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謎のイケメンの謎
美しい“線”の正体
しおりを挟む翌日の自主練のとき、細長い優雅な「線」のようなものがトラックを走り抜けるのを見た。
S高のユニを着て、昨日私に話しかけた子の1人が記録を取っていた。
100メートルで14秒を切っている程度だから、すごい速いわけでもない。ただ、その姿形の美しさに見とれた。
そして「線」が振り向いたとき、生まれて初めての衝撃を受けた。
(あれ…私だ…?)
意外と近い距離だったので、その細長い線は私の視線に気づき、「あ、A高の鈴森さんでしょ?初めまして!私、佐野です」と、相好を崩しながら近づいてきた。
「え、どうして私の名前…」
「うちの学校の子たちから聞いたから。私とそっくりな人がA高にいるよって。会うの楽しみだったんだ」
「そうなんですね…」
「いやあ…で、こう言っちゃなんだけど…」
そう言いつつ、“佐野さん”は、私の顔をマジマジと見つめた。背が高いから目線が下がり、私はその目力にたじろいでしまった。
「結構「私に似てる人」って話は今までも聞いていたんだけど、本当に似ている人に会ったのは初めてだわ」
「え…私もです」
「やっぱり?このベリーショートの髪型とか体型とかが似てるって意味のことが多いんだよね」
「あるあるですね」
それを聞いて佐野さんが、「ぷっ」と明確に発音して噴き出した。
「やっぱりそうなんだね」
「で、ここにメガネキャラが加わると、メガネかけてるだけで「似てる」ってなる」
「あー…はは」
「そもそも誰かに似てるって言葉は地雷だと思うけど、結構使っちゃうよね」
「うん…私もあまり言われて愉快な思いしたことないんで、人には使ったことないですね」
「あれ、鈴森さん、私に似てるって言われて嫌だった?」
佐野さんの顔が突然曇ったので、私はあわてた。
「じゃなくて…佐野さんみたいにカッコイイ人に似てるって言われて、おこがましいっていうか…」
「ありがと。私もあなたみたいに可憐な人に似てるって言われて、申し訳ないわ」
そこで180度くるっと変わったみたいな笑顔を見せてくれた。表情が豊かなのも、この人の魅力らしい。
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