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第一部ルート3「アリル」
天人4
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私達は秘密基地にもどり、お気に入りの場所まで天人を運び入れた。
アサトは何処かに出かけたのか辺りに見当たらなかった。
今はアサトの事はどうでもいい。
怪我をしている天人の応急処置をしよう。
「ポルテ、ありったけの水と薬草を取ってきて。」
「な、なんで僕が!」
「ツベコベ言わない!」
「はっ、はいぃーーー。」
私が真剣じゃなければ笑えるぐらいのポルテの裏声と焦った顔で、逃げるようにして外へ出ていった。
「息は荒めで熱が少しあるかな…ともかくまずは止血をしないと。」
天人の血で染まった衣類をペタペタ音を立てながら、慎重に脱がせていった。
出血している部分を確認すると、やはり思った通り翼がもがれている跡がある。
そこからの出血が一番酷かった。
相当激しい戦いがあの場で繰り広げられていたのだろうかと想像するだけでとても恐ろしい。
部屋の隅に置いてあった、ありったけのカーテンを包帯代わりに出血の多いところのそばを器用にキツく巻きつけた。
タイミングよくポルテが水とそこらへんでよく取れる薬草を持って帰ってくる。
「これで、いいんだろ!」
私は投げやりにこっちに渡してきた事に腹を立てて
「足りないからもっと取ってきて!」
少し大きい声でポルテを怒鳴ると一目散に外にさっきと同じ様な顔で飛び出していった。
すぐによくなるわけでもないが、天人はとても辛そうだ。
「絶対助けてあげるから…」
熱を少しでも下げる為に、布に水を含ませておデコに乗せる。
取ってきてもらった薬草をもみくちゃにして、水を少し含ませて調合し傷口につけて処置を施した。
私にできる事は全てやった。
後は天人の生命力を信じよう。
私は弱々しい手を取ると、祈る様にして握り締めた。
どれぐらい時間が経ったのかは定かではないが、ポルテがもう一度戻ってきた時に事態が急変する。
祈りは届かず天人の荒げた息がスーッと弱くなっていく。
「お願い!持ちこたえて!」
必死の問いかけも虚しく、天人の呼吸と脈拍が止まってしまった。
扉がガラガラっと開き、呑気に何も知らないアサトが帰ってきた。
アサトは何処かに出かけたのか辺りに見当たらなかった。
今はアサトの事はどうでもいい。
怪我をしている天人の応急処置をしよう。
「ポルテ、ありったけの水と薬草を取ってきて。」
「な、なんで僕が!」
「ツベコベ言わない!」
「はっ、はいぃーーー。」
私が真剣じゃなければ笑えるぐらいのポルテの裏声と焦った顔で、逃げるようにして外へ出ていった。
「息は荒めで熱が少しあるかな…ともかくまずは止血をしないと。」
天人の血で染まった衣類をペタペタ音を立てながら、慎重に脱がせていった。
出血している部分を確認すると、やはり思った通り翼がもがれている跡がある。
そこからの出血が一番酷かった。
相当激しい戦いがあの場で繰り広げられていたのだろうかと想像するだけでとても恐ろしい。
部屋の隅に置いてあった、ありったけのカーテンを包帯代わりに出血の多いところのそばを器用にキツく巻きつけた。
タイミングよくポルテが水とそこらへんでよく取れる薬草を持って帰ってくる。
「これで、いいんだろ!」
私は投げやりにこっちに渡してきた事に腹を立てて
「足りないからもっと取ってきて!」
少し大きい声でポルテを怒鳴ると一目散に外にさっきと同じ様な顔で飛び出していった。
すぐによくなるわけでもないが、天人はとても辛そうだ。
「絶対助けてあげるから…」
熱を少しでも下げる為に、布に水を含ませておデコに乗せる。
取ってきてもらった薬草をもみくちゃにして、水を少し含ませて調合し傷口につけて処置を施した。
私にできる事は全てやった。
後は天人の生命力を信じよう。
私は弱々しい手を取ると、祈る様にして握り締めた。
どれぐらい時間が経ったのかは定かではないが、ポルテがもう一度戻ってきた時に事態が急変する。
祈りは届かず天人の荒げた息がスーッと弱くなっていく。
「お願い!持ちこたえて!」
必死の問いかけも虚しく、天人の呼吸と脈拍が止まってしまった。
扉がガラガラっと開き、呑気に何も知らないアサトが帰ってきた。
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