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ゆく末への抗い
128.
しおりを挟む寝たふりで迎えるつもりが。
あまりの騒ぎに、冬乃は何度も起き上がって外を覗いていた。
その初めの頃、土方と沖田の声は冬乃の元にも届いて。
それからかなり長い間静かになった後、再び喧噪が響いてきた。
無事に勝利して帰ってきたのだと、もう外を覗かなくても情景が浮かぶほど、高揚した隊士達の声がそこかしこに。
(お疲れさまでした、総司さん、皆さん・・)
冬乃はほっと胸を撫でおろした。
大きな捕りものの後で沖田もさぞ疲れているに違いない。しっかり休んでもらうために、冬乃は今夜甘えることは断念した。
そろそろ沖田は風呂を出た頃だろうか。
五徳の上で温めておいた茶と、
今夜は急きょだったので茂吉に断りもなく厨房から持ってきてしまった余りものの漬物を、それぞれ盆に用意する。
ゆらゆらかがよう灯のもと、冬乃は布団に座って沖田を待った。
風呂から出た沖田はまっすぐ冬乃の部屋へ向かっていた。
闇の内にそこだけ浮かび上がらせ、部屋の障子を灯の影が揺らしている。起きて待っていてくれているのだ。
進む足は急ぐ。
己がまるで、薄ら灯へと引き寄せられる蛾のように、
冬乃という抗し難き蜜へと、吸い寄せられる蜂のように。
常の、
斬り合いの後の、身の芯を燻る昂ぶりは、
蜜を目前にし、沸騰するかの熱を帯びはじめ。
(・・冬乃)
抑える必要も無い。
彼女は受け止めてくれる。いつも。
「総司さん、おかえりなさい」
障子を開けた瞬間、沖田の眼に飛び込んできた大輪の笑顔は、
沖田の熱情の堰を切らすに、充分だった。
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