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第二章 クロノス

24 信頼 アフロディーティ視点

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「まあ、何はともあれ、これでそこの愚か者を殺せる」

 僕はは剣を持ってゆっくりとフェンガーリに近ずいて行く。

「こ、殺す?冗談だよね?さすがにそれは……」

 アーリスは僕の言葉には困惑しながらそう言う。
 何をそんなに驚いている?
 コイツを野放しにしておけば、いずれ君に危害を加えるだろう。
 ならばここで殺しておいたほうがいい。

「いいや、本気だ。ソイツはアーリスを散々傷つけた挙句追放し、今度は君を奴隷にしようとしている。生かしておく価値などない」

「クロノス!フェンガーリを解放して、この部屋にあるポーション全部壊して!!」

 急にアーリスはそう叫ぶ。

「!! わ、わかったのじゃ。Sランク特権を発動するのじゃ」

 ???
 なぜこんなことをするんだアーリス。
 せっかく作ったのに……。もったいない。

「クロノス、フェンガーリを連れてできるだけ遠くへ逃げて」

「……なぜこんなやつを助けようとする?話を聞いた限り、コイツにそんな価値はないじゃろ?」

「生きる価値がないのは殺していい理由にはならないよ。それにフェンガーリさん、いい所もあるんだよ。この人を心の支えにして生きてる人もいっぱいいる。だから殺させる訳にはいかない」

「そういうもんかの、まあ、任せろ」

 クロノスはジタバタするフェンガーリを担いで店内から出ていく。
 はははっ!
 まさかアーリスが僕の邪魔をするとは思わなかった。
 だが無意味だ。僕はアイツを殺す。
 たとえ君に恨まれても構わない。
 僕は君が幸せになってくれればそれでいいのだ。
 ……願わくば、その隣に僕を置いてくれると嬉しいが。

「逃がすか!」

 僕も後に続こうとするがアーリスが立ち塞がる。
 無駄だ。君では僕を止められない。

「どいてくれアーリス!これは君の為なんだ!アイツを生かしておけば、また君を傷つけに来る!ここで殺しておくのが最適解だ!」

「ねぇアフロディーティ。君は俺を守り続けるって言ってくれたよね?」

 何を今更。当たり前じゃないか。

「……ああ、僕は君を守る。そのために――」

「じゃあ、こうすれば、君はフェンガーリの方へは行けなくなるよね」

 そう言うと、アーリスは自分のお腹に深々と剣を突き刺す。

 ……………………。
 頭が真っ白になる。
 何も考えられなくなる。
 一瞬が永遠に感じられる。

「ッ!何をしているんだアーリス!!!」

 我に返った僕は急いでアーリスに駆け寄る。
 それに構わず、アーリスは体から剣を引き抜く。
 血が吹き出て辺りを赤く染める。
 僕を赤く染める。
 アーリスはその場に倒れ込む。

「嘘……」
 エルミスの声だ。いつの間に戻ってきたのだろうか?
 いや、そんなことはどうでもいい。
 今僕はそれどころでは無いのだ。

「アーリス!アーリス!!……あああああああああああぁぁぁ!!」

 僕は体を真っ赤にしながら発狂している。

「ど、どういうこと……?ねぇ、アフロディーティ!説明してよ!なんで……なんで!?」

 どういうこと?
 こっちのセリフだよエルミス。
 肩を揺すられても怒鳴られても分からないものは分からない。

「僕の……せいなのか?」

 不意に僕の口が開く。
 僕の意思じゃない。ただ考えていることが溢れ出して、声に出てしまう。

「何が、僕の何が間違えていた?なぜアーリスはあんなことを?どうして……」

「早く、ポーションを!」

 なるほど。このために君はポーションを全て割って、銀髪の女を店から遠ざけたのか。
 こうすれば、僕がポーションを買ってこなければ君は死んでしまう。

 なあ、君はそこまでしてあのフェンガーリとか言う男を助けたかったのか?

『生きる価値がないのは殺していい理由にはならないよ』

 不意にアーリスの言葉が頭に過ぎる。
 
 そうだった。君は誰に対してもそういう男だった。

 学園時代、庶民の癖にと散々バカにしてきた僕のことも、君はさも当たり前な顔をして襲ってきた魔物から助けてくれたものな。

 ふと前を見るとあの銀髪の女がものすごい顔をしながらヘナヘナとその場に倒れ込んでいる。

 お前殺そうとしてたじゃないか、いつからそんな関係になった?

 続いてエルミスが戻ってくる。
 彼女の手には最高級のポーションが握られていた。
 アーリスが作ったものには劣るようだが。

 良かった。彼が助かる。
 そうもは思うと、僕は安心してしまったのか意識がなくなってしまった。

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