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第三章 ゼフス
28 年齢
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「ええと……」
「ち、近いの……」
アーリスとクロノスは突然響き渡った轟音が聞こえてからしばらくした後、何故か突然大津波が来たため、クロノスの特権を使用し、大量の土や砂で作った球体に体を固定した状態で入って何とかやり過ごしていた。
しかし、その球体は慌てて作ったためか、人が入るにはものすごく小さな球体だった。
二人の体は完全に密着し、顔もお互いの肩の上に置いている。
その状態でかれこれ二時間程の彼らは流され続けてた。
(ク、クロノスの当たっちゃいけないところが当たって……。声も耳元で聞こえてくるし、大きく揺れる度に耳元で色っぽい声が聞こえてくるし……。早く終われぇぇぇ~!)
(ア、アーリスの声が耳元で……。揺れる度に優しい声で大丈夫ってささやかれて……。アーリスの匂いがするのじゃ……。意識が……溶ける……。理性が……)
不意にクロノスがアーリスの耳をハムっと甘噛みする。
「ぇぇぇぇ!?ちょっと――」
(なんで急にそんなことするの!?ここからだとクロノスの表情が見えない……!何を考えているんだクロノスは!)
「――や、やめてよ。クロノス」
(はうっ!そんな情けない声を出されたら余計にいじめたくなるじゃろうが……!が、我慢出来ん……。だがアーリス、お、お前が悪いのじゃぞ……!)
その後、流され終わるまで、クロノスはずっとアーリスの耳をハムハムしていたのだった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
しばらくしてアーリス達の入っていた球体の動きが止まった。
「む、止まったのう」
「はぁはぁ……そ、そうだね。もう出てもいいんじゃない?」
アーリスは涙目になりながらクロノスに提案する。
「そうじゃな、じゃあ続きはまた今度じゃ」
「もう勘弁してよ……」
クロノスは特権を解除する。球体から解放された二人は周りの様子を見る。
「だいぶ街から離れてしまったようじゃの」
「そうだね……。とりあえず街の様子を知りたいな。クロノス、特権で何とかできない?」
「造作もないぞ、Sランク特権を発動するのじゃ」
クロノスがそう言うと、アーリス達の立っている地面が高くなっていく。
「大地に関することならわしにおまかせじゃ!」
クロノスは胸を張りながら得意げに言う。
「頼りにしてるよ~」
しばらくすると街の様子が見えてくる。
「やっぱり建物とかは残ってないのう」
「……生き残った人、どれくらいいるんだろう」
「冒険者や力のあるもの達は何人か助かったかもしれんが、そうでないものは……ん?」
クロノスの目線が一点に釘付けになる。
アーリスも疑問に思い、その方向を見ると一人の男がふわふわと浮いていた。
距離があるので顔などは確認できなかったが、先程の津波と関係があることは容易に想像できた。
「あ、あれはまさか、イーオス様か?だがなぜこのようなことを……」
「イーオス?あの人、クロノスの知り合い?」
どんどん顔が青ざめていくクロノスをみてアーリスも動揺し始める。
「あれは人ではない。どちらかといえば神に近い存在じゃ。あの方は800年前、この地に降り立ち、魔獣どもに蹂躙されるしかなかった我ら人間に自分の力の一部を与えてくださったのじゃ」
「もしかしてそれって――」
「そうじゃ、わしらが使っている特権のことじゃ」
「……待って、なんでクロノスがそんなこと知ってるの?」
ふと疑問に思ったアーリスはクロノスに尋ねる。
「なぜって、当時わしも見ていたからじゃが」
「……クロノスって今何歳?」
「わしが作られた18年後にわしの新型が作られてわしは封印されたからのう……」
「待って、頭が混乱する……」
「まあ、精神年齢は18歳じゃ!」
「ふーん、実年齢は?」
「精神年齢は18歳じゃ!!」
クロノスは実年齢のことは頑なに話そうとはしなかった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
街から遠く離れた場所でエルミスは木にもたれ掛かりながら、遠くを見つめていた。
(とりあえず、波に飲まれる寸前に、あの場にいたゼフスやフェンガーリ達は、私と同じように水の膜でおおってあの毒水には触れないようにはしたけど……)
「何もできなかったな……私……」
(きっと、街の人はほとんど死んじゃったよね……。私……騎士団なのに)
エルミスの目に涙が浮かぶ。
(……私、最低だな。街のみんなのことよりも、アーリスが生きてるかどうかの方が気になっちゃうよ。きっと、望みは薄いだろうな。それでも……)
「アーリス……お願い……せめて、あなただけは……」
「ち、近いの……」
アーリスとクロノスは突然響き渡った轟音が聞こえてからしばらくした後、何故か突然大津波が来たため、クロノスの特権を使用し、大量の土や砂で作った球体に体を固定した状態で入って何とかやり過ごしていた。
しかし、その球体は慌てて作ったためか、人が入るにはものすごく小さな球体だった。
二人の体は完全に密着し、顔もお互いの肩の上に置いている。
その状態でかれこれ二時間程の彼らは流され続けてた。
(ク、クロノスの当たっちゃいけないところが当たって……。声も耳元で聞こえてくるし、大きく揺れる度に耳元で色っぽい声が聞こえてくるし……。早く終われぇぇぇ~!)
(ア、アーリスの声が耳元で……。揺れる度に優しい声で大丈夫ってささやかれて……。アーリスの匂いがするのじゃ……。意識が……溶ける……。理性が……)
不意にクロノスがアーリスの耳をハムっと甘噛みする。
「ぇぇぇぇ!?ちょっと――」
(なんで急にそんなことするの!?ここからだとクロノスの表情が見えない……!何を考えているんだクロノスは!)
「――や、やめてよ。クロノス」
(はうっ!そんな情けない声を出されたら余計にいじめたくなるじゃろうが……!が、我慢出来ん……。だがアーリス、お、お前が悪いのじゃぞ……!)
その後、流され終わるまで、クロノスはずっとアーリスの耳をハムハムしていたのだった。
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しばらくしてアーリス達の入っていた球体の動きが止まった。
「む、止まったのう」
「はぁはぁ……そ、そうだね。もう出てもいいんじゃない?」
アーリスは涙目になりながらクロノスに提案する。
「そうじゃな、じゃあ続きはまた今度じゃ」
「もう勘弁してよ……」
クロノスは特権を解除する。球体から解放された二人は周りの様子を見る。
「だいぶ街から離れてしまったようじゃの」
「そうだね……。とりあえず街の様子を知りたいな。クロノス、特権で何とかできない?」
「造作もないぞ、Sランク特権を発動するのじゃ」
クロノスがそう言うと、アーリス達の立っている地面が高くなっていく。
「大地に関することならわしにおまかせじゃ!」
クロノスは胸を張りながら得意げに言う。
「頼りにしてるよ~」
しばらくすると街の様子が見えてくる。
「やっぱり建物とかは残ってないのう」
「……生き残った人、どれくらいいるんだろう」
「冒険者や力のあるもの達は何人か助かったかもしれんが、そうでないものは……ん?」
クロノスの目線が一点に釘付けになる。
アーリスも疑問に思い、その方向を見ると一人の男がふわふわと浮いていた。
距離があるので顔などは確認できなかったが、先程の津波と関係があることは容易に想像できた。
「あ、あれはまさか、イーオス様か?だがなぜこのようなことを……」
「イーオス?あの人、クロノスの知り合い?」
どんどん顔が青ざめていくクロノスをみてアーリスも動揺し始める。
「あれは人ではない。どちらかといえば神に近い存在じゃ。あの方は800年前、この地に降り立ち、魔獣どもに蹂躙されるしかなかった我ら人間に自分の力の一部を与えてくださったのじゃ」
「もしかしてそれって――」
「そうじゃ、わしらが使っている特権のことじゃ」
「……待って、なんでクロノスがそんなこと知ってるの?」
ふと疑問に思ったアーリスはクロノスに尋ねる。
「なぜって、当時わしも見ていたからじゃが」
「……クロノスって今何歳?」
「わしが作られた18年後にわしの新型が作られてわしは封印されたからのう……」
「待って、頭が混乱する……」
「まあ、精神年齢は18歳じゃ!」
「ふーん、実年齢は?」
「精神年齢は18歳じゃ!!」
クロノスは実年齢のことは頑なに話そうとはしなかった。
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街から遠く離れた場所でエルミスは木にもたれ掛かりながら、遠くを見つめていた。
(とりあえず、波に飲まれる寸前に、あの場にいたゼフスやフェンガーリ達は、私と同じように水の膜でおおってあの毒水には触れないようにはしたけど……)
「何もできなかったな……私……」
(きっと、街の人はほとんど死んじゃったよね……。私……騎士団なのに)
エルミスの目に涙が浮かぶ。
(……私、最低だな。街のみんなのことよりも、アーリスが生きてるかどうかの方が気になっちゃうよ。きっと、望みは薄いだろうな。それでも……)
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