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第17章 いや、あなたも割としつこいのでは…【メグと大輔】
無自覚【大輔】
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「メグ」こと桜井芽久美は、初めから各駅停車で帰るつもりだったらしい。
確かにこの路線を運営する鉄道会社は、混雑状態を作り出す名人みたいなところがあるからね。急行を避ける気持ちはわかる。
メグと少しでも長く話ができるので、俺としても異論はない。
しかし――メグという呼び名で何か思い出せそうなものがあるんだが…一体何だったか。
まあいい、どうせ大したことではないだろう。
今は目の前にいるメグを、無事家に届けることが大事だ。
「お前、部活は?」
「いわゆる帰宅部です」
「普段は放課後何してるんだ?」
「家がすごく近いので、まっすぐ帰って家の手伝いをすることもありますけど、こんなふうに寄り道したりとか」
「わざわざ制服着てか?」
「じゃないと、「寄り道」になりません」
打ち解けてきたようで笑顔が出てきた。いい顔して笑いやがる。
俺は女に全く興味がないわけではないが、学校の連中にはあまり興味がなかった。
初等部からの付き合いで今さらってやつか、中等部や高等部で一緒になったチャラチャラしたのが多いせいか。
メグは何だかそういう連中とは違う何かがある。
「ほかの女より少しかわいい程度」だし、平凡なんだが、何と表現したらいいか。
「お前、カレシいるんだよな」
「ええ、まあ。一応ですけど」
あのときのは、ナンパの逃げ口上ではなかったのか。ちっ。
「ま、かわいい女には大体カレシがいるからな。俺は気にしないが」
「え?」
「今度、俺たちの部は英明に練習試合に行くんだ」
「そうなんですか」
「お前さ、助けてやった礼に、俺の応援しろよ」
「いや、それは…」
「冗談だ。お前の応援がなくても俺は勝つ」
「…あの、大っぴらには無理ですけど、心の中で応援するのは駄目ですか?」
「あ?」
「やっぱり、大倉さんに助けていただいたことは感謝していますし…」
そこで恥ずかしそうにうつむくんじゃない。
カレシいるって言ったよな?そんな態度とられたら、俺は勘違いするぞ。
◇◇◇
メグの家は、大きなターミナル駅で乗り換えてさらに7分、そうして着いた最寄り駅から歩いて5分だと聞き、
「じゃ、その最寄り駅までだな。家までついてったら、お前がストーカー被害に遭ったとき、俺が真っ先に疑われそうだから」
「まさか。私をストーキングする物好きな人なんていませんよ」
とクスクス笑うが、この自覚のないところがまた危なっかしい。
いるだろうが、会って10分程度で「家まで送る」と言い出した物好きが、目の前に。
気づけば俺は、会ったばかりの「メグ」という女の子に夢中になっていた。
カレシのいる女を好きになってはいけないという法はない。
本当にカレシが好きなら、俺が何をしかけようが効かないだろうが、もしも俺がアプローチすることでメグがなびくのなら、それがメグの本心ということだ。
そのときは遠慮なくいただく。
――そんな少々黒いことを考えていた。
確かにこの路線を運営する鉄道会社は、混雑状態を作り出す名人みたいなところがあるからね。急行を避ける気持ちはわかる。
メグと少しでも長く話ができるので、俺としても異論はない。
しかし――メグという呼び名で何か思い出せそうなものがあるんだが…一体何だったか。
まあいい、どうせ大したことではないだろう。
今は目の前にいるメグを、無事家に届けることが大事だ。
「お前、部活は?」
「いわゆる帰宅部です」
「普段は放課後何してるんだ?」
「家がすごく近いので、まっすぐ帰って家の手伝いをすることもありますけど、こんなふうに寄り道したりとか」
「わざわざ制服着てか?」
「じゃないと、「寄り道」になりません」
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メグは何だかそういう連中とは違う何かがある。
「ほかの女より少しかわいい程度」だし、平凡なんだが、何と表現したらいいか。
「お前、カレシいるんだよな」
「ええ、まあ。一応ですけど」
あのときのは、ナンパの逃げ口上ではなかったのか。ちっ。
「ま、かわいい女には大体カレシがいるからな。俺は気にしないが」
「え?」
「今度、俺たちの部は英明に練習試合に行くんだ」
「そうなんですか」
「お前さ、助けてやった礼に、俺の応援しろよ」
「いや、それは…」
「冗談だ。お前の応援がなくても俺は勝つ」
「…あの、大っぴらには無理ですけど、心の中で応援するのは駄目ですか?」
「あ?」
「やっぱり、大倉さんに助けていただいたことは感謝していますし…」
そこで恥ずかしそうにうつむくんじゃない。
カレシいるって言ったよな?そんな態度とられたら、俺は勘違いするぞ。
◇◇◇
メグの家は、大きなターミナル駅で乗り換えてさらに7分、そうして着いた最寄り駅から歩いて5分だと聞き、
「じゃ、その最寄り駅までだな。家までついてったら、お前がストーカー被害に遭ったとき、俺が真っ先に疑われそうだから」
「まさか。私をストーキングする物好きな人なんていませんよ」
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いるだろうが、会って10分程度で「家まで送る」と言い出した物好きが、目の前に。
気づけば俺は、会ったばかりの「メグ」という女の子に夢中になっていた。
カレシのいる女を好きになってはいけないという法はない。
本当にカレシが好きなら、俺が何をしかけようが効かないだろうが、もしも俺がアプローチすることでメグがなびくのなら、それがメグの本心ということだ。
そのときは遠慮なくいただく。
――そんな少々黒いことを考えていた。
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