43 / 82
入院
2日目、手術
しおりを挟むあーくんが小学校に入った頃、シュヨーってのが見つかって、手術入院することになった――って話はもうしたか。
お医者さんの話をきいても、正直ちんぷんかんぷんだったけど、「さほど難しい手術ではないので、お気を楽に」って言われて、腹の中で「切り刻んで殺してくれてもかまいませんよ?」って思いながら、黙ってうなずいた。
+++
2日目の午後から手術だったので午前中から行ったけど、空腹でかなり不機嫌だったみたいで、「お前の気楽そうな顔見てると、本当に腹立つなあ」と、ベッドに横になった状態で、弱々しく言われた。
こんな憎らしいやつのために、私は手術が終わるのを何時間も待たなくちゃいけないのだ。
しかも「家族控室」では、スマホ使っちゃだめらしい。
雑誌も好みじゃないのばっかだし、テレビも退屈。寝てようかな…。
+++
手術が終わった後、家族控室の隣の「病理室」という小さな部屋に呼ばれて、液体に浮かんだ白い小さなひらひらした欠片を見せられた。
(うわっ、こんなの見たら、しばらく鶏皮食べたくなくなる…)
「詳しく調べないと分かりませんが、多分悪性ではないと思われます」と言われて、腹の中で舌打ちした。
でも悪性だったら、よくわかんないけど多分もっと面倒なことになって、また私がいろいろ面倒くさいことしなきゃいけないんだよなと思ったら、「よかった…」って言葉が自然に出てきた。
緑の服を着て、銀色のめがねをかけた40歳くらいのお医者さんが「奥さんもお疲れさまでした。旦那さん、もうすぐ麻酔が覚めるので、お話しできますよ」って、優しく笑って言った。
こういう人の奥さんって、きっときれいで上品で教養があって、絶対「ダンナ死ね」なんて思わないんだろうなって、何となく思った。
+++
麻酔は覚めているはずだけど、ダンナはぼーっと寝ているんだか起きているんだか分かんない状態で、私が「そろそろ帰るね。また明日来るよ」って言っても、「…ん…」って力なく言っただけだった。
+++
その夜は風が強かったせいもあって、何だかちょっと怖かった。
風の音が怖いっていうのもあるけど、とっても不安な気持ちが、アパートのそばににある大きな木の葉っぱみたいに、強い風に揺すられているみたいなかんじ。気持ちがガサガサ、ザワザワしてる。
「たまにはいいでしょ」って言ってあーくんと一緒にお風呂に入っても、ご飯を食べていても、ベッドに入っても、とても不安な気持ちになった。
しかもこんなふうに思っちゃったんだ。
「ダンナ…あのまま死んじゃったら、私はどうしたらいいんだろう?」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる