5 / 39
第2章 ゆる部活動報告
グループ交際のような
しおりを挟む私と優香がそうだったように、他の部から中途半端な時期に転部してくる人がいないとも限らない。
だから、できるだけ排他的な雰囲気にならないようにしようねと言っていたが、多分みんな「ほかの人、入ってこないといいけど」くらいのところが本音だった。
私たち4人は学校を離れても仲がよかった。
みんなの予定が合えば、映画やカラオケ、ボウリングなどに行くこともあった。
その中心にレイがいるばかりに(といったら責めているみたいだけど)私はやっかみから嫌なことを言われることもあったし、多分優香もそうだろう。
喜多川君のファンもいるにはいたが、「フミ君(喜多川君のことらしい)って部活でどんなことしてんの?」とフレンドリーに尋ねてきたり、「私もゆうゆうじてき部入りたいって思ったんだけど、親がね…運動部の方が受験に有利だからって言ってさー」とこぼしたりするタイプが多かった。
「やっぱり運動部の方が受験に有利なのかなあ?」
「うちのお母さんはそう言ってる。そんなわけのわからない部活は部活として認められないからって」
「わけのわからない…」
「わ、ごめん。だから、うちのお母さんがそう言っていたの。それに正直やっぱりよくわかんない部活だし」
「まあ、そうだよね。結構活動も幅広くて面白いんだけどね…」
テスト前には成績トップクラスの斉木怜君による学習指導が受けられる――なんて知ったら、いぶかしがっている親御さんも気が変わって、入部希望者が殺到しそうだ(だから言わない)。
◇◇◇
ほかの部活がテスト期間中は休んでいるときでも、我が部だけは部室でみんなで勉強することができた。
何しろ成績が多分学年トップ20に入る生徒が2人もいる上に、私と喜多川君も別に劣等生というわけではない。
レイが塾の日は塾の時間まで(そもそも部活もそれまでには終わる)、塾がない日は誰かしらの家に行って続きをやることもできた。
優香の家が学校から一番近かったので、彼女の部屋で7時ぐらいまで勉強して帰宅ということが多かったが、アニメやゲームキャラクターのグッズやポスターがいっぱいで、カラフルな部屋でびっくりした。
三次元の生身のアイドルやイケメン俳優は「全員同じ顔に見える」と言って興味を示さないが、男性アイドルをモチーフにしたアニメが大好きで、ほぼチェックしているらしい。
「お前、よくこんな部屋で勉強してて、あんな成績とれるな?」
と、喜多川君は落ち着かない様子だけど、
「逆だよー。推しがいるから私は呼吸もできるし、勉強も捗るのよん」
と涼しい顔で答えていた。
私も優香と親しくなってから、紹介してもらったアニメを動画サービスで見たり、アニメショップに一緒に行ったりするようになった。
私にも「推し」みたいなキャラができたけれど、「何だか誰かさんに似てますねえ」と優香にからかわれた。
線の細い長身、中性的な美形で優等生タイプ(**下記注)で、確かにレイにどこか似ているかもしれない。
恋愛対象みたいな気持ちで見たことはないけれど、昔から最も身近にいた男の子だし、何らかの基準になっているのは否定できない。
優香は「好きな男の子のタイプ」と「推し」は全く別物で、年上で男臭い感じの人が好きという割に、推しは小っちゃくてかわいい子(ショタ系というやつ?)が多い。
**
実際にはこの小説の設定(2010年~)当時はまだ出ていなかったコンテンツですが、『アイドリッシュセブン』逢坂壮五君あたりを想定しています(by筆者)
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
心の中に白くて四角い部屋がありまして。
篠原愛紀
青春
その日、私は自分の白い心の部屋に鍵をかけた。
その日、私は自分の白い心の部屋に鍵をかけた。
もう二度と、誰にも侵入させないように。
大きな音を立てて、鍵をかけた。
何色にも染めないように、二度と誰にも見せないように。
一メートルと七十センチと少し。
これ以上近づくと、他人に自分の心が読まれてしまう香澄。
病気と偽りフリースクールに通うも、高校受験でどこに行けばいいか悩んでいた。
そんなある日、いつもフリースクールをさぼるときに観に行っていたプラネタリウムで、高校生の真中に出会う。彼に心が読まれてしまう秘密を知られてしまうが、そんな香澄を描きたいと近づいてきた。
一メートル七十センチと少し。
その身長の真中は、運命だねと香澄の心に入ってきた。
けれど絵が完成する前に真中は香澄の目の前で交通事故で亡くなってしまう。
香澄を描いた絵は、どこにあるのかもわからないまま。
兄の死は香澄のせいだと、真中の妹に責められ、
真中の親友を探すうちに、大切なものが見えていく。
青春の中で渦巻く、甘酸っぱく切なく、叫びたいほどの衝動と心の痛み。
もう二度と誰にも自分の心は見せない。
真っ白で綺麗だと真中に褒められた白い心に、香澄は鍵をかけた。
My Angel -マイ・エンジェル-
甲斐てつろう
青春
逃げて、向き合って、そして始まる。
いくら頑張っても認めてもらえず全てを投げ出して現実逃避の旅に出る事を選んだ丈二。
道中で同じく現実に嫌気がさした麗奈と共に行く事になるが彼女は親に無断で家出をした未成年だった。
世間では誘拐事件と言われてしまい現実逃避の旅は過酷となって行く。
旅の果てに彼らの導く答えとは。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
野球×幼なじみ×マネージメント=?
春音優月
青春
「目立つことも、大声を出すことも苦手。
地味に無難に生きていきたい」そう思っていたはずなのに、なぜか野球部のマネージャーになってしまって......。
内向的なヒロインが幼なじみと一緒の野球部に入部して、青春したり恋したりするお話です。
2020.08.17〜2020.08.18
幼なじみ×野球×初恋青春もの。
【番外編集】てんどん 天辺でもどん底でもない中学生日記
あおみなみ
青春
本編『てんどん 天辺でもどん底でもない中学生日記』にまつわる、主人公以外の一人称語りや後日談をまとめた短編集です。
てんどん 天辺でもどん底でもない中学生日記
https://www.alphapolis.co.jp/novel/566248773/806879857
back beat 完全版
テネシ
青春
短編の自主制作映画化を前提に戯曲形式で書いていた「back beat」シリーズを一本の長編映画戯曲化し、加筆修正を加えて一つに纏めました。
加筆修正エピソード
2章 ~Colors~
3章 ~プロポーズ~
4章~mental health+er~
作中に登場する「玲奈」のセリフに修正が御座います。
大幅な加筆が御座います。
この作品は自主制作映画化を前提として戯曲形式で書かれております。
宮城県仙台市に本社を構えるとある芸能プロダクション
そこには夢を目指す若者達が日々レッスンに励んでいる
地方と東京とのギャップ
現代の若者の常識と地方ゆえの古い考え方とのギャップ
それでも自分自身を表現し、世に飛び出したいと願う若者達が日々レッスンに通っている
そのプロダクションで映像演技の講師を担当する荏原
荏原はかつて東京で俳優を目指していたが「ある出来事以来」地元の仙台で演技講師をしていた
そのプロダクションで起こる出来事と出会った人々によって、本当は何がしたいのかを考えるようになる荏原
物語は宮城県仙台市のレッスン場を中心に繰り広げられていく…
この物語はフィクションであり、作中に登場する人物や会社は実在しておりません。
通常はト書には書かず絵コンテで表現する場面も、読んで頂くことを考えト書として記載し表現しております。
この作品は「アルファポリス」「小説家になろう」「ノベルアップ+」「エブリスタ」「カクヨム」において投稿された短編「back beat」シリーズを加筆修正を加えて長編作品として新たに投稿しております。
この物語はフィクションであり、作中に登場する人物や会社は実在しておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる