小手先の作業

あおみなみ

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【再掲載】44点(100点満点)

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今回は、一度単発でアップしたものの転載です。
何となくそういう気分だったので、常体文で書きました。ご了承ください。

◇◇◇


 進学率がすこぶる高いわけではなく、かといって教育困難なレベルでもない、いわゆる中堅校という存在がある。
 その中でも比較的難易度が高い学校は、上位中堅校、準進学校とカテゴライズされたり、口の悪い人には「自称進学校」と揶揄されたりするようだ。

 ――というところから切り出したけれど、下の娘ですら4年前に高校を卒業してしまったので、現状に詳しいわけでもない身。今様のリアルな教育環境について話したいわけではない。

 ここから先はあくまで「1980年代地方公立高校」の話として読んでいただきたい。

◇◇◇

 私が卒業した学校は、公立の地域二番手の女子高。偏差値的には上位中堅といってもいいレベルだったと思う。

 21世紀が目の前というところで共学化し、制服もリニューアルされてなかなかの人気校となったし、進学率もかなりよくなったようだ。
 だから女子校時代のOBが「今の〇〇高校卒」といえば、「いい学校ですね」と思ってもらえるが、共学になった後も女子校時代のイメージを引きずっている老害にとっては、「ああ、もとの〇〇女子なんたらじょしね」と嗤われそうなところ(いや、後者は被害妄想かも)。

 実際私は、口汚く根性も悪い隣県人ライターFに「あの高校出たくせに大学行かないなんて、よっぽど勉強しなかったんだなww」と言われたことがある。
 それは「ライターFが癖強アレである」が共通認識になっているコミュニティー(**下記注)での公開侮辱だったので、心優しき同業者・類似業務者に「あんな人の言うことは気にしないで」と励まされただけで終わった。

**
個人請負業者のための仕事マッチングサイトで、一時的に開設されたコミュニティー掲示板での出来事です。
私はFの顔すら知らず、積極的に絡んだこともないのに、なぜかしばしば「私をバカにするな。名誉損で訴えるぞ」と絡んできて、「損でしょ」と他のに人につっこまれたりしていました。
これからする話に特に関係はないのですが、いまだあの人については腹に据えかねるものがあるため、時々こんなふうに吐き出したくなるのです。失礼いたしました。
**

◇◇◇

 私が高校生の当時、2・3年生を対象にした県下学校共通の学力テストがあった。
 長女・次女の頃を思い出すと、現在そのテスト自体がないか、あっても形を変えているかだと思う。

 今思うとかなり基礎的な内容だったはずだが、それは進学校で真面目にやっている人たちの基準で――である。2・3年生共通のため、どうしても2年生の方が分が悪い。

 私は2年次のテストで、国語は70点台、英語44点、数学「なかったことにしてください」という結果だった。とても自慢できる代物ではない。

 国語はぼちぼちだが、そもそもこの科目は大抵平均点が高いので、偏差値的には50行ったか行っていないか。数学は、数字があっただけ上等というものだったので、省略する。

 問題は英語だった。どちらかというと得意科目だったし、通常のテストでは、さすがにもう少し取れていたので、個人的には結構ショックだった。

 にもかかわらず、偏差値は「58」だった。
 もちろんこれも超優秀というわけではない。多分進学校の3年生なら満点や満点近い人も多かったろうし、2年生にもそのレベルはいたかもしれない。
 ただ、点数でショックを受けた後のまあまあの偏差値だったので、実はかなりうれしかった。

 担任からこう言われた。
「英語だけなら、お前はどの3年生より点数が取れていたんだぞ」

 3年生でそこそこ仲がよかったのは、部活で一緒だった少数の人だった上に、押しなべてあまり勉強に興味のない人たちだったので、3年生の成績上位者は顔すら浮かんでこない。
 だから「〇〇さんに勝ったなんて光栄ですけど、まぐれですよ~(マウント!)」と言うべき相手にも心当たりがなく、「はあ、そうですか」ってなもんだった。

 いずれにせよ、偏差値58がうれしいとか何とかよりも、「この学校、マジ大丈夫かよ…」と本気で思った。

 例えば科目が絞られる私立ならば、個人的に幾らでも勉強して難関大学をねらうこともできるが、何だかんだ勉強には環境というか空気も大切なのだ。
 のんきモード、やる気ナッシングモードが支配的な中で勉強を続けるのは、かなり骨が折れることだろう。
 9割が推薦入学という私立の女子短期大学が地元にあり、うちの学校で「短大に行きたい」といえばそこに行くことを意味するくらいの雰囲気だった。
 当時は女性のライフスタイルに合う短大が人気で、東京には「短大五つ星」といわれる人気校があり、就職も大変よかったようだが、間違っても「そのうちのどこか」は意味しなかったのだ。

 単純に他人事ひとごととも言い切れない状態で、ただただ不安が募る。
 2年生当時はいろいろと了見も定まっていなかったが、「ま、これからせいぜい頑張ろ…」とため息をつくだけだった。

◇◇◇

 ところで、余談中の余談だが、その割にタイトルにするきっかけというか、この雑文を書く動機になったお話を一つ。
 私の担任は進路指導担当で、私はクラスの進路指導委員をやっていたため、2年生の頃から職員室よりも進路指導室に顔を出すことが多かった。
 進路指導室というとお堅い感じだが、職員室よりも狭く、席を置いている教師も少な目で、よくも悪くも「アットホームな職場」だった。

 テストの結果が出て以降、私は進路指導室で「44点の子」と教師たちから呼ばれた。

 私が顔を出すと担任が、ほかの教師に「この子ですよ、44点だったのは」とするからだ。
 単純に「優秀だね」「すごい」と言われるだけでもキツかったのに、3年生の英語を担当している教師からは、「3年生あのこたちにも君くらい頑張ってほしいもんだ」と愚痴られたりした。

 44点なんて、50点満点のテストでもない限り、とても自慢できるものではない。
「ほぼ褒め殺し(**下記注)というか、いじめじゃねえかこんなもん」としか思えない。
 いっそコロしてくれ!という心境だった。

**
対象を褒めることで駄目にすること。駄目にすることを目的にあえて褒めるニュアンスもある。
1987年の皇民党事件がきっかけで広く知られるようになったので、これは時期的にそれより少し前のため、「今ならこう言いたい」というニュアンスで使いました。
トリビアルなことがめっちゃ気になる性癖わるいくせゆえ、よくこういうちまちました注釈を入れてしまうこと、お許しくださいませ。
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