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第28章 卵が先か鶏が先か

アヤの好奇心

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 何一つ根拠はないのに、「そうに違いない」と思うことがたまにある。
 俊也の部屋を出て駅へ向かったアヤが、ハタチくらいのかなりきれいな女の子とすれ違ったときがそうだった。

(ひょっとして…)

 服装はおしゃれ過ぎず、適当過ぎず。夜道とはいえ、はっきり分かるメイクはしていない癖のない美少女顔で、髪の長さはセミロング。歩き方に生真面目な性格がにじんでいた。

 歩く速度、向かう先からして、この子が「さよりちゃん」なのでは?
 さより(仮)がアヤに注意を払わなかったのをいいことに、アヤはさり気なく進行方向を変え、さより(仮)の背後を取った。

 アヤは5分後、自分の勘が当たったと知ったが、ちょっとした好奇心から、さよりが俊也の部屋に入るのを確認し、ドアの前に息を潜めて立った。
 毒食らわば皿まで的な感覚だった

◇◇◇

 「見た目は悪くないが実は安普請なアパート」だと、俊也に初めて連れ込まれた日、隣室の音が生々しく聞こえたときにアヤは思った。
 といっても、ドア越しに会話が聞こえるほどではない。
 ただ、狭いキッチンの小さな窓が開いていたので、そこから中に人がいる様子や、会話をしている様子はわかる。
 話の内容までは無理か?と思ったら、俊也が出血大サービス的に大きな声を出した上、女の軽い悲鳴も聞こえた。

「ざけんなよ、おい!」
「ごめんなさい!」
「そんな話するためにわざわざ来たのか!あ?」
「やめて!痛い!」

 幸い鍵がかかっていないようで、ドアはあっさり開いた。
 アヤは衝動的に中に入り、「はいはい、そこまで!」と、さよりの腕をねじり上げていた俊也を止めた。

「アヤ、お前何で…」
「話は聞かせてもらった、じゃないけど。このお嬢ちゃんを私に貸して」
「はあ?」
「『名門大学生、自室で少女を暴行殺害 情痴のもつれか?』なんてニュース、見たくないからね」
「な…」

「あんたはそこで頭冷やしてな。ほら、行こう?」
「あ、あの…」
「待てコラ!」
「これ以上この子に何かしたら、アパート中に聞こえるような声で、あることないこと言うよ?」
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