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第二章 クロノス

20 告白

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「なあ、アーリス。ワシはやりたいことができたのじゃ」

 不意にクロノスがアーリスに話しかけてくる。

「ッ!良かったね!それで、何をやりたいの?」

 アーリスは自分のことのように嬉しそうな顔をする。

「ワシは……アーリス、お主を守りたい、お主を笑顔にしたい、お主と話したい、……お主と、一緒に居たい」

 クロノスは頬を赤らめながらそう言う。

「……ありがとう。こんな俺を必要としてくれて。よろしくね、クロノス」

 そう言うと、アーリスはクロノスに手を差し伸べる。

「……ああ、よろしく頼む」

 涙を流しながら、クロノスはアーリスの手をとる。

 その時唸り声と共に、フェンガーリがむっくりと起き上がる。

「痛ってえな……。ッ!ダメだ君!その男はクズで、君は騙されて――」

「黙れ!」

 フェンガーリの言葉にクロノスが激怒する。

「クズはお前のほうじゃ!アーリスはホムンクルスのワシを人間と言ってくれた。ボロボロになりながらワシを救おうとしてくれた!今まで何十人と人間にあってきたが、こんな人間は初めてじゃった」

「そんなわけはねぇよ!コイツは毎晩、女を取っかえ引っ変えして抱きまくったり、俺達が集めたドロップアイテムを盗んだり、自分の失敗を人のせいにするクズだぞ!」

「だから、俺はそんなことしてません!」

 アーリスはフェンガーリの言葉を力強く否定する。

「そんなわけはねぇだろ!!お前の悪行を全部な!仲間だと思ってたのによ……。お前が、俺達を裏切ったんだろうが!」

 フェンガーリは怒りがで体を震わせながらそう怒鳴った。

「……仲間?俺と、フェンガーリさんが?バカ言わないでください。俺達の関係は出会った時から主人と奴隷だったでしょう」

「何を言ってやがる!俺は本気で――」

「あなたは仲間だと思っている人に――」

『遅いぞアーリス!もっと早く進めねーのか!』

『ちげーだろ!私のような生きる価値もないクズで馬鹿で無様で無用のゴミーリスが多大なる迷惑をかけてしまい申し訳ございませんでした、だろーがよ!』

『本当にだぜ全く……早く立てよ、アーリス、置いてくぞ』

 アーリスの頭の中にフェンガーリに言われた罵声が大音量で流れる。

「――あんな冷たい目をするんですか?あんな蔑むような笑みを見せるんですか?」

 深い悲しみと少しの怒りがアーリスの心を飲み込んでいく。

「だ、だからって、この子達を騙して、お前のそばに侍らせんのはいくらなんでも可哀想だろうが!復讐したいな俺を攻撃しろよ!」

「黙って聞いておれば、いい加減にしろよドブネズミ」

 クロノスが二人の会話に口を挟む。

「貴様が知ったような口を聞くな。アーリスの価値がわからんお前に、ここにいる資格はない!」

「待ってろよエルミス、アフロディーティ、そして銀髪の君!俺が君達をアーリスの呪縛から解放してやるよ!」

 クロノスの言葉には耳を傾けず、フェンガーリはアーリスに切りかかろうとする。
 その斬撃をクロノスがアーリスを庇うようにして受け止める。

「アーリス!金髪の少女を助けてやってくれ!かなり危険な状態じゃ!」

「え?……ッ!アフロディーティ!!」

 アーリスは倒れているアフロディーティに気づき、慌ててかけよる。

「……この部屋に充満している匂い、フェンガーリの特権による毒か、解毒剤のポーションは――」

 アーリスは辺りを見渡して、何とか棚に残っていた解毒作用のあるポーションを手にとり、それをアフロディーティにかける。

「アフロディーティ!アフロディーティ!!」

 アーリスは必死に名前を呼び続ける。
 
「……またビショビショだ。やっぱりアーリス、水で服が張り付いてるのが好きなんだろ?」

 アフロディーティの弱々しい声が聞こえてきて、アーリスの目に涙が浮かぶ。

 アフロディーティは首を動かし、フェンガーリとクロノスの戦闘を眺めている。

「地下で何があったか分からないが、彼女は……」

「うん、クロノスはもう俺達の仲間だよ」

「君を殺しに来た奴を仲間と呼ぶとは、今も昔も変わらず、アーリスはお人好しだな」

 アーリスの言葉にアフロディーティは苦笑する。

「アーリス、この毒は五分程度で全身に回るらしい」

「あらら、でも毒耐性のポーションはもう全部割れちゃってるね。……言われてみれば体がダルい。もう俺とクロノスが体を自由に動かせるのはあと一分もないかも」

 アーリスはそう言うと剣をかまえる。

「速攻で片付けよう」

「作戦は?」

 アフロディーティも剣をかまえてアーリスの横に立つ。

「数でゴリ押す」

「らしくないな、だが、策を考えている時間が惜しいか!」

 アフロディーティがそう言った後、二人はフェンガーリに向かって突撃する。

 アーリスとクロノスの体に毒が回るまで、残り24秒。 

 


 
 
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