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第二章 クロノス

13 誤解

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(コイツがエルミスか、噂で聞く以上の美少女だ。アフロディーティはって感じだったが、エルミスはって感じだ!コイツも俺のものに……!)

 フェンガーリが舌なめずりをした後エルミスに話しかける。

「俺の名前はフェンガーリだ!この街で冒険者をしている」

「こ、こんにちは。私はエルミスだよ。よろしく」

 エルミスは苦笑いをしながら挨拶をする。

「ここであったのも何かの縁だ。良かったら一緒にお茶でもどうだ?」

 フェンガーリが爽やかな笑顔でエルミスをお茶に誘う。

「ちょっと!これ以上女の子をたぶらかすのはやめてください!」

「そうよ!この子まで入ったらいよいよ勝ち目が無くなるわ!」

 フェンガーリパーティの少女達はフェンガーリを睨みつける。

「ははは……。せっかくだけど、これから予定があるから。ごめんね」

 エルミスはフェンガーリの誘いを苦笑しながら断る。

(なるほどな。この俺の周りにいる美少女達を見て自信を失っちまったのか)

 フェンガーリはエルミスの肩に腕をまわす。

「そんな恥ずかしがることねぇって!エルミスは綺麗なんだから」

「ちょ、ちょっと!やめてよ」

 エルミスは本当に嫌そうにな顔をする。

(照れちゃって。可愛いじゃねぇか)

 フェンがーリはエルミスが嫌がっているのに気づかず、顔を近ずける。

「おい。本当に嫌がっているじゃないか。やめろフェンガーリ」

 見かねたアフロディーティがエルミスからフェンガーリを引き離そうとする。

(お!アフロディーティ、俺が他の女口説いているから嫉妬してるのか?クソッ!こうなったら二人同時に愛するしか……!)

 フェンガーリが見当違いな想像をしていた時、不意に みんなのポーション屋さん の店の扉が開く。

「ふぅ~。少し休憩!」

 店の中から顔を出したのは、赤髪で童顔の少年、アーリスだった。
 開店準備が一段落した彼は、息抜きをしようと外に出たのだが、目の前に広がっていている光景に絶句する。

 アーリスの目に映ったのは、自分を追放したフェンガーリと同じ学園時代を過ごした親友、エルミス、アフロディーティがイチャイチャしているという地獄のような光景だった。

「……お邪魔しました」

 アーリスはスゥーと店の中に戻りパタンと店の扉を閉めた。

 エルミスとアフロディーティの顔がみるみるうちに青くなっていく。

「ね、ねえ!ちょっと待ってアーリス!誤解だよ!」

 フェンガーリを払い除け、エルミスは急いで店の扉を開けて中に入っていく。

「わわわ!入ってこないでよ!まだ気持ちを整理が出来てないから!」

「だから!違うんだってー!」

 アーリスの誤解をとこうと必死になっているエルミスとは対照的に、アフロディーティはがくりと膝から崩れ落ちる。

「しまった。やってしまった……!久しぶりの再会がこれとは……。第一印象最悪だ。アーリスに嫌われたら……僕は……」

 アフロディーティはこの世の終わりのような顔をして、ブツブツとつぶやく。

「お、おい。どうしちまったんだよ2人とも……」

 その様子をわけが分からない、という風にフェンガーリが動揺する。

 それとは別に、先日アーリスを連れ戻すのを任された二人の少女はニヤリと笑う。

「そんなことより!今の、アーリスだったわよね」

「ええ、間違えありません。あの忌々しい顔……忘れもしません!」

 その言葉にアフロディーティの方がピクリと震えるが誰も気が付かない。

 フェンガーリパーティの少女達は店のドアを蹴り開けて中に入っていく。

「ゴミーリス!迎えに来たわよ!」

「私たちの奴隷としてパーティに戻ってください!」

 アーリスは、エルミスに 信じてよ~!と、肩を揺さぶられながら、フェンガーリパーティの少女達がすごい勢いで入ってくるのを確認しながら、さっき目の前に広がった光景を思い出しながら――

「うああああああああ!俺は何も誤解してないし、奴隷にもならない!それに店はまだオープンしてないよ!みんなの出てけー!」

 アーリスは目をぐるぐると回しながら近くにあった筋力増強ポーションをごくごくの飲む。

「アーリスが壊れちゃった……」

 ぽけーっとしているエルミスをアーリスがヒョイっと持ち上げる。

「わっ!ちょっと!下ろしてよ!」

 アーリスはそのまま目にも止まらぬ速さでフェンガーリパーティの少女達に急接近する。

「なっ!」

「いつの間に!」

 そのまま少女二人をフェンガーリに当たるように店から勢いよく押し出す。

「お、お前ら!ぐはぁ!」

 フェンガーリは白目を向いて倒れる。
 エルミスだけは受身をとって、特にダメージはないが、他の二人はフェンガーリの体の上で、 いたたたた とお尻をさすっている。

 エルミスはふと横を見ると、道の端っこで体育座りをしているアフロディーティがいる。

「嫌われただろうか……。嫌われたらだろうな……。もういっそ変身魔法で別人になりすますか。だがそれでは……」

 エルミスは ふぅ とため息をついてアフロディーティ。起き上がらせる。

「はは……。ここ数時間のアーリスの記憶を消せばまだ何とか間に合う」

 アフロディーティは心ここに在らずという感じで何かをボソボソと呟いている。

 エルミスはそのまま店の扉をノックする。

「ねえアーリス、開けてくれない?」





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