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あとがき

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 『てんどん 天辺でもどん底でもない中学生日記』をお読みいただき、まことにありがとうございます。
 
 こちらのお話は、太平洋東北沖地震(東日本大震災)という実際の出来事をモチーフにしてはいるものの、完全なフィクションです。

 当時(も今も)福島県在住だった私には、大学生と小学生の娘がいました。
 そこで、どちらかを主人公にした話を書こうかなと思ったのですが、小学生のボキャブラリーのさじ加減が分からず、大学生の方は、「うちに住んでご飯食べて学校に通ってオタ趣味を楽しんでいる若者」くらいに思っていたので(関係が険悪だったわけではありません)、本人の口からわずかに漏れ聞こえる話から、「とりあえず交際している人はいなそうだな」程度の交友関係しかつかめかず、話を膨らませるのが難しいなと感じ、ならばと中間をとって、ミドルティーンを主人公にしようとした結果、あのような設定になりました。
 また、迷ったエンディングは2本(αとβ)ありましたが、その後、番外編というか例外編として全くの別枠で書いたものを、今回はとして「γ」シリーズに組み込みました。

 学校生活にしろ、震災当時の描写にしろ、もっと厚みを持たせ、できたら何らかのコンペに出したいとも考えたのですが、構想を練らず、勢いと思い付きで書いてしまいました。
 もしアニメ化の暁には、桐野まつり…東山奈央さん、斉木怜…平川大輔さん、南原優香…高垣彩陽さん、喜多川史彦…木村良平さん、日高央…杉山紀彰さんなどと、勝手に脳内変換までしていたのですが、本当にいい歳して何考えてたんでしょうか。

◇◇◇

 未だに福島県産品を毒物のように扱う有名無名の人々、原発の「処理水」のことを「汚染水」とわざわざ言い換えるマスコミ各社、フクシマ(福島という地名を記号というか旗印にでもしたいのか、片仮名使いがち)の子供を疎開させてあげなきゃと張り切る善意の人々、自己都合で引っ越したくせに、家賃よこせ見捨てる気かと騒ぐ自主避難民(**下記注)などなど、少し強い言葉を使えば、個人的にはヘイト対象になるものが、10年以上経ってもまだまだ元気に存在しています。

**
常識的に移住している方々のことを責める意図は全くありません。
**

 いつだったか、そういう心情をSNSで吐露したところ、見ず知らずのアカウントから、「そういうことを言うと、募金に協力する気がなくなるから、言わない方がいいですよ」と釘を刺されたことがありました。

は???

 どこのお大尽で、何億寄附してくださっているのか存じませんが(金額の多寡はこの際どうでもいいけれど)、「カネ出してやるから、言われっ放しになっとけ」とおっしゃる?

 私は正直、被災地に住んではいるものの、被災者の意識はほぼございません。当時の家にはそのまま住み続けられていますし、娘が就職で独立した以外、生活も全く変わっていません。むしろ子育て的には肩の荷がおり、以前よりもずっと自由に行動しています。

 だから11年前の震災のときも、その後日本各地で起きた地震や風水害のときも、些少ながら募金には協力させていただいておりますが、例えば「食えもしない千羽鶴送ってくんじゃねえよ」と被災地の方が言ったとしても、「うん、もっともだな」としか思わないし、その一言にかみついて協力をやめようとは思いません。しかし世の中には、「くれてやってんだから文句言うな」と、何一つ背景を考えずに真顔で言う人が意外と多いのだと、SNSの一件もあり、実感しています。

 デマを流して危険をあおったり、福島をどうしても何らかの象徴として扱いたい迷惑な人たちが行動する自由はあって、それに対して「迷惑だ」「実態は違う」と反論する自由はない、なんてことがあっていいわけがありません。
 私の言っていることがおかしいと感じるならば、反論してくれても構わないけれど、それに対して反論されても文句は言うな。どの部分がおかしいと思うか反論してくれれば、また返すから(以下ループ)――というつもりで、もろもろ書かせていただいております。

 実際、F県片山市のモデルとなっているここ福島県郡山市は、マスコミがセンセーショナルに取り上げるようなネタなど何もないのですが、そんな日常を書けるのは、そんな日常を過ごしている者だけだとの自負もあります。詰めの甘さや下手さは承知ですが、書かずにいられませんでした。

 ちなみに、番外編や後日談も何本かご用意がございますので、またお目にかかりましょう。Ciao!

2022年12月

***

このあとがきは、2022年末に書いたものですが、ALPS処理水放出の話題になると、「汚染水」という言葉を使う人がちらほらいるのは相変わらずです。ある意味、すごい根気ですね(2024年5月19日)
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