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彼女はギンモクセイ

【終】ナツコの「未来」

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 高校卒業後、私とミズキは地元の国立大、ナツコは都会の有名私立大に進学した。
 裕福な良家の子弟が多いと評判の学校なので、せいぜい上玉とっつかまえなくちゃと張り切って上京したのが実にナツコらしい。「結婚披露宴のごちそう、期待しているよ」とだけ言って送り出した。

+++

 大学に入っても、私は相変わらず男に興味を持てず(人間には興味があるけれど異性としてはないという意味)、ミズキは男女問わず控え目に、いい感じで交流している。押しの強いナツコがいないのは刺激に乏しいが、それなりに楽しくやっている。

 それぞれに連絡は取り合っていたけれど、やはり微妙に情報の詳細が違うこともあるので、そのあたりを交換することも多い。付き合いの長さや深さもあり、やはりミズキは私よりも詳しかった。

 学校近くのカフェでお茶を飲んでいたとき、ミズキが意外なことを言い出した。

「ナッちゃん向こうでカレシできたらしいけど、何だか心配だね」
「そう?」
「Wikipediaに名前が出ているような大企業のトップとか
 政治家とかとも親戚関係があるとか言ってた。
 いい家の息子さんだから、もう結婚とか考えてるって」
「へえ…まだ1年なのにね。
 格の高い家がお相手だと、そうなっちゃうのかな」

「まあナッちゃんも、地方だけど有力者の類だし、それはいいんだけど」
 ミズキが珍しく、ちょっと含むところのありそうな表情を見せたので、私も続きを聞かずにいられなかった。
「いいんだけど…何?」

「ナッちゃんてさ、サービス精神旺盛なのかな?
 私にいろいろぶっちゃけ過ぎだったんだよね。
 カップルクラッシャーのこととか。
 あの時手首切った子もいるって、チイちゃん知ってた?
 アンノさんとのことも、私は全く知らないと思っていたみたいだし…」
「え…」
「私がそういうの、おとなしく黙っていると思っているよね、きっと」

 少し化粧を覚え、どことなく垢抜けたミズキが、少し艶っぽく微笑んでストローでアイスミルクティーを一口吸った顔に、私はぞくっとした。

 ギンモクセイの香りは、本当にそばに寄らないと感知できないのだ。

【『彼女はギンモクセイ』 了】
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