小手先の作業

あおみなみ

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絵空事でしか泣けないくせに【20220901】

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 ウェブスター作『足ながおじさん』の主人公ジルーシャ・アボットも、オルコット作『若草物語』シリーズのジョオも、背伸びしたような、無理したような作品を酷評され、自分のルーツを生き生きと描くことで評価された――的なくだりがあった気がします。

 読んだのがはる~か昔過ぎて、正確にどう表現されていたかは覚えていないのですが、まあありました、ありましたよ。

 「まえがき」が“読ませる”ことに定評のあるケストナーも、どの本だったか忘れたけれど、「鯨のこととかよく知らないから書くの無理~」って書いていたかな。

 当然ですが、知らないことはなかなか書けません。
 取材や調査をもとに書こうにも、よく知らないこと、自分の中に下地がないことについて、のある文章にまとめるのは難しいものです。

 名だたる名文家や名作メーカーみたいな作家を引き合いに出すまでもなく、素人妄想作家のワタクシもまた、自分の中に素材があることについてしか書けません。全部ではないけれど、実話ベースの話ばかり書いています。
 例えば家族について書くにしても、「こうだったらいいのに」という願望を盛り込んで設定を変えることで、駄エピソードを何とか「創作」に仕立てている感じです。

◇◇◇

 それでいて、例えば映画などで、「実話がもとになっていて…」というのを強調されたり、売りにされたりしていると、「で?」と反発することしばしば。
 全く架空の話だろうが、実話がもとになっていようが、「面白いものは面白い、そうでないものは…」だし、極端に言えば面白いか否かも個々人の好みだけの話です。
 が、なぜか「実話がもとになっている」というだけで評価する人というのが存在するので、どっちかというと、そういうへの反発かもしれません。

 私、実は架空の話でしか「泣けない」のです。
 心が動かされたときの反応として「泣く」というのは非常にありがちなので、カンドーとかカナシーとかだけではなく、「やられた」「ツボった」というニュアンスとして捉えていただけますでしょうか。
 何ででしょうかね。実話だと思うと、単純に勧善懲悪として捉えにくかったり、後ろに張り付いた背景に思いをはせちゃったりするからかもしれません。

◇◇◇

 で、こんなの自分だけの変なこだわりだったら別にどーでもいいんですけど、せんえつながら、実は私には「あおみなみワナビー」みたいな若い子が1人おりまして――まあ、次女(20代前半)なのですが。
 彼女が15、6歳になったころを境に、洋服の好みが隔たってきたので、服の貸し借りが減ってきたし、食の好みもスイーツとカレー以外は合わないので、一緒にご飯を食べにいくのも一苦労(というか、私のつくった食事にいっつも一言ありそうな顔して食いやがる!)なのですが、私の物の見方とか意見に対しては、「そーそーそー」「それな」「あるあるある」と手放し賛同のことが多い上に、先日、ネトゲ仲間との会話でこんなこと言っとりましたよ。

「私、つくり話じゃないと、なんかカンドーできないんだよね」

 お、おう…。なんかすまんの…。
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