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それでも ホワイトクリスマス
クリスマスイヴ
しおりを挟む私は唱歌『お正月』という歌について、小学校3年生くらいからだろうか、ある仮説を立てていた。
「あの歌って実はクリスマスの歌だよね?」
大抵の人は「ばっかみたい。何言ってんの?」と取り合わない。
人の話にとりあえず耳を傾けてくれるタイプの友人だけが、説明してほしいと要求する。
「だって、「もういくつねると」だよ。つまり、まだお正月じゃないんだよ」
「あ」
「それも多分、小さい子供がお正月楽しみ過ぎて、「あと何回寝たらお正月になるの?」って考えてさ。小さい子だから、多分10日より下だよね」
「う、うーん?」
「だからずばり1週間前!ちょうど12月24、5日あたりで計算が合うんだよ」
「“だから”の意味が分かんないけど…「なるほどね」って思った」
「でっしょ?」
と、聞いたときは調子を合わせてくれるけれど、実際は全く支持されない話をよくしたものだった。
+++
というわけで、12月24日。
学校では2学期の終業式があり、子供はみんな早目に帰宅していた。
寒いなあと思ったら雪が舞い始め、誰もこたつから動こうとしない。
晩ご飯は父が、「パーティーバーレル」というものに入った、揚げた鶏肉を買ってくるらしいので、祖母も母も「今日は楽だねえ」と、にこやかに待っている。
雪が朝になる頃にはたっぷり積もっているだろう。
明日になったらお隣のカスミちゃんたちと一緒に、広場でミニスキーをしようと考えていた。
午後5時ぐらいまでは、そんな楽天的なことばかり思い描いていたけれど、7時ぐらいだろうか、父がコートやあたまに張り付いた雪で真っ白になって、両手に何か抱えて帰ってきたとき、少しだけ現実が見えた。
「お帰り~。うわ、すごい格好」
「この天気だから、車は会社に置いて雪漕いできたんだ。いやあ、疲れた」
祖母は父のそんな姿を見ると、裏返った声をかけた。
「いやいやいや、寒かったばい。早く入って温まっせ」
父は母が持ってきた小さなほうきでコートの雪をはらい、靴下を脱いでから家に上がった。普通の革靴を履いていたので、靴下もびっしょり濡れていたらしい。
いやいや、降るにしても降り過ぎでしょ。
外を見ると、少し白を載せたような群青色の夜空から、続々、べったべったと雪は降り続き、止む気配がまるでなかった。
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