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タマゴな彼女
お見舞い
しおりを挟む無事、全教科終わった日、私は彼の入院する病院にお見舞いに行った。
何も要らないよって言われたけど、何か持っていきたいと思って、病院の隣のショッピングセンターで雑貨屋さんに入った。
そして、犬のぬいぐるみを一つ買った。
何となくだけど、お守りにいいかなと思ったのだ。
彼はこういうカワイイものが意外と好きだし、喜んでくれると思う。
◇◇◇
地元で1、2を争う大病院である「小澤病院」の3号館(C棟)6階。
部屋番号もあらかじめ聞いている。
6人部屋だけど、今入院している人は4人。
通路側のベッドで、出るとすぐ洗面所という場所で、売店が遠いのが玉にきずだけど、まあまあ悪くない。
メッセージに書かれたそんな情報をもとに、直接病室に向かった。
部屋に入ると、彼のそばに水色のナース服と紺色のカーディガンを身に着けた20歳くらいの女性がいた。
すごい美人ってわけではない、でも、かわいらしい雰囲気の人。
そんでもって、明らかに彼と談笑ムードだった。
入っても、いいんだよね、ここ。
「あのお…こ、んにちは…」
「お、待ってたよ。来てくれたんだな」
彼は私に気付き、いつもの笑顔を見せてこれた。割と元気そう。
ナース服の女性は私に敵意むき出し――なんてことはもちろんなくて、彼に「彼女さんですか?」と尋ねて、「ええ、まあ」という返事を聞いてから、私に笑顔で会釈をしながらその場を去った。
「今のコ、看護学校の実習生なんだ」
「なるほどね」
私は、「その話に興味がない」という意味で「なるほど」という言葉を使うことが多いが、彼は気付いていないようだ。
聞いてもいないのに、「坂本さんっていうんだよ」とまで教えてくれた。
姓だったからセーフ。名札は私も見たともさ。
下の名前だったら、さすがに思うところがあったかも。
少しさかのぼって、今の人ではなく「今のコ」といったのは、ちょこっとだけひっかかるけれど、いちいち焼きもち焼くのもおかしな話だ。
「これ、お見舞い」
「え?犬?チョーかわいいじゃん。ありがとう。君だと思って抱っこして寝るよ」
「えーっ、恥ずかしいよ…」
うん、これはいつもの彼だ。
「坂本さんは俺の担当だから、時間帯によっては君もまた会うかもね」
「へえ、そうなんだ」
「ナースのたまごってやつ?何かいいよね」
「ふうん…」
ほら、こうやってなーんにも考えないで口開くところとか、本当にいつもどおり。
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