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アカとピンク
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最近あまり漫画を読んでいません。
全く読んでいないわけではないのですが、漫画周辺に月何万使っているとか、話題作は義務感を持って全てチェックというほどは読んでいないという意味です。
いや、もともとそんなふうに読んでいたことはないのですが。
アプリを使って好きだった旧作や気になる新作を読むこともありますが、「紙媒体が出ると買う」が習慣になっているのは、和山やまさんの作品と、佐倉ケンイチさんの『放課後の王子様』くらいでしょうか。定期購読するコミック誌がなくなったというのが、何より大きな理由だと思います。
西修さんの『魔入りました!入間くん』が大好きで、グッズ展開やコラボ企画が少ないことに文句を言っている我が娘も、原作もアニメもサブスク派ですし、掲載誌である週刊少年チャンピオンも、付録などの特典があるものだけ購入しています。
(20代の娘の力だけでどうこうできる話ではありませんが、もう少し積極的に買い支えた方が、グッズ展開もされやすくなるのでは…と思わないでもありません)
ネット普及以前と同様、雑誌連載→コミック本の流れを追い、両方購入されている方もいるでしょう。
つまり、いわゆるマンガ読みとまでいかずとも、「習慣的に読む漫画があった」という時代を経験している人は多いはずです。
だから、そんな人が一度は経験しているであろうことについて一齣書きたいと思います。
雑誌で一度は読んだ漫画を、コミックになってから改めて買うのですから、当然好きで印象に残っている話が多いということです。
すると、意外と細部を覚えているので、セリフや絵柄が微妙に変わっていたり、状況次第では、「こんなシーンあったっけ?」ということに気付きます。
そうなってしまう理由はいろいろでしょう。
プレスコード的にアウトな言葉を使っていた、誤植があった、雑誌掲載分では絵柄があまりにもあれだった、etc.。
どれも大人の事情ですが、訳知り顔の年長のきょうだいや親に説明してもらい、「なるほど」と納得したり、説明されても納得できなくてもやもやしたり。
子供なので、そんな細部に気付いたことがちょっとうれしかったりもします。
雑誌は大抵、せいぜい1、2カ月で古紙回収(※※)行きですから、「こことここが違う!」という物証を出すことはできないのですが、友達に話すと、「よく気付いたね。すごい!」と感心されるだけで、「エビデンスは那辺に?」などと迫ってくる子はそうそういません。
**
これは地域差もあると思いますが、昔は地域のごみ収集分類で「資源ごみ」はなかったものの、チリ紙交換車はしばしば街を回ってくれていた記憶があります。
最も印象に残っているのは、ロス・インディオス・タバハラスの「マリア・エレーナ」を流しながら、ゆるりと回っていた車でした。30年以上前@静岡県です。
**
大人の事情といえば、いまだによく分からない事例が1つありまして。
集英社の月刊誌『ヤングユー』に不定期で掲載されていた人気シリーズで、『ベスト・フレンド』という同棲カップル(途中で結婚)の物語がありました。
男は自分のブランドも持っている人気デザイナー。女は作家志望で、官庁でのバイトの傍ら、出版社に原稿の持ち込みをしています。
女の原稿を読んだ編集者が、「どんな作家が好きか?」と尋ねると、「共感できるのは〇〇さんです」と、いわゆる左翼的な思想で知られている女性作家の名前を挙げました。
そこで編集者は「ああ、あのおばさんピンクだよね」と嘲笑し、女は一呼吸置いてから、「ピンクって何ですか?」と静かに質問しました。
編集者は「若い子にはわかんないかな」と言うばかりで、まともな説明をせず、枠外に「ピンク…左翼的な思想傾向にある人」と説明されていました。
ある属性を単語1つでくくってしまうのには、大抵は侮蔑の意味が含まれています。女は編集者を「こいつはただのイキリバカだ」と判断し、あとは沈黙を貫いた後、建物を出るなり「ふん、バーカ!私はバカとは口利かねえよ」と叫びます。
ところで後出しになりますが、この作品は、途中でほかの雑誌に移籍したため、コミック自体は全く違う出版社から出ました。
すると、このシーンのセリフの「ピンク」は、なぜか全て「アカ」に変更されていました。
ええと、アカの方がさらに侮蔑的な感じにならんか?
ピンクはアカほど過激ではないニュアンスもあるようだし、そうすると、〇〇の作家は「ピンクどころじゃない」という出版元の判断で変えられた?
そして何より、女が「ピンクって何ですか?」と質問したのと、「アカ」って何ですか?と質問したのとでは、ニュアンスが全く変わってしまうのです。
ピンクだと、本当に意味が分からず質問したという雰囲気もあったのですが、アカだと「分かってあえて聞いている」になるのです。女はもともと左翼的思想を支持していて、「アカとかバカにされて」というセリフも別のシーンで使っていたので、「アカ」の意味が分からないということはないはずです。
作者は「本当は最初からアカという用語を使いたかったのに、ピンクに変えさせられた(つまりコミック化に際して戻した)」のか、逆に初手は「ピンク」と書いたものを、コミックを出す出版社の都合で「アカ」に変更したのか、その辺の事情は全く分かりませんが、作者が「左翼をアカとかピンクとかバカにしてイキってるやつはくたばれ」と思っている点は間違いないようです。こればかりはコミック全体(特に終盤)を読まないと分からないのですが。
ところで、この漫画自体はとても好きだったのですが、作者の思想が色濃く分かる表現が増えるにつれ、ちょっと受け入れられなくなってしまいました。
思想信条はお好きにと思いますが、自分が相いれない「体制側への偏見」を隠そうともしない描き方が鼻につきます。どいつもこいつも人を見下していて、多様性を受け入れない石頭人間ばかり、とか何とか。
しかも、下手したらこの短所、今や左翼(自称リベラル)の悪いところとして、そのまま挙げられそうなんですわ。
全く読んでいないわけではないのですが、漫画周辺に月何万使っているとか、話題作は義務感を持って全てチェックというほどは読んでいないという意味です。
いや、もともとそんなふうに読んでいたことはないのですが。
アプリを使って好きだった旧作や気になる新作を読むこともありますが、「紙媒体が出ると買う」が習慣になっているのは、和山やまさんの作品と、佐倉ケンイチさんの『放課後の王子様』くらいでしょうか。定期購読するコミック誌がなくなったというのが、何より大きな理由だと思います。
西修さんの『魔入りました!入間くん』が大好きで、グッズ展開やコラボ企画が少ないことに文句を言っている我が娘も、原作もアニメもサブスク派ですし、掲載誌である週刊少年チャンピオンも、付録などの特典があるものだけ購入しています。
(20代の娘の力だけでどうこうできる話ではありませんが、もう少し積極的に買い支えた方が、グッズ展開もされやすくなるのでは…と思わないでもありません)
ネット普及以前と同様、雑誌連載→コミック本の流れを追い、両方購入されている方もいるでしょう。
つまり、いわゆるマンガ読みとまでいかずとも、「習慣的に読む漫画があった」という時代を経験している人は多いはずです。
だから、そんな人が一度は経験しているであろうことについて一齣書きたいと思います。
雑誌で一度は読んだ漫画を、コミックになってから改めて買うのですから、当然好きで印象に残っている話が多いということです。
すると、意外と細部を覚えているので、セリフや絵柄が微妙に変わっていたり、状況次第では、「こんなシーンあったっけ?」ということに気付きます。
そうなってしまう理由はいろいろでしょう。
プレスコード的にアウトな言葉を使っていた、誤植があった、雑誌掲載分では絵柄があまりにもあれだった、etc.。
どれも大人の事情ですが、訳知り顔の年長のきょうだいや親に説明してもらい、「なるほど」と納得したり、説明されても納得できなくてもやもやしたり。
子供なので、そんな細部に気付いたことがちょっとうれしかったりもします。
雑誌は大抵、せいぜい1、2カ月で古紙回収(※※)行きですから、「こことここが違う!」という物証を出すことはできないのですが、友達に話すと、「よく気付いたね。すごい!」と感心されるだけで、「エビデンスは那辺に?」などと迫ってくる子はそうそういません。
**
これは地域差もあると思いますが、昔は地域のごみ収集分類で「資源ごみ」はなかったものの、チリ紙交換車はしばしば街を回ってくれていた記憶があります。
最も印象に残っているのは、ロス・インディオス・タバハラスの「マリア・エレーナ」を流しながら、ゆるりと回っていた車でした。30年以上前@静岡県です。
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大人の事情といえば、いまだによく分からない事例が1つありまして。
集英社の月刊誌『ヤングユー』に不定期で掲載されていた人気シリーズで、『ベスト・フレンド』という同棲カップル(途中で結婚)の物語がありました。
男は自分のブランドも持っている人気デザイナー。女は作家志望で、官庁でのバイトの傍ら、出版社に原稿の持ち込みをしています。
女の原稿を読んだ編集者が、「どんな作家が好きか?」と尋ねると、「共感できるのは〇〇さんです」と、いわゆる左翼的な思想で知られている女性作家の名前を挙げました。
そこで編集者は「ああ、あのおばさんピンクだよね」と嘲笑し、女は一呼吸置いてから、「ピンクって何ですか?」と静かに質問しました。
編集者は「若い子にはわかんないかな」と言うばかりで、まともな説明をせず、枠外に「ピンク…左翼的な思想傾向にある人」と説明されていました。
ある属性を単語1つでくくってしまうのには、大抵は侮蔑の意味が含まれています。女は編集者を「こいつはただのイキリバカだ」と判断し、あとは沈黙を貫いた後、建物を出るなり「ふん、バーカ!私はバカとは口利かねえよ」と叫びます。
ところで後出しになりますが、この作品は、途中でほかの雑誌に移籍したため、コミック自体は全く違う出版社から出ました。
すると、このシーンのセリフの「ピンク」は、なぜか全て「アカ」に変更されていました。
ええと、アカの方がさらに侮蔑的な感じにならんか?
ピンクはアカほど過激ではないニュアンスもあるようだし、そうすると、〇〇の作家は「ピンクどころじゃない」という出版元の判断で変えられた?
そして何より、女が「ピンクって何ですか?」と質問したのと、「アカ」って何ですか?と質問したのとでは、ニュアンスが全く変わってしまうのです。
ピンクだと、本当に意味が分からず質問したという雰囲気もあったのですが、アカだと「分かってあえて聞いている」になるのです。女はもともと左翼的思想を支持していて、「アカとかバカにされて」というセリフも別のシーンで使っていたので、「アカ」の意味が分からないということはないはずです。
作者は「本当は最初からアカという用語を使いたかったのに、ピンクに変えさせられた(つまりコミック化に際して戻した)」のか、逆に初手は「ピンク」と書いたものを、コミックを出す出版社の都合で「アカ」に変更したのか、その辺の事情は全く分かりませんが、作者が「左翼をアカとかピンクとかバカにしてイキってるやつはくたばれ」と思っている点は間違いないようです。こればかりはコミック全体(特に終盤)を読まないと分からないのですが。
ところで、この漫画自体はとても好きだったのですが、作者の思想が色濃く分かる表現が増えるにつれ、ちょっと受け入れられなくなってしまいました。
思想信条はお好きにと思いますが、自分が相いれない「体制側への偏見」を隠そうともしない描き方が鼻につきます。どいつもこいつも人を見下していて、多様性を受け入れない石頭人間ばかり、とか何とか。
しかも、下手したらこの短所、今や左翼(自称リベラル)の悪いところとして、そのまま挙げられそうなんですわ。
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