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第1話 初体験【俺】

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 まるで、官能文芸誌の妄想体験談のように…

◇◇◇

 身長153センチ、スリーサイズは上から86、59、85。

 グラビアアイドルのプロフィールではない。
 妻の若い頃のプロポーションだ。

 どちらかというと丸目の顔で顎だけが少しとがった、当時(80年代)人気のあったアイドルか、アニメの美少女キャラクターかという輪郭の中に、ぱっちりした目と少し低目の鼻、形の整った唇が、それぞれほどよい位置についている。
 鼻は本人は気にしていたようだが、美人というよりかわいいタイプだったし、横顔も平坦というほどではないので、少なくとも俺は気にならなかった。
 決して色白ではないが、健康的な血色で、肌のきめも整っている。

 そんな若い娘が自分ににっこり笑いかけてくるだけで、大抵の男は悪い気がしないだろう。
 もちろん、俺も笑顔に惹かれた――というか、だまされた。

◇◇◇

 高校時代、勇気を出して思いを告白し、「できたら付き合ってほしい」と言ったら、「うん、いいよ」と、あっけないほど即答された。
 もともと趣味も合い、友達のままでもいいかなという関係ではあったのだが、周囲に「あの子、ちょっといいよね」という男が増えるにしたがって、平静ではいられなくなったのだ。

 今まで女子と付き合ったことなどなく、余裕で童貞だったくせに、「あの子が俺以外の男に抱かれるかもしれない」という事実に耐えられなかった。

 かといって、彼女とすぐにそういう関係になれたわけではない。
 感情任せに求めたら、体だけが目当てだと思われそうだし、スルにしても、その辺でテキトーにというのも気が進まない。下地作りが必要だった。

 机の上に置かれたミニコンポは、欲しくて欲しくて小遣いとお年玉をはたいて買ったものだが、彼女と付き合うようになってから、「これさえ買わなければ、旅行の軍資金が…」と少しだけ後悔した。

 しかし金はまた稼げばいい。幸い高校生だからアルバイトもできた。

 時給が安いし、彼女とささやかなデートをしながらでは楽ではなかったが、夏休みに県内で2泊くらいはできそうだ。彼女は自分も出すと言ったが、俺は全部自分で何とかしたいと思い、それを断った。

 友人カップルと一緒に行くことになったが、それぞれの親には同性の友人の話しかしていない。
 もっと小慣れたカップルなら、「お相手」を交換して楽しもう――なんて、ジュニア小説誌の告白体験談みたいな展開もあったかもしれないが、全員、それぞれの相手に夢中だったから、その発想すらなかった。

 海辺の民宿と高原のペンションの二択になり、多数決で海辺の民宿に決まった。

◇◇◇

「お待たせ~」

 旅行当日、肩が露出されるデザインの白いワンピースを着て、待ち合わせの駅に現れた彼女は、若い美しさで輝いて見えた。

「あー、それ『Nen-neネンネ』のグラビアの。Cheesecakeのやつだよね?」
「へへ、奮発しちゃった」

 女子組は雑誌の名前やらブランド名やら出して盛り上がっていたが、男子組はよく理解できない。「露出が高い方がうれしいが、ほかの男の目もあるし…」程度のことしか考えていない上に、せっかく海に行くのだから、どちらかというと水着の方が気になっている――と、少なくとも俺は思っていた。

 そこで同行の友人が「かわいい…」とぼそっと言ったのが聞き捨てならず、「おい、カノジョに言いつけるぞ?」と小声で言ったら、はっとして「いや、だってさ、アイドルとか見てかわいいって言うのと一緒だぞ?」と、気の毒になるほどあわてて弁解していた。

 そう、俺のカノジョは最高にかわいかった。
 あらゆる場所で、男の視線を何となく集めてしまっているのがよく分かった。

 現代の感覚でいえば、巨乳というほどでもなかったのだが、小柄な割に大きなバストだし、黄色いビキニ姿でビーチを歩けば、俺が少し目を離したすきに、すぐにナンパ野郎が声をかけてきたりする。
 必ずしもナンパばかりではなく、キャットコールとでもいうんだろうか、昼間からビールで一杯機嫌になったような男に、「姉ちゃん、金払うからパフパフさせろよ」みたいなのも含まれていた。
 そんな下品な絡みさえ、あの笑顔でうまくかわしてしまうのだから、感心するやら、心配になるやらだ。
 この子は俺の知らないあらゆることを経験し、知っているのではとさえ思えた。

◇◇◇

 夜になると、形ばかり着た浴衣をすぐに剥ぎ取り、夢中で彼女の部分的にやたら肉感的な体をむさぼった。
 乳首が思ったようなピンク色ではなかったが、もちろん特に失望もない。お互いの体は率直に反応した。
 俺が手指や口を使って刺激すると、彼女は「ああっ…ん」とのけぞるように反応した。
 そのかわいらしく悩ましい嬌声が、俺のさらにペニスを盛り上げた。

 体中撫でまわしたいという気持ちと、すぐにでも中に入りたいという気持ちが対峙する。

 彼女は余裕たっぷりで、「ゴム一つしか持ってきてないわけじゃないでしょ?まずはしようよ!」と言いつつ、あざやかな手際で俺の股間にをつけ、上からまたがってきた。

そうして彼女はバストを自分の手で刺激しながら上下に動いた。

「私に任せて…そう、あああっ、そう、いいっいいわっ」
「少し腰を突き上げてみて…そう、やあん、壊れちゃう…」

 そもそも数えるほどしか見たことがないが、エロビデオの女優だって、ここまで大胆な行為をしているのは知らない。
 俺は興奮と驚きで、思ったより早く果ててしまった。
しかし彼女がからかうように抱き着いたり、俺の手を自分の股間や胸に導いたりするので、すぐに復活した。

「ほらね?若いから何度だってイケるでしょ?」

 彼女のそんな笑顔は、数学の宿題を写させてやったとき「ありがと。助かった」と言ったときとほぼ同じだ。
 彼女の笑顔にいつもドキドキしていたのは、「好きだから」だと思っていたのだが、実は何とも言えないエロさを感じ取っていたからでは?と思えてくる。

 俺はけっきょく彼女を4回抱いた。


 寝物語に聞いていると、彼女は中3のときに既に処女を失っていたという。
 相手は怖くて聞けなかったし、彼女も言わなかった。

「だからセックスしたくらいで責任取れ!とか言わないよ。でも、こんなインランは嫌って言うなら…」

 とろとろ半分眠りかかっていた俺だったが、彼女がその先言うかもしれない言葉に嫌な予感がして、彼女を抱きしめた。

「嫌じゃない!すげー好き!インランでもいい!気持ちよかった!」

 俺は多分、全身性欲の塊になっていたんだろう。
 実際、彼女のリードでかなり楽しませてもらった。
 何ならちょっと自慢したいほどの筆おろし体験だった。

「よかった…実は捨てられたらどうしようって思ったの…」

 彼女はそこでうっすらと涙を浮かべた。
 これは反則中の反則だ。

 俺は頭の中で、既に五つ目のコンドームの封を開けるイメトレをしていた。
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