追放された最強剣士〜役立たずと追放された雑用係は最強の美少女達と一緒に再スタートします。奴隷としてならパーティに戻してやる？お断りです〜

第二章 クロノス

18 乱入

『この世界に存在する意味があるやつなんていねぇよ』

『お前だって人間だろ！』

『お前には心がある！』

『お前は何がしたいんだ！どう生きたいんだ！』

　クロノスの頭の中でアーリス言われた言葉がぐるぐると回っている。

「はは、そういえば自分が何がしたいかなんて、考えたことがなかったのじゃ。どう生きたいか、か」

(人が少なくて自然が多い場所に、小さな小屋を建てて、可愛い動物と戯れながら、同じような毎日を過ごしたい。誰とも争うことなく、誰も傷つけず、誰も悲しませず、ただ当たり前に、普通の人と同じように、毎日を生きてみたい)

「ワシも、そんなふうに生きていけるのか？」

　クロノスはアーリスに問いかける。
　しかしアーリスに意識はない。
　体に無理やり動かし続けた反動でアーリスは気を失っていた。

「ワシも、お前たちのように、自由に生きて良いのか？」

　クロノスは目に涙を浮かべながらさらに問いかける。
　もちろん、返答はない。
　時期に少女はため息をつきながらつぶやく。

「……Sランク特権を、発動するのじゃ」

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　地下でアーリスとクロノスがグダグダな攻防を繰り広げている時、地上のみんなのポーション屋さんでは、アフロディーティとフェンガーリは激闘を繰り広げていた。

　Sランク同士の戦いというのもあって、常人の目では追えない程の速さで斬りあっている。

「アフロディーティ、君はアーリスなんかにはふさわしくねぇ。俺と一緒に来るべきだ」

　フェンガーリは優しい口調で諭すように言う。

「黙れ！アーリスの名前をお前が口にするな！」

　アフロディーティはそう叫ぶと、フェンガーリから距離をとり、鋭く睨みつける。

「Sランク特権を発動する」

　アフロディーティは静かにそういうと、辺りが何も見えなくなるくらい暗くなる。

「これがアフロディーティの特権か……」

　フェンガーリは少し驚いたようにそうつぶやく。

「地味な特権だが――」

　急に目の前に太陽のように明るい光が現れる。

「――お前を倒すには十分だ」

　フェンガーリはたまらず目を抑えその場にうずくまる。

「死ねっ！」

　フェンガーリに向かってアフロディーティは剣を振り下ろそうとする。

「なっ……！」

　しかし、急にアフロディーティは体全体の力が抜けてしまう。
　剣はその場に落ちてアフロディーティもその場に倒れ込む。

「は、ははは！はははははははは！」

　フェンガーリは大声で笑い始める。
　アフロディーティは悔しそうにフェンガーリを睨みつける。

「……何をっ！」

「俺は特権を予め発動しておいたんだよ。ちなみに俺の特権は、毒物の生成だ」

　フェンガーリは予め特権を発動して、みんなのポーション屋さんの店内に毒物を霧状にしたものをばら撒き続けていた。五分間程で体中に毒が回るように、尚且つ自分には効果がないように設定したのだ。

　毒を自分の都合どうりに設定できて、その気になれば世界中を毒の霧で包み込むことだってできるフェンガーリはSランクの中でも規格外な特権だった。
　
　光を自由に操るという、アフロディーティの特権もなかなか強い特権ではあったが、フェンガーリにはかなわなかった。

　フェンガーリは勝ち誇ったようにニヤリと笑い。アフロディーティに近づいてくる。

「本当はアーリスに使おうと思っていたが、アフロディーティ、君に使うことにしよう」

　そう言いながらフェンガーリは奴隷契約のための首輪をアフロディーティに近ずける。

「や、やめろ！そんなっ！」

「これも君のためなんだ、アーリスなんかのそばにいるより、俺のそばにいた方がいいに決まってる」

　アフロディーティは必死に抵抗しようとするが、体はピクリとも動かない。

(嫌だ！こんな奴の奴隷になりたくない！僕はアーリスを守らなければいけないんだ！やっと再会できたのに……こんなのって……！)
　
　アフロディーティの目からは涙がこぼれる。

「……アーリス」

　絞り出すように、アフロディーティはアーリスの名前を呼ぶ。

「あんな男の事、俺が忘れさせてやるよ」

　フェンガーリは構わず首輪をつけようとしたその時、地下からゴゴゴゴゴ、と何かが這い上がってくるような音が聞こえてくる。

「な、なんだ？！」

　フェンガーリが動揺して、首輪をつけようとする動きが止まる。

　バンッ！床に穴が空き、何かが飛び出てくる。

「な、何だお前！」

　地面から出てきた少女は銀髪でボロボロの服を着ていた。
　そしてその少女は抱き抱えていたアーリスを優しく床に下ろす。