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つよけん

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第一部ルート6「終焉」~それぞれの道~

終焉6

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私達は無事に仲間達と合流する事が出来た。
アリルが無事だった事も驚いたが、ハクシまで生還している事に開いた口が塞がらない。
ハクシはアリルに運んでもらい、丁度いい高さの瓦礫を背に痛々しい体を立て掛けてもらっている。
私はハクシに言葉をかけた。

「無事でよかった…。」
「アリルが機転をきかせて助けに来てくれなければ、確実に死んでいただろう。それに…。」
「それに?」

ハクシの意味深な言葉に被せて問う。

「実は爆発が最大の威力ならばこの養殖場は全壊していて、ここにいる全員が助かっていなかったであろう…。」

その言葉をきいて血の気が引いた。

「それだったら、どうやって爆発の威力を抑えられたの?」
「俺がやった訳じゃない。俺はただクイナの自我をウイルスから解放してやっただけだ…。あいつは裏でウイルスに抗って完全に支配される事なく、爆発のエネルギーの規模を最小限に抑えつけてくていたらしい…。もっと俺が早く気付いていれば助かったかもしれないが…。」

ハクシは悔しそうな顔で、ぐっと歯を噛み合わせる。
私はクイナの事が嫌いだった。
でもそれはクイナ本人の自我ではなくて、ウイルスがそうさせていたのだと知るとなんだか複雑な気持ちになる。
私は落ち込むハクシに声をかけようとした時だった。

突然、建物全体に揺れが生じる。

「爆発の威力を抑えられたからって、建物が無事という保証はないな…。崩壊が始まる前に、早く脱出をした方が良さそうだ。」

ハクシが率先して脱出を促した。
しかし私は一時的に制止をかける。

「まって…。」
「どうした?」

ハクシが反応を返す。

「私達はここから簡単に逃げることが可能だけど、ケージの中に入れられた故人も逃がしてあげられないかな?」
「この人数を逃すとなると、結構な時間がかかってしまうぞ…。」

私の無謀な考えに否定的なハクシだったが、それに賛成を示す者達がいた。

「隊長!これはチャンスなのでは?」

アリルの仲間の一人が口を挟む。

「これだけの故人を連れて帰る事ができれば、私達の株も上がるのではないでしょうか?」
「そうね…。私はこの子達の命を無駄にしたく無いし、捨てる命なら私達が貰っても問題ないでしょ?」
「僕も逃してあげる事に賛成していいかな?早く脱出しないといけないのはわかっているんだけど、自分の同種族が何もせずに死んでいくのを見たくはない…。」

全員の意見を聞き、渋々な反応を見せるハクシだったが。

「わかった。みんなの意見を尊重しよう。いつ崩壊するかわからない状況だから、迅速に行動をおこなってくれ。まずはケージのロックを全て解除させる。アリル、あっちの部屋まで連れて行ってくれないか?」
「何で私なのよ!」

アリルは文句を言いつつもハクシを抱き上げた。
なんだかんだ言って、良いペアなのかもしれない。

すぐにケージのロックが解除されて、次々と故人を解放をしていった。

地鳴りが定期的に波打つ。
本当にいつ建物が壊れるかわからない。
私達は必死に故人達を誘導させた。

「この子で最後ね…。」

どれだけの時間がたっただろうか…。
でもこの子達を誘導させれば、全ては完了する。
私はホッと一息ついた時だった。
また突然の地鳴りが生じる。
安堵で足元に力が入らずふらついていると、天井が崩落を始め頭上目掛けて落下してきた。

「え?」
「シエル!!!」

アサトが猛スピードで私を庇い、轟音と共に下敷きになったてしまう…。
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