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わたしがSNSを使って爆弾魔をあそこへと誘導する、そういう可能性を一番最初に考えたけれど、すぐに難しいことに気づいた。
あまりにも確実性がない。目的の場所で爆発を起こさせるなんて不可能に近いことだと思う。
でも、この発想自体は悪くはないと思う。
どうにか別の方法で活用できないかな、とわたしは考えた。
まずは情報収集。加々美さんの情報がもっとほしい。かつての世界で見た爆弾魔の情報は、表面的なものでしかない。
とはいえ、そのためにはビルでの爆発が起きなければならない。わたしの介入によって、佐伯さんはSNSに画像はあげなかった。ということは、犯人がそこにたどり着くこともないということでもある。
廃ビルで爆発が起こらなければら、加々美さんが逮捕されることも、たぶんない。
もちろん、あそこで何も起こらなくても、警察はすでに犯人まで近づいていた可能性もある。少し待てば爆発がなくても逮捕されるのかもしれない。
でも、わたしには少し待つような余裕すらない。
あれこれ考えた結果、わたしはひとつの結論に達した。
自分で犯人を誘い、廃ビルで爆発を起こさせようと。
わたしが佐伯さんの変わりに画像を上げれば、きっと同じことが起こる。
SNSなんてやってなかったから一からアカウントを作り、あの場所の画像を上げた。正確なところがわかるようなコメントなんかも入れて。
匿名でやっているらしく、加々美さんのアカウントはわからなかった。相手が勝手にこちら側に気づいてくれるのを待つしかなかった。
本当にこれで爆弾魔を誘導できるのか不安ではあったけれど、賭けるしかない。
そして当日、爆発は起きた。前と同じように土曜のお昼のことだった。
「やった」
それを知ったとき、わたしはついガッツポーズをしてしまった。不謹慎ではあったけれど、ホッとする部分が大きかった。
あえて現場には近づかなかった。わたしは携帯に流れてきた速報で爆発が起こったことを確認した。
わたしは爆発事件が起きた翌日、事件についてのニュースなどを手当たり次第にチェックした。
そのなかで気づいたこと。
「結構近くに住んでるんだ」
ネットでは犯人の個人情報ーー名前や住所、電話番号などがすぐに特定、拡散されていて、それによると加々美さんは、わたしの自宅からも徒歩で行けるような距離にあるアパートに住んでいるらしい。
「この街に住んでいることは知ってたけど、こんな近いところにいたなんて」
そういえば最初に逮捕されたとき、お母さんが近所に犯人が住んでいたって言ってたっけ。すぐに死んでしまったから、わたしは名前をぼんやりと覚えるくらいしかしなかったけど。
わたしはとりあえずその場所まで行ってみた。
当然のようにマスコミはすでに集結していた。カメラやマイクを持った人がごった返していて、アパートには簡単には近づけない状態だった。
通行人やアパートの住人が次々とインタビューを受けていたので、わたしはむしろ、なるべく近づかないようにしていたのだけれど。
アパートは二階建てで、比較的新しい建物には見えた。ただ周囲には監視カメラなどはなく、誰でも簡単に出入りできそうだった。
わたしは二階の端の部屋を見上げた。あそこが犯人の部屋であることはわかっている。爆弾もあそこにあるのかな?さすがにそれはないかな。きっと他のどこかに保管してるんだとは思うけど。
ここまで来ても、わたしは何かしらのヒントを得ることはできていなかった。
今回の人生はすでに諦めていて、次に繋がる何かを手に入れられれば良かったのだけれど、良いアイデアというものがまったく思い浮かばない。
「やっぱり、爆弾を使うという発想自体が間違いだったのかな」
方向性を変えないといけないのかもしれない。爆弾には見切りをつけて、他のやり方で救う方法を考えなきゃ。
そのとき、マスコミの集団を掻き分けるようにして若い男性がアパートの敷地内に入り、外階段を上っていった。
向かったのは犯人の部屋。そのドアの前で立ち止まると、携帯で自撮りをしながらなにかをしゃべっている。
遠すぎて何を話してるのかはわからないけど、おそらくあの人はここの住人でもなく、犯人の家族というわけでもない。
きっと動画の配信者。犯人の自宅を訪問する様子を生中継しているようだった。かなり高揚していて、離れているこちらにもかすかな声が伝わってくる。
その男性はドアを突然叩き始めた。中に誰もいないことなんてわかっているのに。加々美さんが一人暮らしだという情報も出ている。
何度かそうすると、今度はノブを回し始める。
ドアが突然開いたとき、記者の人たちからは「あ」という声が一斉に漏れた。
故意かどうかはわからないけど、その男性はノブを強く回して壊したみたいだった。
配信者らしき男性が部屋の中に入ると、マスコミの人たちは一斉に携帯をチェックしはじめた。
どうやらリアルタイムで配信される動画をチェックしようとしているらしい。
わたしはその光景を見て、ぞっとした。明らかな違法行為なのに、マスコミの誰も警察に通報しようとはしなかった。容疑者の部屋のなかに爆弾があるのか、それだけに興味をそそられている。
わたしは逃げるようにその場を立ち去った。
あまりにも確実性がない。目的の場所で爆発を起こさせるなんて不可能に近いことだと思う。
でも、この発想自体は悪くはないと思う。
どうにか別の方法で活用できないかな、とわたしは考えた。
まずは情報収集。加々美さんの情報がもっとほしい。かつての世界で見た爆弾魔の情報は、表面的なものでしかない。
とはいえ、そのためにはビルでの爆発が起きなければならない。わたしの介入によって、佐伯さんはSNSに画像はあげなかった。ということは、犯人がそこにたどり着くこともないということでもある。
廃ビルで爆発が起こらなければら、加々美さんが逮捕されることも、たぶんない。
もちろん、あそこで何も起こらなくても、警察はすでに犯人まで近づいていた可能性もある。少し待てば爆発がなくても逮捕されるのかもしれない。
でも、わたしには少し待つような余裕すらない。
あれこれ考えた結果、わたしはひとつの結論に達した。
自分で犯人を誘い、廃ビルで爆発を起こさせようと。
わたしが佐伯さんの変わりに画像を上げれば、きっと同じことが起こる。
SNSなんてやってなかったから一からアカウントを作り、あの場所の画像を上げた。正確なところがわかるようなコメントなんかも入れて。
匿名でやっているらしく、加々美さんのアカウントはわからなかった。相手が勝手にこちら側に気づいてくれるのを待つしかなかった。
本当にこれで爆弾魔を誘導できるのか不安ではあったけれど、賭けるしかない。
そして当日、爆発は起きた。前と同じように土曜のお昼のことだった。
「やった」
それを知ったとき、わたしはついガッツポーズをしてしまった。不謹慎ではあったけれど、ホッとする部分が大きかった。
あえて現場には近づかなかった。わたしは携帯に流れてきた速報で爆発が起こったことを確認した。
わたしは爆発事件が起きた翌日、事件についてのニュースなどを手当たり次第にチェックした。
そのなかで気づいたこと。
「結構近くに住んでるんだ」
ネットでは犯人の個人情報ーー名前や住所、電話番号などがすぐに特定、拡散されていて、それによると加々美さんは、わたしの自宅からも徒歩で行けるような距離にあるアパートに住んでいるらしい。
「この街に住んでいることは知ってたけど、こんな近いところにいたなんて」
そういえば最初に逮捕されたとき、お母さんが近所に犯人が住んでいたって言ってたっけ。すぐに死んでしまったから、わたしは名前をぼんやりと覚えるくらいしかしなかったけど。
わたしはとりあえずその場所まで行ってみた。
当然のようにマスコミはすでに集結していた。カメラやマイクを持った人がごった返していて、アパートには簡単には近づけない状態だった。
通行人やアパートの住人が次々とインタビューを受けていたので、わたしはむしろ、なるべく近づかないようにしていたのだけれど。
アパートは二階建てで、比較的新しい建物には見えた。ただ周囲には監視カメラなどはなく、誰でも簡単に出入りできそうだった。
わたしは二階の端の部屋を見上げた。あそこが犯人の部屋であることはわかっている。爆弾もあそこにあるのかな?さすがにそれはないかな。きっと他のどこかに保管してるんだとは思うけど。
ここまで来ても、わたしは何かしらのヒントを得ることはできていなかった。
今回の人生はすでに諦めていて、次に繋がる何かを手に入れられれば良かったのだけれど、良いアイデアというものがまったく思い浮かばない。
「やっぱり、爆弾を使うという発想自体が間違いだったのかな」
方向性を変えないといけないのかもしれない。爆弾には見切りをつけて、他のやり方で救う方法を考えなきゃ。
そのとき、マスコミの集団を掻き分けるようにして若い男性がアパートの敷地内に入り、外階段を上っていった。
向かったのは犯人の部屋。そのドアの前で立ち止まると、携帯で自撮りをしながらなにかをしゃべっている。
遠すぎて何を話してるのかはわからないけど、おそらくあの人はここの住人でもなく、犯人の家族というわけでもない。
きっと動画の配信者。犯人の自宅を訪問する様子を生中継しているようだった。かなり高揚していて、離れているこちらにもかすかな声が伝わってくる。
その男性はドアを突然叩き始めた。中に誰もいないことなんてわかっているのに。加々美さんが一人暮らしだという情報も出ている。
何度かそうすると、今度はノブを回し始める。
ドアが突然開いたとき、記者の人たちからは「あ」という声が一斉に漏れた。
故意かどうかはわからないけど、その男性はノブを強く回して壊したみたいだった。
配信者らしき男性が部屋の中に入ると、マスコミの人たちは一斉に携帯をチェックしはじめた。
どうやらリアルタイムで配信される動画をチェックしようとしているらしい。
わたしはその光景を見て、ぞっとした。明らかな違法行為なのに、マスコミの誰も警察に通報しようとはしなかった。容疑者の部屋のなかに爆弾があるのか、それだけに興味をそそられている。
わたしは逃げるようにその場を立ち去った。
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