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第二章 クロノス

12 恋敵

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「疲れたー!」

 赤い髪をした童顔の少年、アーリスはうーん、と伸びをする。
 フェンガーリパーティの少女との騒動からは四日が経ち、アーリスは自分のポーション屋さんの開店準備をしていた。
 資金はエルミスからは借りずに、色々なところから借金をして何とか集めた。
 こじんまりとした店だが、場所はいい所にあり、なかなかいい雰囲気の外装だ。

「もうひと頑張りかな」

 アーリスは気合いを入れ直すと再び作業に戻るのだった。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 四日前のこと。
 エルミスを尾行していたゼフスは途中でエルミスの姿を見失っていた。

「どこ言っちゃったっすか。エルミス様……」

 しばらく街中を探していると、少し遠くで人だかりができていた。

「なんっすかね?」

 ゼフス気になってその人だかりの方へ向かう。
 人をかき分けて行くと、そこにはゼフスとっては信じられない光景が広がっていた。
 エルミスがアーリスのことを優しく抱きしめていたのだ。
 エルミスの顔はとても穏やかに笑っていて、その表情はとても幸せそうだった。

「なっ!」

 ゼフスは一瞬目眩がしたが何とか体制を立て直す。

(アイツ!ぶっ殺してやるっす!)

 ゼフスは剣を抜きかけるがすぐに冷静になる。

(こんな所で斬りかかったら、騎士団にいられなくなるっす……)

 ゼフスはアーリスを殺意を込めた目で睨み詰める

「覚えてるっすよ……。庶民風情が」

 ゼフスはゆっくりとその場を立ち去る。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 フェンガーリ一行は日々のストレスを発散するため、街で買い物を楽しんでいた。

 4日前アーリスを連れ戻しに行った少女は部屋で塞ぎ込んでしまっているため、ここにはいない。

 アーリスを追放してからしばらく経つが結局アーリスを超える雑用係は見つからず、今まで当たり前にできていたことが何も出来なくなってしまっていた。
 今のダンジョン攻略は新しく入ったアフロディーティにほとんど依存している状態だ。

「ここの街のことはあまり知らないんだが、おすすめの店はあるかな?」

 アフロディーティはフェンガーリに訪ねる。

「そ、そうだな……」

 普段あまり買い物をしないフェンガーリが悩んでいると……。

「ここ、何か出来るみたいだよ」

 ギーがひとつのお店を指さす。
 こじんまりとした店だが外装はなかなかいい感じの店だ。店の前の看板には〈みんなのポーション屋さん〉
と、書いてある。

「ポーション専門店か、今どき珍しいな」

「そうなのか?」

 フェンガーリの言葉によく分からない、と言う用にアフロディーティが質問する。

「ああ、今どきはポーションなんて他の消耗品と一緒の店で売られていることがほとんどだからな」

「そういうものなのか」

 アフロディーティは納得したように頷く。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 鼻歌を歌いながら、青髪ロングの少女、エルミスはアーリスが経営しようとしているポーション屋、みんなのポーション屋さんに向かっていた。

(四日ぶりにアーリス会える♪騎士団の仕事が結構立て続けにあって、なかなか会う時間がなかったけど、久しぶりの休暇だー!)

 エルミスは最高級の差し入れ用お菓子を片手に軽い足取りで歩いて行くのだった。

 店の前に着くと、沢山の女の子達と一人のイケメンの男性のパーティが店の前でワチャワチャと話していた。

(まあ、なかなかいい顔をしてるけど……アーリス程じゃないかな。ん?)

 そんな失礼なことを思っているエルミスだったが、そのパーティの中に自分の知っている顔があることに気づく。

「アフロディーティだ!」

 エルミスはその知っている人の名前を呼ぶ。
 
「……エルミスか!」

 その声に金髪のショートヘアの少女が反応する。

「へぇ、騎士団のエルミスと知り合いだったのか」

 フェンガーリは以外そうにアフロディーティの方を見る。

「同じ学園に通っていたんだ。な?」

「うん!久しぶりー」

 エルミスがアフロディーティに抱きつく。アフロディーティも困ったような顔をしているが、特に抵抗もせずされるがままにされる。

 不意に、エルミスがアフロディーティに耳打ちをする。

「ライバルがいなくなってよかったよ。そっちはそっちでお幸せに」

 アフロディーティも負けじと言い返す。

「フェンガーリとはそういう関係じゃない。アーリスは僕がいただく」

「なーんだ。残念」

 エルミスははアフロディティの体から離れる。
 二人とも顔は笑っているが心の中は穏やかではなかった。





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