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MARRY ME【終】

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MARRY MEずっといっしょに

◇◇◇

 ふとした拍子に、「そういえば、ちょうど去年の今日から付き合い始めたっけ…」と思い出したのは、その日の夜7時頃だった。

 私と和志は相変わらず、おとぎ話のトンデモ展開とか、街にあふれるツッコミ待ちみたいな変な看板とか、どうでもいいようなことほど真剣に話し合う仲だった。

 思いのほか残務処理に時間がかかり、7時半頃「やっと終わった。腹減ったー」とメッセージを送ったら、定時に仕事を終えていた和志は、「多分5分くらいでそっちに行けるところにいるから、迎えにいく。何か食ってから帰ろう」と返事をくれた。

◇◇◇

 ガチャガチャと騒がしい和食ファミレスで、料理が来る少し前に和志が言った。

「ねえ、俺、美穂みほと結婚したいんだけど、どう思う?」

 え、それって…。
 こんなプロポーズ聞いたことがない。
 プロポーズをされたことがないから、わかんないけど、こんなものなの?
 でも、とっても和志らしいなと思える言い回しでもある。

「いいんじゃないの?私も結婚するなら和志がいいなって常々思ってたよ」
「へへ…よかった…」

 和志はちょっと照れくさそうに「マグロのヅケ丼と小うどん」のセットを平らげ、私は「月見そばと鶏そぼろミニ丼」を食べた。
 私の注文が届いたのを見たとき、そばの上の卵の黄身と、丼の上の卵そぼろを見て、「…タマゴが…かぶった…」なんてぼそっと言ったのは、某グルメドラマの主人公ゴローさんのマネらしいので、「ふふっ」と笑っておいた。

 普通に会話して、普通にご飯食べて…
 あれ、これってひょっとして、別にプロポーズじゃなくない?

 いや、でも和志のすることだしな。

 いつもより表情が少しだけうれしそう。
 私もうれしくて――そしてたまらず照れくさい。

◇◇◇

 その日は私の部屋に帰った。

 和志はベッドの中で、あくびまじりにこう言った。

「美穂って何を考えているのか全然分からないから、ずっとそばで観察してたくなったんだ」

「え…?」

 そこそこ疲れていたようで、それだけ言うと、そのまますっと寝入ってしまった。

 もし将来、私たちに子供ができて、「プロポーズの言葉は何だったの?」なんて聞かれたら、この一言をこのまま教えてあげたいと思う。

 私たちの遺伝子を持っている子なら、きっと理解してくれると思うんだ。

【了】
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