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第六夜
40. また明日
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夏休み最後の日、そして最後の典曜日が来た。
その日の午後、純喫茶ナウシャインは貸し切りだった。
秘密メンバーの五人とヨハンセン、ヨハンセンの父親、ポニーテールの女性、それにミフネが集まって、ファーブルの前途を祝した大壮行会がとり行われた。
ファーブルのあいさつから始まり、乾杯の音頭をヨハンセンがとって宴会となった。ミフネもヨハンセンも歌が上手く、仲良くデュエットしてカラオケを披露した。ごちそうはポニーテールの女性が腕を振るって用意した。ミフネはオススメの本を全員にプレゼントした。ヨハンセンはメンバーからのリクエストで、映画のワンシーンのセリフを再現して大いに場を盛り上げた。
壮行会も終わりに近づくと、メンバーからのサプライズで、ファーブルとキキにオリジナルバッジが贈られた。これは、秘密組織の中で活躍した人に贈られる栄誉あるバッジだ。
それから一言ずつ、ファーブルに向かって言葉を贈り、皆んなして泣いた。
そして、とうとうファーブルの壮行会が終わった。
「諦めて家に帰ったテイだな」
閣下が、タコ公園で辺りを注意深く見回してから言った。
「へんなの。今日の真夜中に夢の中に集合なんてさ」
アンテナが不思議そうに言った。
「ほんとにほんとだよ」
とパルコも心から言った。
一同、それがおかしくて爆笑した。
「キヒヒヒヒ」
キキが声出して笑ってる。
「言った張本人じゃん!」
ファーブルが突っ込む。
「お前が言うなよ!」
閣下も突っ込む。
「爆死するわ」
アンテナのそのセリフで、また皆んな笑う。
僕たちは、何が起こってもきっと大丈夫だ。無敵な気がしてパルコはそんな気になった。
ファーブルが言った。
「皆んな、本当にありがとう。『ブルーブラックの明かり』で良かった。こんな楽しい一学期は生まれて初めてだった! あの日の夜、塾をサボってタコ公園でブラブラしてて、ほんとに良かったって思ってる!」
それを聞いてみんな爆笑した。
「サボってたんかーい!」
アンテナが突っ込んでまた笑いを誘う。
「パルコ、これ使ってくれ」
「え?」
それは銀貨だった。父親から送られてきた銀貨と同じく古く、アレクサンドロス大王の彫刻が彫られていた。
「ほんとは『不必要の部屋』で、それを使うつもりだったんだ。自分が貯めたお小遣いでコインショップで買っておいたんだ。転校したくなかったから。でも、もう必要ないんだ。オレ、もう一度、パパについて行くって決めたんだ」
「……いいの?」
「うん」
「受け取っておく。ありがとう」
パルコもファーブルも笑みを交わした。家族と暮らせるなら、それが一番だとパルコは思った。閣下が言った。
「おい、いいか? 明日にはすべての結果が出てるんだ。たとえ、どんな結末になろうとも、オレらは『ブルーブラックの明かり』の一員で、どこにいようとも親友なんだ。それを忘れるなよ」
皆んな、閣下の言葉を噛み締めている。続けて彼が言う。
「ファーブルもアークだって、必ずまた会うことを、今この場で約束しよう!」
閣下は頼りがいがあった。こういうことを言ってのける兄貴のような存在だ。この優しさに、強さに、今までパルコがどれほど救われたことか。
「賛成! よっ大将! さすが!」
そう言って、いつも盛り立てるアンテナだって、いつでもパルコの味方だった。
キキが左手も右手も親指を上に向けてダブル「イイね」している。彼女は、影でいつもパルコを支えていた。そして、皆んなでファーブルの背中を見送った。
明日には、彼も特急列車に乗って遠いところに行ってしまう。しばらく会えないのかと思うと、パルコは泣き出したい思いにかられた。ファーブルが視界から去っていった。
そして、皆んなとも手を振って別れた。
「また明日」
その日の午後、純喫茶ナウシャインは貸し切りだった。
秘密メンバーの五人とヨハンセン、ヨハンセンの父親、ポニーテールの女性、それにミフネが集まって、ファーブルの前途を祝した大壮行会がとり行われた。
ファーブルのあいさつから始まり、乾杯の音頭をヨハンセンがとって宴会となった。ミフネもヨハンセンも歌が上手く、仲良くデュエットしてカラオケを披露した。ごちそうはポニーテールの女性が腕を振るって用意した。ミフネはオススメの本を全員にプレゼントした。ヨハンセンはメンバーからのリクエストで、映画のワンシーンのセリフを再現して大いに場を盛り上げた。
壮行会も終わりに近づくと、メンバーからのサプライズで、ファーブルとキキにオリジナルバッジが贈られた。これは、秘密組織の中で活躍した人に贈られる栄誉あるバッジだ。
それから一言ずつ、ファーブルに向かって言葉を贈り、皆んなして泣いた。
そして、とうとうファーブルの壮行会が終わった。
「諦めて家に帰ったテイだな」
閣下が、タコ公園で辺りを注意深く見回してから言った。
「へんなの。今日の真夜中に夢の中に集合なんてさ」
アンテナが不思議そうに言った。
「ほんとにほんとだよ」
とパルコも心から言った。
一同、それがおかしくて爆笑した。
「キヒヒヒヒ」
キキが声出して笑ってる。
「言った張本人じゃん!」
ファーブルが突っ込む。
「お前が言うなよ!」
閣下も突っ込む。
「爆死するわ」
アンテナのそのセリフで、また皆んな笑う。
僕たちは、何が起こってもきっと大丈夫だ。無敵な気がしてパルコはそんな気になった。
ファーブルが言った。
「皆んな、本当にありがとう。『ブルーブラックの明かり』で良かった。こんな楽しい一学期は生まれて初めてだった! あの日の夜、塾をサボってタコ公園でブラブラしてて、ほんとに良かったって思ってる!」
それを聞いてみんな爆笑した。
「サボってたんかーい!」
アンテナが突っ込んでまた笑いを誘う。
「パルコ、これ使ってくれ」
「え?」
それは銀貨だった。父親から送られてきた銀貨と同じく古く、アレクサンドロス大王の彫刻が彫られていた。
「ほんとは『不必要の部屋』で、それを使うつもりだったんだ。自分が貯めたお小遣いでコインショップで買っておいたんだ。転校したくなかったから。でも、もう必要ないんだ。オレ、もう一度、パパについて行くって決めたんだ」
「……いいの?」
「うん」
「受け取っておく。ありがとう」
パルコもファーブルも笑みを交わした。家族と暮らせるなら、それが一番だとパルコは思った。閣下が言った。
「おい、いいか? 明日にはすべての結果が出てるんだ。たとえ、どんな結末になろうとも、オレらは『ブルーブラックの明かり』の一員で、どこにいようとも親友なんだ。それを忘れるなよ」
皆んな、閣下の言葉を噛み締めている。続けて彼が言う。
「ファーブルもアークだって、必ずまた会うことを、今この場で約束しよう!」
閣下は頼りがいがあった。こういうことを言ってのける兄貴のような存在だ。この優しさに、強さに、今までパルコがどれほど救われたことか。
「賛成! よっ大将! さすが!」
そう言って、いつも盛り立てるアンテナだって、いつでもパルコの味方だった。
キキが左手も右手も親指を上に向けてダブル「イイね」している。彼女は、影でいつもパルコを支えていた。そして、皆んなでファーブルの背中を見送った。
明日には、彼も特急列車に乗って遠いところに行ってしまう。しばらく会えないのかと思うと、パルコは泣き出したい思いにかられた。ファーブルが視界から去っていった。
そして、皆んなとも手を振って別れた。
「また明日」
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