夫。もう誰かのためにって言い訳して、自分の命を粗末にしたりしないから。なんと言ったって、クロノスが救ってくれた命だからね」
クロノスは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「~~!あーもう好きにせい!付き合ってやるわい!!Sランク特権を発動するのじゃ!」
クロノスがどう言うと、何処からともなく岩が降ってくる。
そして、その岩は形を変えて、一本の剣になる。
「とりあえず、今はこれで何とかせい!」
「ありがと!一生大事にするねっ!」
「う、うるさい!口より手を動かすのじゃ!」
アーリスと顔が真っ赤なクロノスもゼフスに続いてイーオスに突撃する。
「Dランク特権を発動する!」
「Sランク特権を発動するのじゃ!」
「Aランク特権を発動っす!」
三人は同時に特権を発動する。
クロノスの特権でイーオスの下半身は地面に埋まってしまう。
上半身はゼフスの特権で生成した植物のツルで、拘束されている。
そこをアーリスが炎をまとった剣で斬り込もうとするが……
「痛っ!」
「ッ!どこ見てるっすか!」
同じく斬り込もうとしていたゼフスとぶつかってしまい、イーオスの前で倒れてしまう。
「愚かな」
イーオスがつぶやくと、ゼフスの特権のツルは消えて、埋まっていた下半身も時間が戻るように地上へ戻っていく。
「あー……」
「まあ、そうなるわな」
事前にクロノスから話を聞いていたアーリスはクロノスの方を見て苦笑する。
「随分と余裕そうだな。赤髪の小僧、」
イーオスがそう言った瞬間、アーリスとゼフスを地面が飲み込もうとしてくる。
「これ、クロノスの特権と同じだ!」
アーリスが叫ぶと同時にクロノスも自分の特権を使い、必死に抵抗する。
しかし、抵抗虚しくアーリスとゼフスは飲み込まれて行ってしまった。
二人の行先には一人の男がいた。
彼の名はイーオス。
800年前にこの地に降り立ち、人類にスキルを与えた神に等しい存在。
そして、アーリス達の住む街を大量の毒水を使って更地にした張本人である。
「初めまして神様」
アーリスは落ち着いた様子でイーオスに話しかける。
イーオスは冷たい眼差しでアーリス達を見つめる。
「イーオス様、なぜこのようなことを!?800年前、貴方様はわし達のことを救ってくださったのに!」
クロノスはイーオスに向かって叫ぶ。
イーオスは自分の名前が呼ばれた瞬間一瞬顔を驚かせたが、すぐに表情を元に戻す。
「まだ私の名前を知っている者がいたとは、驚いた」
男は体をアーリス達に向けて、話し始める。
「……800年の間、お前たちの様子を見させて貰っていた。私が初めに特権を与えたもの達は誰かを守るために、誰かを救うために特権を使っていた。しかし、お前たちは特権を自らの私利私欲のためにしか使おうとしない。時間が経つにつれてお前たち人間はどんどんと腐っていった。お前たちに、この青き星はふさわしくない」
イーオスはアーリス達を指さして、冷たく言い放つ。
「お前たち愚者を生贄にして、各時代、この世界に生きたほんのひと握りの善人を蘇らせる。私の力でな」
「……そんなこと、絶対させないっす!」
声の方向を見ると、剣を杖代わりににしながら苦しそうに立っているゼフスがいた。
ゼフスはアーリスがいるのに気づくと一瞬顔をしかめたが、すぐにイーオスに向き直る。
「自分や、あのフェンガーリとか言うやつはともかく、エルミス様はこの街を守るために戦っていたっす!」
「違うな」
イーオスは即答する。
「エルミスというのはあの青い髪をした人間だろう。アレが戦っていたのはこの街のためなどではない」
イーオスはそう言って剣でアーリスのことを指す。
「この男のためであろう?」
「……ッ!だまるっす!!神様モドキが!」
イーオスにエルミスの心中は分からない。
しかし、こう言えばゼフスが感情的になるのはわかっていた。
なぜなら見ていたからだ。
800年間ずっと、愚かな人間達を見続けていたからだ。
その中にはもちろん、ゼフスやエルミス、フェンガーリ達のことも含まれている。
「仕方ない、加勢しよう」
「待つのじゃ、アーリス!」
武器もなしに突っ込もうとするアーリスをクロノスが止める。
「あの女じゃ。わしを眠りから覚まし、お前を殺せと命じたのは」
「……。でも、イーオスは俺たちの共通の敵だ。昔何があったかよりも、今の方が大事でしょ?」
「だが、お主はまだ本調子では……」
クロノスは心配そうにアーリスを見つめる。
「まあ、いいリハビリだと思えば……ね」
アーリスはクロノスから目を離しイーオスの方を向く。
「大丈夫。もう誰かのためにって言い訳して、自分の命を粗末にしたりしないから。なんと言ったって、クロノスが救ってくれた命だからね」
クロノスは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「~~!あーもう好きにせい!付き合ってやるわい!!Sランク特権を発動するのじゃ!」
クロノスがどう言うと、何処からともなく岩が降ってくる。
そして、その岩は形を変えて、一本の剣になる。
「とりあえず、今はこれで何とかせい!」
「ありがと!一生大事にするねっ!」
「う、うるさい!口より手を動かすのじゃ!」
アーリスと顔が真っ赤なクロノスもゼフスに続いてイーオスに突撃する。
「Dランク特権を発動する!」
「Sランク特権を発動するのじゃ!」
「Aランク特権を発動っす!」
三人は同時に特権を発動する。
クロノスの特権でイーオスの下半身は地面に埋まってしまう。
上半身はゼフスの特権で生成した植物のツルで、拘束されている。
そこをアーリスが炎をまとった剣で斬り込もうとするが……
「痛っ!」
「ッ!どこ見てるっすか!」
同じく斬り込もうとしていたゼフスとぶつかってしまい、イーオスの前で倒れてしまう。
「愚かな」
イーオスがつぶやくと、ゼフスの特権のツルは消えて、埋まっていた下半身も時間が戻るように地上へ戻っていく。
「あー……」
「まあ、そうなるわな」
事前にクロノスから話を聞いていたアーリスはクロノスの方を見て苦笑する。
「随分と余裕そうだな。赤髪の小僧、」
イーオスがそう言った瞬間、アーリスとゼフスを地面が飲み込もうとしてくる。
「これ、クロノスの特権と同じだ!」
アーリスが叫ぶと同時にクロノスも自分の特権を使い、必死に抵抗する。
しかし、抵抗虚しくアーリスとゼフスは飲み込まれて行ってしまった。
1
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説
最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜
妄想屋さん
ファンタジー
最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。
彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、
「このパーティを抜けたい」
と、申し出る。
しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。
なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる