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40代愚痴ブロガーしるびあ
しおりを挟む私には、家族に知られていない趣味がある。
それは、古今東西の殺人事件について書かれたページを読むことだ。
いい年して厨二っぽくて恥ずかしいし、いろいろと誤解を招きそうなので、ちょっと言えない。
ひとえにライターさんの文章が読みやすくて面白いから、そういう点が勉強になるというのもあるんだけど。
単なる興味本位で、自分もマネしたいなどと思っているわけではない。人間というのはここまで惨いことができるのだと、感心に近い気持ちになることすらあるが、そういった殺人犯たちを尊敬しているわけではない。
そんな中、アメリカの片田舎で60年代に起きた少女リンチ事件を知り、新しいブログを開設するとき、その被害者の名前をHNにした。
不謹慎かもしれないが、一番心情にぴったりだったのだ。
ただ、響きはいいのだが、カタカナの字面が何となくピンと来なかったので、ひらがなにした。
…一気に冗談っぽくはなったが、インパクトは大きくなったかもしれない。
▼▼
暇を見て裏紙にネタを書き出し、それをもとに文章(下書き)をPCで書いた。
ざっと推敲したり、改行を工夫したりと手を入れ、ブログとしてアップロードした。
写真や画像は自前のものではなく、参考画像としてフリー素材を使う。
裏紙は「お焚き上げ」のつもりでシンクで燃やしたり、ビリビリに破いて生ゴミに混ぜたりした。
PCはパスワード設定できるが、紙はそうはいかないので、徹底的な証拠隠滅が必要だ。
まどろっこしく見えるが、ちょっとした儀式として楽しんでいるし、PCに直接書こうとすると、どうもうまくいかない。
▼▼
まずはこの実話ネタから、かな。
一度だけだが、「おかずが気に入らない」という理由で、既に飲酒したにもかかわらず、車に乗って終夜営業のスーパーに行き、豚のロース肉を買ってきて、一人で焼肉を始めたことがある。
あのときはさすがに、家に帰ってくるまで気が気ではなかった。
いいネタだと思ったが、ワクチンのときのこともあり、「犯罪自白」「通報」などと突っ込まれる可能性もある。泣く泣くフェイクを入れた。まあそのまま書くのはリスキーだし、仕方がない。
行ったのは徒歩5分のコンビニ、買ってきたのは焼き魚やコロッケなど、「自分が出した惣菜の既製品版」という当てこすりに切り替えた。
ついでに菜々美にも、「スパゲティがいい」とわがままを言われ、冷凍ボロネーゼを出すという形で「友情出演」してもらった。
案の定、「メシマズ家族カワイソーw」という揶揄コメントもあったが、同情や共感が集まった。
モラハラというほどではないが、身勝手な家族からの料理へのダメ出しには、多くの妻や母親が涙しているのだ。
昔読んだOL漫画の料理学校のエピソードに登場した生徒の話を思い出す。
料理を習いにきて、「家族にご飯を作る上で一番大事なことは何だと思う?」と問われた女性が、「愛情?」などと答えると、先生はシビアにこう言い放った。
「愛情の冷め切った夫や生意気でワガママな子供たちへの腹立ちを隠して、平常心で淡々と、毎日毎日作ること」だと。
夫は肉さえ出しておけば満足という人だ。
豚→鶏→牛の順で食いつきがいいので、ポークジンジャーや豚カツ、鶏カラなどを出しておけばご満悦である。
菜々美はスパゲティやグラタンなどに目がない。
だからボロネーゼ、カルボナーラ、それに(あ、牛乳さっさと使い切らないと期限が…という理由で)冷蔵庫のありもので作ったグラタン、残りご飯処理のためのドリアなどを時々作る。
一応いい反応を見せて食べてはくれるが、ツイッター愚痴垢の件以降、きっと何を出しても「まずっ(嘔吐マーク)」などと思っているんだろうな…と、猜疑心でいっぱいのまま作る。
もともと料理は嫌いではないが、別に大好きでもなかった。
しかし最近は、「嫌い寄りの普通」くらいの気持ちになりつつある。
菜々美のツイッターは、その後も時々覗いていた。
時々ポジティブなことが含まれていても、「なんで愚痴垢でわざわざ?私が見たことに感づいた?」としか思えないが、鍵をかけていないところを見ると、とりあえず読まれるのは構わないのだろう。
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