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第7章 計算だけど計算じゃない
モテる方はよりモテモテ、そうでない方は…
しおりを挟むいささか希望のない話をしよう。
諸般の事情により、男性→女性の異性愛に限定した話にはなるが、女にモテる男は往々にして淡々としており、モテない男はガツガツし過ぎる傾向にある。
結果、モテる男は「もっとぐいぐい来てほしいのに」と物足りなさを感じた女性に逆に追いかけられ、モテない男は「そういう必死なところが無理」と言われてしまう。
ならばといって、もともとモテない男が女に興味のないようなふりをすればモテるようになるわけではない。仮に本当に興味がなくてそういう態度だったとして、ただスルーされるだけならいいが、「無理しちゃって」「あれでカッコいいつもり?」など、いわれない中傷をされることすらある。
逆に、積極的なモテ男というのは、それはそれで需要がある。
要するに、モテる男が「こうすればよりモテる」というブースターアイテム的なものはあっても、モテない男にとっての裏技や飛び道具など存在しないのだ。
しかし、そもそもモテる必要などない。
ただ1人、自分が好きな女性さえ振り向いてくれれば十分なはずだ。
それが一番難しいことではあるが…。
◇◇◇
安部俊也は「モテる側」の男である。
ややバタくさいというか、この時代はそろそろ古くさいとさえ思われ始めた派手な顔ではあるが、整っていたし、雰囲気に清潔感があった。
だから幼い頃から老若問わず女性にかまわれやすく、女性と接することには慣れていた。
さらに、基本的に付き合いやすい性格のため、同性の友人も多い。
さよりのいとこ・晴海と「付き合っていたっぽい」というのは、説明するまでもなく「男女の仲だった時期もある」という程度の話だった。多分さよりが俊也に初めて会った頃は、まさにその時期だった。
俊也には常に女性の影が付きまとったが、同時期に複数の女と交際する、関係を持つということだけはしなかった。後腐れなさそうなタイプを選ぶのが得意という、あまり褒められたものではない特技も功を奏し、別れた後ももめることはなかった。
そんな俊也だが、あまりにも積極的な、何ならほかにも男を作っていたような女性との交際にやや疲れ、次はああいう男慣れしてなさそうなタイプも悪くない――と目を付けたのがさよりだった。
たまたま駅付近のコンビニエンスストアで再会し、いろいろと話してみたところ、なかなか好感触だった。連絡先も(いつものように)自然に渡せたし、そのうち連絡が来るだろう。一定期間待って何もないなら、また別口をねらえばいい――程度の待ちの姿勢でいた。
こんな男でも、本気で女性を好きになれば、策略を考える余裕などなくなり、嫉妬丸出しで恋人を束縛する可能性もあるが、今のところさよりに対しては、試しに応募した懸賞くらいの気持ちだった。
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