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第2章 モテ女の純情
さよりという少女
しおりを挟む自己紹介によると、松崎は身長162センチで、体重は「100キロ未満」ということらしい。ややふっくら程度なので、せいぜい70キロ台だろう。
さよりは身長160センチ、体重49キロの細身だった。
顔は縦より横に広い、いわゆる「猫面(**下記注)」で、目鼻立ちのバランスがよく、一見すると平凡なのだが、表情にはどこか知性や人間性が感じられる。
派手さはないが、多くの男子にとって「気になる女子」という風情があった。
「敏夫君」と読んでほしい松崎を、さよりは「松崎君」と呼ぶ(主に手紙でだが)ようになり、レポート用紙3~4枚分の手紙をもらっては、小さな便箋1枚分の返信を、ほぼ惰性でするようになっていた。
松崎は自分の好きな女優やアイドルのことを、よく話題にした。
さよりも顔くらいは知っている人ばかりだが、全員どこか似通った傾向のある人ばかりなので、タイプが一貫しているなあと妙に感心した。
そしてそのいずれもが、どこかさよりの特徴にも通じる容姿だったことが、さよりの気を重くさせた。
(結局この人も、私の見た目が好きなだけか…)などと。
うぬぼれと笑うなかれ。
出来栄えのいい容姿に生まれついた者は、鏡を見れば、自分が異性からどう見られるかくらいは分かるものだ。
それでひたすらいい気になる者もいれば、「誰も中身なんて見ていない」と歯がゆい思いをする者、さらに「まあ中身も大したことないんだけどさ」と卑屈になる者、さまざまである。
さよりは歯がゆい派と卑屈派の中間ぐらいだろうか。
人からかわいいと言われればうれしくないわけはないが、顔だけみたいに言われれば「だから何だ」と少し反発する。かといって、自分が中身だけで勝負できるほどの人物だとも思っていない。
そんな、お年頃特有とも彼女らしいとも言える不安定な中身を好む者もいたろうが、彼女のそこを的確に突き、ハートを奪う人物はなかなかいない。
**
これは勘違いされやすいのですが、強いていえば「馬面」の逆で、縦に短い顔のことです。
「犬顔・猫顔」「狐顔・狸顔」などの分類はあまり意識していません。
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