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第25章 愛の形

真奈美

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今回は複数人の視点から代わるがわる語る形になります

◇◇◇

 幸奈が1歳になったので、ささやかなお祝いをすることになった。

 どちらかの実家から声がかかり(主に「彼」の方)、よく分からない衣装を着せられてお餅をしょったりみたいな、儀式めいたことをやらされたらどうしようかと思ったが、考えてみるとそれは「彼」にとって大変リスキーなことだから、声がかかっていても、水際で食い止めた可能性がある。
 会えば当てこすりしか言わないあの義理の両親と私が接触するのを、「彼」が阻止してくれているのだという、ありがたい状態でもある。物事全て、考え方次第のようだ。

 ケーキと、形ばかりのごちそう的なものを調達し、上等のベビードレスを着せて、写真を撮って送る約束をした。

◇◇◇

 それとは別口で、みゆきがお祝いを持って(「彼」のいない時間帯に)訪ねてきてくれた。いろいろ忌憚ない話がしたかったのだろう。
 私は迷ったものの、宗太とのことと千奈美の妊娠のことは伏せ、ある程度赤裸々に現況を話した。「不愉快だったら、すぐ帰ってくれてもいいし、ご両親に私のことを言い付けてもいい」と付け加えた。
 すると、ずっと黙って聞いていたみゆきの最終的な反応は、「真奈美さん、なかなかやるじゃないですか!」だった。

「怒らないの?」
「そりゃ褒められたことじゃないけれど… 私に話してくれたことが何だかうれしくて」

 私がみゆきに正直に話したのは、「誰かに聞いてもらう」ということに飢えていたことと、半ば破れかぶれな気持ちもあったのだが、ちょっと照れくさそうな笑顔は信用してもよさそうだと思った。
 そもそもこれで大問題に発展したら、それこそ順一を頼ろうと、ごくナチュラルに考えてもいた。何だかんだで私は彼に依存していることは認めざるを得ない。

「その人を、言葉は悪いですけどしたらいいですよ」
「利用って…」
「嫌いじゃないんでしょ?」
「もちろん。でも…」
「というか、姉さんは今のおニイを好き?」
「え…」

 自分で自分に呆れるが、一番真剣に考えたことがない質問をされ、答えに詰まってしまった。

「もっと言うと、愛してますか?」

 これはキツい。
 私はそもそも人を愛したことがあるか?
 「彼」と結婚しようと思ったときですら、考えたことがなかった。

 私が今、「愛している」と言う言葉をためらいなく使える相手は幸奈だけだ。
 宗太や順一との密会に心の安寧を求めている時点で、気分次第の都合のいい愛、母親失格者がいけしゃあしゃあと口にする恥知らずな愛、になってしまうけれど。

 私が答えに詰まっていたら、みゆきがこんなことを言った。

「じゃ、この際愛はどうでもいいです。幸せにしてくれる人を選ぶんじゃなくて、不幸にする人を遠ざけるんだって考えるんです」
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