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純喫茶 点灯夫〈TENTOFU〉
こだわりの喫茶店
しおりを挟むコーヒーが席に届くと、ミツエは5年前と同じように、一口も試し飲みせず、いきなり3杯の砂糖とたっぷりのミルクを入れ、カチャカチャとスプーンでかきまわした。
それは本当にごく普通のブレンドだけど、ブレンドには最もその店の個性が出るものだ。
加えて、「清冽な地下水を使って丁寧にドリップ」だの、地元の個性的な焼き物で統一された器だの、見るべきポイントは幾つもある、そんなこだわりのカフェだ。
そう、「こういうところ」にモヤモヤしたんだった――と5年前を思い出したけれど、俺は一体何がしたかったんだろう。
今となっては、ミツエのそんなしぐさ一つ一つに、妙な安堵感を覚えているのだ。
左手の薬指に、誕生石の指輪をはめている彼女に。
「相変わらず、その飲み方なんだな」
「コーヒー味は好きだけど、苦いのは苦手だもん」
「だろうね」
猫舌ではない彼女は、ふうっとふきを吹きかけるでもなく、そのままカップに口を当て、音をたてずにすっと一口飲み込んだ。
もっとも砂糖とミルクを入れ、撹拌までしたのだから、そこまで熱くはないのだろうが。
「うん、やっぱりおいしいねえ」
「ならよかったよ」
ミツエなら、安いコーヒー牛乳を飲ませても、チェーン系のカフェのコーヒーを飲ませても、全く同じ口調でそう言うのだろう。
俺はそんなミツエが大好きだったはずだけど、一度違和感を覚えると、「そういうところ」を少しずつ負担に感じるようになった。
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