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「こうかは ばつぐんだ!」
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文中、公序良俗に反する行為の描写がありますが、これを推奨するものではございませんので、ご了承ください。
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【スモールタスク】指定された小説を読んで感想を書いてください。
『ペンの森』と言うサイトでアカウントを作成し、指定の作家の小説を読んで感想コメントもしくはレビューを書いてください。
字数は、感想コメントで50~200字、レビューで100字~300字前後が目安です。
感想は1件につき30円、レビューには50円お支払いします。字数が多くても少なくても金額は変わりません。
◆◆
自由にごじぶんの感想を書いて構いませんが、注意事項を守ってください。
・あまり悪口がひどかったりすると、作家本人または運営の判断で削除される可能性がございますのでご注意ください。
・また、当方が不適当と判断した場合は承認しません。報酬も支払いませんのでそのつもりでいてください。
・節度と思いやりを持って、作家の創作の苦労に寄り添うようなコメントの書き込みが望ましいと思います【赤い太字で強調】。
◆◆
つくられたアカウントについては、その後の管理はお任せいたします。
ただ、今後も同作家をフォローするなど、応援の意思を示された方には、引き続きコメントの書き込みなどを依頼する可能性がございますので、ご一方【原文ママ 「ご一報」か?】ください。
+++
オミは必死で文面を考えました。
多少、誤字や稚拙さはあるものの、中学生男子が書いたとは思えない、立派な出来栄えといえます。
自作自演でもありませんが、その小説の書き手本人が依頼していると疑われる可能性もありましたが、実はオミはその点をあまり心配していませんでした。
「ソーホーズ」のアカウントには本人確認済のマークがついていて、年齢も「40代 男性」になっています。
ビジネスネームとして「メディア運営者20XX」と名乗りました。
(末尾に西暦のようなものがついているのは、全く同じ「メディア運営者」という名前の人が既にいたので、区別するために勧められたからです)
一方、「麻績ひよこ」という小説アカウントは、女子中学生を自称していますし、実際に女子中学生である「ヒナ」が書いた小説を載せていますから、両者が同一人物だと思う人はいないでしょう。
40代男性が女子中学生の体で書いていると邪推しない限り、疑われる可能性も低そうです。
小説サイトでは、別にコメントやレビューを書かれたからといって、「麻績ひよこ」には一銭も入りません。
ただ、オミの出した案件に従って、常識的に書いてくれれば、それを読んだヒナは、きっと自信を持ってくれるでしょう。それが何よりの報酬です。
日中は学校があるので、確認することができませんが、授業が終わってスマホの電源を入れると、2つのアプリにかなりの数の通知が来ていました。
オミはPCでウインドーを2つ開き、小説サイトに書きこまれたレビューと、「作業完了しました」という知らせを丹念に見比べて、書いた人物を特定し、ひどく辛口なもの以外はほぼ「承認」しました。
上限は「20人」でしたが、あっという間に達成しました。
多少辛口でも、良心的なものは残しました。
一応褒めているものも、ほぼ「中学生なのにこんなの書けてすごいね」的なものばかりでしたが、ポジティブなのは感謝すべきことです。
+++
それらをヒナにはゆっくり読んでほしかったので、オミは日曜日に家に来るように誘いました。
たくさんのレビューや感想コメントに、ヒナは大喜びしました。
「木曜日に見たときは、3件くらいついてたんだけど、こんなに増えてたんだね」
「うん。みんなが読んでくれそうな時間を工夫してアップしたかいがあったよ」
「すごいねえ。オミに任せてよかったー」
オミも、ヒナの言葉で報われた気持ちになりました。
ただ、ヒナが「せっかくいっぱい書いてもらったんだから、感謝のコメントを返信したい」と言い出したので、オミは少し焦りました。
「そんなのは“管理人”の僕の仕事だよ。君はいっぱい良い作品を書く方に専念してよね、麻績ひよこ先生」
ヒナは少し不満そうでしたが、「オミがそう言うなら…」と素直に引きました。
実はオミは、コメントにいちいち返信することなど全く考えていませんでした。
しかしヒナが、時々使える家のパソコンでお気に入りの作家の作品を読むついでに、「自分の作品」の様子をチェックする可能性もあるので、返信をサボるとバレてしまいます。
厄介な仕事が一つ増え、オミは内心軽くため息をつきましたが、「今考えてるのはね~」と、嬉しそうにプロットなどを語っている笑顔を見ていると、「ヒナちゃんにこんな生き生きとした顔をさせられるのは、僕だけだ」と、満更でもない気持ちになるのでした。
アクセスや応援が増えたことで、少し注目度が上がったらしいヒナの一番の自信作は、少し順位が上がりました。
フォロワーも増えたようですが、オミが「ソーホーズ」で依頼した人とは全く無関係の、以前から創作活動も読書も熱心にやっているらしいアカウントの人も結構いるようです。
+++
ソーホーズのメンバーの中で、引き続き「麻績ひよこ」をサポートし、コメントなど書きたいと申し出てきた人も何人かいました。
こう言ってはなんですが、特にストーリーやキャラに触れるでもなく、どんな話にも当てはまりそうなコメントを書き込んだ人が多いのが気になりました。
いつだったか掲示板で見た書き込みを思い出しました。
「あんま誘導がロコツだとうーんってなるけど、ちょこっと褒めたこと書いただけで金もらえるし、まあ言うこと聞くよ。ウソ書くのと盛るのは違うから」
多分こういう発想の人ばかりで、女子中学生の書いた小説なんかまともに読むつもりはないのでしょう。正直言えば、少し腹立たしいものを感じます。
(いやいや、もっとケンキョになんなくちゃ…僕のせいでヒナちゃんが傷ついたら…)
自分のSNS下手を自覚しているオミは、すぐそう考え直し、大事なサポーターを尊重することにしました。
今回コメントやレビューを寄せてくれた人への支払額は、合計1,000円にも満たないものでしたから、親にバレる可能性もかなり低いでしょう。
オミは内心、次の募集ではもっと数を増やそうか――などと漠然と計算していました。
少なくともその時点では、全てがうまくいくと思っていました。
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【スモールタスク】指定された小説を読んで感想を書いてください。
『ペンの森』と言うサイトでアカウントを作成し、指定の作家の小説を読んで感想コメントもしくはレビューを書いてください。
字数は、感想コメントで50~200字、レビューで100字~300字前後が目安です。
感想は1件につき30円、レビューには50円お支払いします。字数が多くても少なくても金額は変わりません。
◆◆
自由にごじぶんの感想を書いて構いませんが、注意事項を守ってください。
・あまり悪口がひどかったりすると、作家本人または運営の判断で削除される可能性がございますのでご注意ください。
・また、当方が不適当と判断した場合は承認しません。報酬も支払いませんのでそのつもりでいてください。
・節度と思いやりを持って、作家の創作の苦労に寄り添うようなコメントの書き込みが望ましいと思います【赤い太字で強調】。
◆◆
つくられたアカウントについては、その後の管理はお任せいたします。
ただ、今後も同作家をフォローするなど、応援の意思を示された方には、引き続きコメントの書き込みなどを依頼する可能性がございますので、ご一方【原文ママ 「ご一報」か?】ください。
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オミは必死で文面を考えました。
多少、誤字や稚拙さはあるものの、中学生男子が書いたとは思えない、立派な出来栄えといえます。
自作自演でもありませんが、その小説の書き手本人が依頼していると疑われる可能性もありましたが、実はオミはその点をあまり心配していませんでした。
「ソーホーズ」のアカウントには本人確認済のマークがついていて、年齢も「40代 男性」になっています。
ビジネスネームとして「メディア運営者20XX」と名乗りました。
(末尾に西暦のようなものがついているのは、全く同じ「メディア運営者」という名前の人が既にいたので、区別するために勧められたからです)
一方、「麻績ひよこ」という小説アカウントは、女子中学生を自称していますし、実際に女子中学生である「ヒナ」が書いた小説を載せていますから、両者が同一人物だと思う人はいないでしょう。
40代男性が女子中学生の体で書いていると邪推しない限り、疑われる可能性も低そうです。
小説サイトでは、別にコメントやレビューを書かれたからといって、「麻績ひよこ」には一銭も入りません。
ただ、オミの出した案件に従って、常識的に書いてくれれば、それを読んだヒナは、きっと自信を持ってくれるでしょう。それが何よりの報酬です。
日中は学校があるので、確認することができませんが、授業が終わってスマホの電源を入れると、2つのアプリにかなりの数の通知が来ていました。
オミはPCでウインドーを2つ開き、小説サイトに書きこまれたレビューと、「作業完了しました」という知らせを丹念に見比べて、書いた人物を特定し、ひどく辛口なもの以外はほぼ「承認」しました。
上限は「20人」でしたが、あっという間に達成しました。
多少辛口でも、良心的なものは残しました。
一応褒めているものも、ほぼ「中学生なのにこんなの書けてすごいね」的なものばかりでしたが、ポジティブなのは感謝すべきことです。
+++
それらをヒナにはゆっくり読んでほしかったので、オミは日曜日に家に来るように誘いました。
たくさんのレビューや感想コメントに、ヒナは大喜びしました。
「木曜日に見たときは、3件くらいついてたんだけど、こんなに増えてたんだね」
「うん。みんなが読んでくれそうな時間を工夫してアップしたかいがあったよ」
「すごいねえ。オミに任せてよかったー」
オミも、ヒナの言葉で報われた気持ちになりました。
ただ、ヒナが「せっかくいっぱい書いてもらったんだから、感謝のコメントを返信したい」と言い出したので、オミは少し焦りました。
「そんなのは“管理人”の僕の仕事だよ。君はいっぱい良い作品を書く方に専念してよね、麻績ひよこ先生」
ヒナは少し不満そうでしたが、「オミがそう言うなら…」と素直に引きました。
実はオミは、コメントにいちいち返信することなど全く考えていませんでした。
しかしヒナが、時々使える家のパソコンでお気に入りの作家の作品を読むついでに、「自分の作品」の様子をチェックする可能性もあるので、返信をサボるとバレてしまいます。
厄介な仕事が一つ増え、オミは内心軽くため息をつきましたが、「今考えてるのはね~」と、嬉しそうにプロットなどを語っている笑顔を見ていると、「ヒナちゃんにこんな生き生きとした顔をさせられるのは、僕だけだ」と、満更でもない気持ちになるのでした。
アクセスや応援が増えたことで、少し注目度が上がったらしいヒナの一番の自信作は、少し順位が上がりました。
フォロワーも増えたようですが、オミが「ソーホーズ」で依頼した人とは全く無関係の、以前から創作活動も読書も熱心にやっているらしいアカウントの人も結構いるようです。
+++
ソーホーズのメンバーの中で、引き続き「麻績ひよこ」をサポートし、コメントなど書きたいと申し出てきた人も何人かいました。
こう言ってはなんですが、特にストーリーやキャラに触れるでもなく、どんな話にも当てはまりそうなコメントを書き込んだ人が多いのが気になりました。
いつだったか掲示板で見た書き込みを思い出しました。
「あんま誘導がロコツだとうーんってなるけど、ちょこっと褒めたこと書いただけで金もらえるし、まあ言うこと聞くよ。ウソ書くのと盛るのは違うから」
多分こういう発想の人ばかりで、女子中学生の書いた小説なんかまともに読むつもりはないのでしょう。正直言えば、少し腹立たしいものを感じます。
(いやいや、もっとケンキョになんなくちゃ…僕のせいでヒナちゃんが傷ついたら…)
自分のSNS下手を自覚しているオミは、すぐそう考え直し、大事なサポーターを尊重することにしました。
今回コメントやレビューを寄せてくれた人への支払額は、合計1,000円にも満たないものでしたから、親にバレる可能性もかなり低いでしょう。
オミは内心、次の募集ではもっと数を増やそうか――などと漠然と計算していました。
少なくともその時点では、全てがうまくいくと思っていました。
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