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第12章 罪悪感
俊也の女性観
しおりを挟む1人の小学生がいる。
筆入れ、傘、靴、洋服、何でもいいが、「古くて飽きが来たので、新しいものを買ってほしい」、あるいは「予備の新品が控えているが、従来のものをまだ使えるので、新品をおろすことを親に許可されていない」といった記憶は、誰にでもあるだろう。
それは日用品であって、それ自体が特別ではないが、新しいものの方が魅力的で、心ときめく何かがある。
しかし、新しいものにすぐ飽きたり、何らかの理由で気に入らなくなったり、前のものの方がよかったなと後悔したりすることもある。
逆に、どんなに古くなったとしても、非常に気に入ってしまい、逆に「そろそろ新調しようか?」と言われるものも、時にはあるかもしれない。
安部俊也にとって、恋人というのはそういう存在だった。
昔はそうではなかったかもしれないが、遠縁の女性に「手ほどき」を受けて夢中になったものの、失恋した後、まさにそんな感じでカノジョ的な存在の女性を新調というか、「更新」し続けてきた。
俊也がさよりと偶然に再会したのは、ちょうど手元にその「日用品」がなく、しかし別段探すでもなく、待ちの姿勢でいた時期だった。
すっきりした魅力的な容姿で、頭は悪くなさそうだが、極端に理が勝っている感じでもない。男女交際的な経験はないようで、少し際どいアプローチをすると、びっくりするほど初心な反応を見せる。
俊也は心のどこかで「この子は今までとは違うかも」と思い始めていた。
当然今までの女性と同様、いつかは体の関係を持つだろうと漠然と考えたが、ただの思い出になることはない、ずっと現在進行形で付き合っていきたいと思える女が、初めて現れたのではという予感があった。
さよりは寮暮らしだから、こちらから押しかけていくことはできないが、届けを出せば外泊はできるらしい。
だからいつかは自分の部屋に招き、一晩中過ごすことができたらと考えていた。
◇◇◇
そんなことを考えていた矢先にモトカノである季実子から、「そっちに行く」という電話がかかってきたので、それを抑止するために、季実子の家に行き、結果的に寝てしまった。
これを「焼けぼっくいに火」と判断する向きもあるだろうが、全く違う。さよりと今後、安心して交際するための必要悪ぐらいに思って季実子を抱いたにすぎず、そこに愛はかけらもない。だからセーフだ、と。
◇◇◇
賢明な読者諸氏にとっては、「んなわけあるか!」と突っ込みたい言い分だと思われるが、「自分が不在中、さよりのか細い声で2度録音された留守録」を聞いた俊也は、ここまで手前勝手な理屈を並べなければ、精神的にかなりキツいものがあったので、そこは大目に見ていただきたい。
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