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第二章 クロノス

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 ここはポーション専門店〈みんなのポーション屋さん〉。
 豊富な種類のポーションが棚に置かれており、店内は狭いがオシャレに装飾されていた。
 その店内の小さな机で、三人の少年少年が紅茶と高級そうなお菓子に舌鼓をうっていた。

「そっかー。てっきり二人までフェンガーリに惚れちゃって、俺から離れていくのかと思っちゃったよ」

 赤髪で童顔の少年、アーリスはお菓子を頬張りながら安心した顔をしている。

「そんなわけないでしょ。言ったじゃん。ずっとそばにいるって」

 エルミスは呆れたようにアーリスを見ながら、紅茶を上品に飲む。

(アーリスが入れてくれた紅茶だ~!
幸せ~!)

 そんな中、未だに気まずそうな少女が一人。

「ご、ごめんね。アフロディーティ、やっぱりなんか怒ってる?」

 アフロディーティが慌てて首を振る。

「いや!違うんだが……」

 アフロディーティがオロオロと目が泳がせる。

「アフロディーティはアーリスに嫌われてないか心配なんだよ。ねー」

 エルミスがニヤニヤ笑いながらアフロディーティの頬をつっつく。

「ッ~~!」

 アフロディーティは顔を真っ赤にしながら俯いていまう。

「俺がアフロディーティを嫌いになるなんてありえないよ!それより、君こそガッカリしたんじゃない?昔、最強の剣士になるって言ってた俺がこんなポーション屋さんを開いてて」

 アーリスはそう言って悲しそうに笑う。

「そんなことはない!アーリスがどんな道を選んでも、私はずっとついて行くと心に決めている」

 アフロディーティにそう言われたアーリスはホッとした顔をして紅茶を飲む。

 庶民のはずのアーリスだが、上品に紅茶を飲むアーリスは、まるでどこかの王族のようだった。
 エルミスとアフロディーティはアーリスのことを瞬きせずにジーっとその様子を見ていた。

(……アーリス、本当に庶民?なんか私の行ったことがある貴族のパーティにいる人達より、なんというか、地位の高い人って感じがするんだよな~)

(紅茶を飲んでいるだけでこれほどの破壊力……。僕は一生を添い遂げる人を別に見た目で選んだつもりはなかったのだが。フェンガーリも顔はなかなかだったが、彼を見た後だと、霞んでしまうな)

「どうしたの?なんか変だった?」

 アーリスはそんな二人の様子に不思議そうに首を傾げる。

「なあ、アーリス」

 アフロディーティはゆっくりとアーリスに近づき、体を密着させる。

「え、え?!」

 アーリスは目をぐるぐるさせながら動揺する。

「僕はエルミスと違って仕事などない。一日中君と一緒にいることが――ではなく、常に君を守り続けることができる。君に損はさせない。常に君の利益を考えて、そのサポートをしよう。だから僕を君のそばに置いてはくれないだろうか」

「アフロディーティ、あんた……!」

 エルミスもアーリスに体を密着させて、上目遣いにアーリス見つめる。

「ねぇ、確かに私は一日中アーリスと一緒にはいられない。でも、私には君を一生養えるだけの経済力と君を満足させられる程の家事能力がある!だから私を選んでくれない?君のしたいこと、やりたいことをなんでも手伝うし、その……させてあげるから!」

「べ、べ、別に、そんなに自己アピールしなくてもここに住みたいなら全然二人とも住んでいいよ!狭いけど部屋は二つあるから自由に使って!俺はここで寝るから」

 アーリスは見当違いなことを言いながら、いつもと違う雰囲気の二人をなだめる。

 二人は一瞬キョトンとして、しばらくして肩を震わせる。

「ど、どうしたの?」

 アーリス恐る恐る二人に質問する。

「「そういう意味じゃない!!!」」

 顔を真っ赤にしたしたりにアーリス怒鳴られる。

「ご、ごめん!じゃあ、どういういみだったの?」

「もういい。あ、ここには住まわせて貰うからよろしく頼む」

「私も」

 二人ともかなり機嫌が悪そうな顔をしている。

「よ、よろしくね」

 アーリス苦笑いをしながらそういう。

「さすがに俺もそこまで鈍くないよ……」

 誰にも聞こえない声で、ボソッとアーリスはつぶやく。

「なんだい?聞こえなかったんだが」

 アフロディーティの耳には少し届いてしまったようだ。

「……なんでもないよ!さあ、二人の部屋を案内するよ」

 そう言って、アーリスは二人を部屋に案内した。


 
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