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第14章 仕切り直し

俊也の器

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 さよりとの約束が無言でドタキャンされた翌日、俊也は翌日、アルバイトもほかの予定もなかったので、アラームもセットせず、昼前まで寝ていた。
 起き上がって5分ほどぼうっとした後、さよりのことを思い出す。
 不可解さは残るものの、もうそこまで怒っていない。

 そしてこれは、自分の器の大きさを見せつけるテストだと解釈することにした。

 学生寮で電話が立て込みやすい時間などは知らないが、試しにかけてみるのも悪くない。
 時計は11時23分。すぐ会う約束ができれば、ランチをともにできる。

 つながらなかったら?出なかったら?出ても誘いを断られたたら?

 そもそもが、昨日さよりが自分をすっぽかし、さらに後の弁明もないので、現況がさっぱり分からない。

 だからこそ電話すべきだという判断に至った。

◇◇◇

 あるアメリカ映画(※)のワンシーン。
 ひとり息子を愛し、慈しむように育てるシングルファザーがいた。

 ある日、その息子はなかなか帰宅せず、代わりに警察官が数人やってきた。
 善良な彼は、実は「自分自身」があるトラブルに巻き込まれていることを全く知らず、こう尋ねた。

「息子に何かあったんですか?事故とか?」

 彼には息子が何かをやらかして、警察のご厄介に…などという発想は全くなかった。
 もしも俊也にこの父親のような発想があれば、会う約束をした場所にその相手がいなかったとしても、ひとしきり探した上で、寮や心当たりに電話をしていたろう。
 事故ではないにせよ、何かあったのではと「心配」するのは、割と普通のことだ。
 しかし俊也の場合、さよりのすっぽかしと判断し、腹を立てただけだった。

 実際すっぽかしに違いはないのだが、「コケにされた」「弁明を聞いてやる」と、口には出さないものの思った時点で、器の大小など、判定を待つまでもない。

(※)1999年『ディープ・エンド・オブ・オーシャン』
 映画をごらんになれば、この善良な男が知らずに巻き込まれている「トラブル」もおわかりになると思います。

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